マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2012.07.07
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カテゴリ: 日本史全般
 結局はあの薄気味悪い山道を、再び戻ることにした。お寺で自転車に乗って出発。最初の曲がり角に「青麻道」と刻まれた石がある。これは一体何だろう。ちょっと不思議な雰囲気だ。そこから少し戻ってとある店の中に入る。珍しくパン屋さんを見つけたのだ。コンビニでお握りでも買いたいのだが、どうやらコンビニは無さそうだ。

 小さな米粉パン5個が入った袋と、豆パンを買った。いずれも半額の品。それをリュックに入れて再出発。「青麻道」の所から左折。ここを直進した若宮前には八坂神社がある。もちろんその昔、京都の八坂神社からご神体を勧請したものだろう。そして現在塩竃神社の境内にある志波彦神社は、元々この岩切に鎮座していたもの。そのことを見ても、多賀城に近い岩切が、街道を通じて古代から栄えた集落であったことが分かる。

 ところで志波彦神社、旧志波姫村、岩手県盛岡市付近にあった古代の出城紫波城のいずれもにつく、「しわ」とは何なのか、長年の私の謎になっている。間もなく岩切城へ入る道の角に、再び幾つかの古い石碑を発見。きっとこれが岩切城への標識代わりのはず。直進すると宮城郡利府町の「館の内」地区。奥州藤原氏が滅亡した後、鎌倉幕府から奥州留守役として派遣された留守氏の館があった場所だろう。

 左折して山道を登る。直ぐ左手にも幾つかの板碑。やはりこの辺は鎌倉時代の宗教遺物が多い。付近には熊野神社もあることを後日知った。坂道が急過ぎ、もう自転車を押して登るしかない。それが延々と続く。先ほど飛び降りようか迷った崖まで来た。右手の集落は利府町の神谷沢。神様が住む谷や沢。昔からの地名には、何か謂れがあるはず。

 小高い山が見える。あれが岩切城がある山だろうか。坂も緩くなり、アップダウンを繰り返す。城跡への入り口らしい場所まで来てガッカリ。何とその先は工事中で入れず、鉄の柵で塞がれている。ここもやはり昨年の大震災時に崖崩れが起きたようだ。残念だが今日はここまでだが、雰囲気は分かった。先ほど見えた頂上が城跡で、現在は高森公園になっているようだ。

 「青麻道」を直進すると県民の森に続くようだが、そこも工事中で歩行者の進入は出来ない。仕方なく自販機でコーヒーを買い、道端にしゃがんでパンを食べる。米粉パンは素朴な味で美味しかったし、甘い豆パンも美味しい。帰宅後気になって「青麻道」が何なのか地図とネットで調べて見た。あの道の先をどこまでも行くと青麻(あおそ)神社に行き着く。だから「青麻道」だったのだ。

 仙台市泉区、黒川郡富谷町、宮城郡利府町との境界だが、その神社までの道に沿って宮城野区が細く入り込んでいる不思議な形。青麻神社は全国にある同名の神社の本宮で、奈良時代に穂積氏がこの地に勧請した由。穂積氏は古代の豪族で、確か大阪の茨木市穂積周辺が本拠地だと思う。彼らは麻の栽培を広めたようだ。それが神社の名前にもなったのだろう。

 麻は成長が早く、とても大きく育つ。そのためにかつて赤ちゃんの肌着や「オシメ」には、麻の模様が施されていた。徳島県には麻植郡(おえぐん)があり、阿波国一宮は鳴門市にある大麻比古(おおあさひこ)神社だ。今でこそ大麻(たいま)は取り締まりの対象だが、昔は生活に欠かせない重要な繊維だったのだ。そして青麻の名は麻の表皮が青っぽいことに基づくみたいだ。

 帰りながら城跡の山を見上げる。なるほど素晴らしいロケーションだ。山は深い谷の向こうにあり、攻めるのはかなり困難だったはず。この天然の要害を巡って、戦いが続いたことが容易にうなづける。『私本太平記』の室町時代も、ここで北畠顕家が戦ったはずだ。帰路は「今市橋」を渡り、「奥の細道」を通った。途中、急な比丘尼坂を登る。

 平安中期、戦いに敗れて平将門が討ち死にした際、妹の比丘尼(びくに)がこの地まで逃げ、生活の足しに甘酒を売っていたとの言い伝えがある由。私は「尼」と「甘」をかけたように思う。つまり元々は「尼酒」だったのではと。いずれにしても岩切を通り、多賀城へ向かうこの道が、古代から多くの人々が往来し、中央から人や文化や宗教やたくさんのものを運んだことは間違いないだろう。

 ブログ友であるしぃさんが、たまたま不要になった本を送ってくれたことで読んだ『私本太平記』。その関係で岩切を訪ね、新しい歴史の勉強をすることが出来た不思議な縁。中世を訪ねる旅の終わりに、私は仙台市歴史民俗資料館に立ち寄った。そこで早速岩切周辺の歴史を調べたのは言うまでもない。小さな旅は、私にとって楽しく意義深い旅になった。<完>





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Last updated  2012.07.07 11:13:49
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