マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2016.04.11
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テーマ: ★人生論★(325)
カテゴリ: 人生論
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 ある日、一人の老人が歩道の車止めに自転車をぶつけて転倒してるのに遭遇した。男は大丈夫かと尋ねた。老人は「十分避けられると思ったのだが、ぶつかった」と、力なく笑った。「俺もそんな危険性があるなあ」と男は思った。緑内障のため、視覚に欠損部分があるのだ。それに焦点距離が左右の眼で違うため、物が二重に見える。このため、走っていても良く躓く。足が上がらないせいもあるが、眼の影響が強い。最近は自転車に乗っていても危険性を感じることが増えていたのだ。



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 男が整骨院へ行くようになってから3週間経った。腰と左の肩に痛みがあったのだが、若い先生の施術で、かなり状態が改善したように思う。マッサージに電気治療、それにウォーターベッドと言う、マッサージ器での治療が中心だ。これで1回300円。保険が利いて1割負担なのが助かる。10回通っても3千円。通常のマッサージ師なら1回でもそれくらいは取られるだろう。これまで7回ほど通ったが、後3回は行きたいと男は考えている。



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 山形勤務時代に仲人をしたT君から挨拶状が届いた。本社(そうは呼ばないのだが便宜上)勤務だったのが4月1日付けで横浜に転勤した由。彼の実家は神奈川の大磯。18年前からいずれは神奈川に帰りたいと希望していたのが、ようやく実現したのだ。彼の父上は最近亡くなり、年賀状も母上の名前で来ていた。「結局俺は何も出来なかった。まあ頼まれ仲人だしなあ」。男は淋しそうな顔をしながら、T君へ「おめでとう」と書いた葉書を出したのだった。


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 かつて男は「お父さんの老後の面倒は見ないよ」と長女に言われたことがある。「四国に住む娘に世話になることはない」。その時男はそんな風に思っていた。そして今回は「お父さん、孤独死しても良いの」と言われた。「ああ、覚悟の上だ」。男はそう答えた。これまでは「どう生きるか」を考えて来たが、これからは「どう死ぬか」を考えることになるだろう。男はそんな風に思ったのだ。



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 「あれは最悪だった」。男がつぶやいた。四国の松山勤務の時、ある有名な神社で御神籤を引いたことがあった。結果は大凶。次男の県立高校受験は失敗し、次男は一人残って下宿から私立高校へ通った。男はその年の4月から大阪勤務になったのだ。その後次男は煙草を覚え、大学受験にも失敗した。東京の専門学校時代はサラ金から金を借りて友人とアメリカへ行き、その支払いに苦しんだことがあった。就職にも失敗して仙台へ戻り、アルバイトして過ごした時期もあった。

 今は東京で派遣社員をしている次男が、あることを妻に話したそうだ。それを聞いた男は次男の成長を感じたようだ。「これまで何度も躓いたことが、きっと生きたのだろう」。「それに現実的な娘と違って男だけに、きっと父親の気持ちが分かるのかも知れない」。男はそんな風にも思ったのだ。



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 「東京の長男からは何の音沙汰もないなあ」。男は思う。妻との折り合いが悪く、最近は連絡もない。長男も公立高校の受験に失敗し、たまたま男が転勤した沖縄の私立高校に何とか合格した。勉強が嫌いな長男と次男は気楽な沖縄の暮らしに慣れ、本土に戻ると厳しい現実に打ちのめされた。専門学校や就職先は男が苦労して探したのだ。だが、その職場からも退職を勧告されるほどの勤務態度だったそうだ。男は友人に侘び、長男は一時仙台の自宅に帰って来た。

 長女がこの家に住んだのは、花嫁修業の1年間だけ。長男、次男に至ってはわずか数ヶ月間の我が家だった。今子供部屋の一つを男が使い、他はたまに里帰りする次男が使い、もう一部屋は妻のアトリエ代わりになっている。「もう誰もここへは戻っては来ないだろう」。男はつぶやく。妻との間もしっくりしない男には、孤独死しか待ってないのかも知れない。「それもまた俺の運命」。それが最近の男の心境のようだ。



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 早朝のブログ。朝は玄関とガレージの掃き掃除。ベランダの掃き掃除。風呂の掃除。資源ごみの整理。畑から白菜の蕾菜収穫と冬の間土に埋めていた最後の大根2本の掘り起こし。植木鉢への水やり。そして趣味のランニング。昼は自分で麺類を作るのがここ10数年の慣習。もちろん自分の食器は自分で洗う。その他、布団や洗濯物を干し、乾いたら取り込んで自分の洗濯物は自分で処理するのも男の仕事。畑仕事や庭の草取りも、もちろん男の担当だ。

 「これが結構俺の自立に役立っているし、今後も役立つだろう」。男はそんな風に思っている。事実単身赴任を3年間経験し、長男と2人だけ残った沖縄の3年目は炊事洗濯の全てを男がやっていた。「だが問題は年だ。それに今はまだ体調が良いのだが」。男の表情が少し翳った。それでも男には迷いがないようだ。「これからはどう死ぬかが最大の問題だな」。男はそう呟いて大きく息を吐いた。<続く>






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Last updated  2016.04.11 05:26:10
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