マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2015.07.14
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カテゴリ: 人生論
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 暑い。このところ猛烈な暑さが続く仙台。庭と畑はカラカラに乾き、朝夕の水やりが欠かせない。私の部屋は熱気が籠り、半ズボンとランニングシャツで過ごしている。首には濡れタオルが必要だ。そんな暑さの中、先日久しぶりに映画を観に行った。期せずして両方とも妻が病気になる話。これは決して他人の話では済まされない。今後自分達にも起こり得ることなのだ。さて、親しい家族が病気になったら、あなたは一体どうしますか?


<『アリスのままで』>

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 アリスは名門コロンビア大学の言語学教授。その彼女が講演会の最中、異変に気付く。突然ある語彙が思い出せなくなったのだ。またある時は、ジョギング中に家への帰路が分からなくなる。それが病発見のきっかけだった。50歳の彼女が罹ったのは「若年性アルツハイマー症」。そこから彼女と家族の苦しみが始まる。


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 認知症の存在が人々に意識され始めたきっかけは、有吉佐和子が新潮社から昭和47年(1972年)に出版した小説『恍惚の人』だった。あの時はまだボケ老人と言う名前で呼ばれていた病気が、その後の研究で脳の病気と判明した。当時は物事が理解出来ず、失禁や夜間徘徊を繰り返す奇病だと思われて来たこの病気が、誰しもが罹る可能性があることも分かって来た。


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 そして認知症は、今では最も身近な社会的課題の一つになった。単なる老化によるボケだけではなく、脳に特定の化学物質が沈着して起きるアルツハイマー型認知症や、レビー小体型の認知症があることも分かって来た。だが病気の進行を緩めることは出来ても、まだ本格的な治療法は確立されておらず、本人と家族の苦しみは続いたままだ。


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 日に日に言葉を忘れて行くアリス。でもやがて彼女はその姿を人前に曝すことを恐れなくなる。あれほど知的で賢明だった彼女が、記憶が衰えて行く自分を講演会などで見せる。若年性アルツハイマーの実態を、多くの人々に理解してもらうためだ。そんな彼女を深い愛で支えるのが家族の存在。認知とは何か。病気とは何か。人間の尊厳とは、そして家族とは何か。この映画は、観客にそのことを問うている。


<『愛を積む人』>

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 破産した東京の町工場を処分して北海道に移り住んだ夫婦。まだ若かった頃に登った山を観ながら暮らすのが、妻の希望だったからだ。広大な北海道の風景がまた良い。だが、自分がやるべきことを見つけ出せないままの夫。ある日夫に石の塀を作るように依頼する妻。夫は嫌々ながらも、とある青年と一緒に重たい石を運んで、長い塀を作り始める。


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 原作はエドワード・ムーニーの『石を積む人』。アメリカで大評判になった小説のようだ。話の舞台を日本の北海道に置き換えて、この映画を制作した。主演は樋口可南子。その夫が佐藤浩市で、娘役が北川景子。後で懇意になる夫婦役が柄本明と吉田羊。老後を楽しく暮らしていた夫婦に、ある日思いがけないことが起きる。留守中に泥棒が入り、妻は持病の心臓病で倒れてしまうのだ。


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 急逝した妻。そしてその妻が残した数通の手紙。それを見つけて取った夫の行動とは。悲しくも切ない夫婦愛。そして断絶しかかった親子の絆が、妻の遺した手紙によって再び蘇る。もう一つ許された罪の話は、敢えて書かないことにしよう。亡き妻との思い出を追って夫は1人山に登り、そこで事故に遭う。さて、夫の運命は果たしてどうなる?


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 夫婦愛とは何か。そして家族愛とは何か。人が人を許すとは、一体どんな行為なのだろう。この映画は観客にそんなことを問いかける。愛に飢えた現代人、失望感に打ちひしがれた私達現代人に対してだ。そして妻(夫)が倒れた時、残された者は果たしてどんな行動を取るのか。この映画はそのことに、ヒントを与えたように思う。完成した石塀を、天国の妻はきっと喜んで観ているに違いない。そして北海道の大自然は、今日もまた美しく広がっている。





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Last updated  2015.07.14 05:41:30
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