マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2019.01.28
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~琉球王国の栄光と挫折~


  <琉球王朝の家紋 左三つ巴>

 沖縄本島の北部は「北山」と呼ばれ、樊安地(はんあんち=地名の羽地を中国式にしたのだろう)が支配。南部は南山と呼ばれ他魯毎(たろみ)が支配。これを破って統一したのが中山の尚家。それまでは各豪族が勝手に中国に使者を送っていたのを統轄。尚円から始まる第二琉球王朝は首里に王府を移し、奄美群島から八重山地方までを傘下に収め、中国との柵封体制と貿易により、巨大な富を得ることになる。

        島津家家紋   

 その富に目を付けたのが島津藩。仙台藩領に漂着した琉球王国の島民を引き取って琉球まで送った。ところが琉球王から何のお礼もなかったことに憤慨し、家康に討伐を願い出た。実は室町時代にも琉球の富に目がくらんだ豪族が将軍に討伐を願い出たのだが、実現はしなかった。琉球へ侵攻した島津藩は、たった3日で首里王府を降伏せしめたと言う。何せ琉球にはさしたる兵器はなかったのだ。そしてかつて琉球に奪われた奄美の8島もこの時に奪い返した。



 これが琉球王朝時代の最大貿易範囲。北は日本、朝鮮、中国、現在のフィリピン、ベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイなどだからその広さが分かるだろう。沖縄にさしたる貿易品はなく、せいぜい螺鈿と硫黄。螺鈿は貝殻だし、硫黄は奄美の中に琉球の飛び地としてある「硫黄鳥島」から採れた。火薬の材料であり、火山のない中国にはとても貴重な資源だった。



 ただ、琉球に貿易船を建造する技術はない。遠洋航海が可能な「竜骨」を備えた構造船は、中国に依頼し造ってもらった。通訳も中国人。各地に華僑がおり、外国語に通じていたためだ。柵封下の国々へ、中国は貢物の数倍の品を与え、琉球はそれを持って外国へ出かけ、別なものと取り換えた。日本からは刀剣や蒔絵など、南方の島々からは貴重な香料や香木など。つまりバーター取引で琉球は栄えたのだ。



  琉球は中国にとって好都合な国。大切に敬ってくれるからだ。それで琉球を「守礼の邦」と呼んだ。これが「守礼門」の謂れ。だが薩摩にとっても琉球は好都合。琉球の貿易は薩摩の収益につながったからだ。琉球ではサトウキビを増産させ、税として薩摩に収めさせたためさらに収益は増した。明治維新での薩摩の活躍は、一面で琉球の犠牲のもとに成り立ったとも言える。



 幕末期、ペリー提督の率いる米国艦隊が琉球に立ち寄った。琉球を奪う意向もあったのだろうが、まず日本へ開国を迫りに向かった。この時琉球は水と燃料を無料で提供したため、船はそのまま立ち去った。上陸した艦隊の観察によれば、琉球の士(さむれー)はとても無気力で、ただ煙草をくゆらすだけだった由。もし日本が開国しなかったら、琉球は米国に奪われていたはず。まあ歴史に「もし」はないのだが。



 危機感が乏しかった琉球は、江戸初期に薩摩の支配下となり、明治期には一時期琉球藩となった。その琉球人が台湾に漂着して蛮族に殺害されると、明治政府は清国に抗議して日清戦争の端緒となり、賠償として台湾を割譲。「琉球処分」の際に清に助けを求めた琉球人は、よほど時勢を見る力がなかったのだろう。維新前夜、日本では血で血を洗う大変動があったのだが、沖縄で死んだ者は数人だ。

                     

 東京帝国大学で農学を学んだ英才謝花昇(じゃはなのぼる)は、故郷沖縄県の技官として働き、様々な改革案を提案する。だが、彼の意見に耳を傾ける者はなかった。初代の奈良原県令(現在の県知事)は旧薩摩藩士で、鹿児島の豪商に沖縄開発の権限を許すなどの悪政。税も全国で一番厳しかった。東北出身の第3代上杉県令は沖縄を憐れみ善政を行ったが短期で転任。絶望した謝花は神戸駅で狂死した由。

 那覇 孔子廟

 かつては広くアジアの国々と交易し繁栄した琉球王国。だが国際認識に欠け、かつ学問を怠れば衰退は目に見えている。今も島嶼県の特殊性に慣れ染まり、特定の情報を鵜呑みにし、ただ「基地反対」を叫んで国から膨大な予算をせしめる沖縄。かつての宗主国である中国を未だに信奉する県民もいるのだが、そろそろ現実に目覚めるべきと思うのは、果たして筆者だけだろうか。<続く>





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Last updated  2019.01.28 00:00:23
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