マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2013.04.01
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カテゴリ: 日本史全般
 冒険の走り旅(2)

 さて、ここから真っすぐ帰宅すれば30kmだが、私はこの日ある冒険をしようと思っていた。昨年の秋に自転車で来た時、工事中で行けなかった岩切城と青麻(あおそ)神社を訪ねてみることだ。そのためには食糧を確保する必要がある。安くて美味しいパン屋さんがあったはずと思って立ち寄ると、空き家になっている。さて、困った。だが、迷わずに冒険に向かう。ポシェットには若干のお菓子がある。先ずはそれを食べて凌ごう。

 東光寺脇の小道を入り、そこからさらに急な坂を登る。最初は走れていたが、途中から歩き出す。岩切城への入口は開いていた。どうやら地震で起きた地滑りの工事は終わったようだ。城跡へ登ろうとした時、1台のタクシーが停まり、中から1人の中年男性が降り立った。こんな辺鄙な所までわざわざ訪ねて来るのは、よほどの物好きのはず。頂上の公園から、中年のハイカー集団が降りて来る。

 岩切城は中世の山城で別名は高森城。ここは奥州藤原氏を倒した鎌倉の頼朝が奥州留守職として派遣した伊沢氏が籠った古城だ。国府多賀城にも近く、広大な東北地方を治めるには好都合だったのだろう。南北朝時代、戦国時代にもこの城を巡って激しい戦いがあった。その後留守氏を名乗った伊沢氏は、結局伊達政宗の配下となる。城跡へ立つと、なるほど見晴らしが良い。これなら敵の進軍を監視出来た訳だ。

 気になっていたトイレを済ませ、山頂の城址から降りる。山道を右折すると「県民の森」。周囲は全て鬱蒼とした森で、ここは時々クマが出没する物騒な場所でもある。暫く行くと、県民の森の中央資料室が見えた。後で立ち寄ってみよう。ひょっとして何か食べ物を売ってるかも知れない。さらに走ると、富谷町方面への分岐点。青麻神社はまだ先だ。

 アップダウンを繰り返したその先に立派な神社があった。なんでこんな山奥に?と思うほどの辺鄙な場所。拝殿でお参りした後、社務所に向かう。売店を兼ねた家屋の扉を開けると、神主と思しき人が座っていた。不躾けながら私は尋ねた。「なぜこんな山奥に神社があるのか、そしてここに麻を植えたのはなぜか」と。きっとそんな質問をした人は初めてだったはず。神職は戸惑いながら答えた。

 「このような山奥にも小さな集落はあるものです。麻は木綿が入るまでは貴重な繊維で、水が湧くここが適地だったのです」。ここ青麻神社は奈良時代に山城国(京都府)から勧請したのが起源だが、麻の適地なら他にもあるはず。「蔵王町の青麻(あおそ)山とは関係がありますか?」との問いには、「あの山はかつて刈田嶺と呼ばれていました。その神社の方が昔ここを訪れ、持ち帰った青麻神社のお札を山上の社に張ったのが山名になったようです」。なるほどねえ。

 「縁起」を読むと義経の家来だった常陸坊海尊が立ち寄ったとある。ここにも義経伝説が残っているようだ。日本人は判官びいきが多いのだ。外へ出てポシェットのお菓子を食べる。得られた熱量は200KCくらいか。井戸水を汲んでペットボトルに継ぎ足す。昨年の秋に岩切集落の片隅で偶然見つけた「青麻道」の石碑。「これは一体何だろう」と思ったその謎が、少しは解けたような気がする。

 再び急激な坂道を登る。今は舗装されたこの道も、古代や中世当時は官道へ抜ける脇道の一つだったのだろう。徳島県鳴門市の大麻比古神社は阿波国一宮だし、吉野川の対岸には麻植(おえ)郡がある。成長が早い麻は、古代人にとっては貴重な衣料の原料だったはず。それが遥々都からこんな東北の山中までもたらされたのだ。当時は科(しな)の木の樹皮や、苧麻(ちょま=からむし)も人々の暮らしには欠かせない大事な繊維だった。

 結局県民の森の中央資料室は無人で、食べ物はなかった。麓まで降り、コンビニで稲荷ずしを食べ、味噌汁を飲んだ。帰路はかつてSパパ達と歩いた旧街道を通り、比丘尼(びくに)坂を登った。Kスタでは開幕の準備が進んでいた。

 自宅への到着は夕方の4時。走った距離は37kmで、要した時間は7時間半。古稀を祝うクラス会と冒険の走り旅は、こうして無事に終わった。9月には学年会があるようだ。我が3年B組がその担当とのことで、幹事から出席を厳命されている。だから秋には再び恩師と級友達に会えるはずだ。<完>

3月のラン&ウォーク

ラン回数:11回 ラン距離:188km ウォーク:73km 月間合計:261km 年間合計:761km うちラン:549km これまでの累計:81677km



ヒマラヤユキノシタ.jpg

      ≪ わたしは案外日蔭が好きかも♪ ≫ ヒマラヤユキノシタ





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Last updated  2013.04.01 08:19:00
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