マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2020.01.26
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テーマ: 結婚(622)
カテゴリ: 人生論
<軌道修正>



 突然椅子が倒れ、私は床に転がった。この状態をどう理解すべきか。先ず部屋の照明を点けた。PCの蓋が開いたまま。その左側に焼酎のコップ。空調機と、石油ファンヒーターは消えていた。本来なら寒いはずの部屋が、足元だけが暖かい。何か変だと見ると、電気ストーブの管が1本だけ赤い。それで足元がほんのり暖かい理由は分かった。



 コップの焼酎をシンクに捨てて、寝床に潜り込む。さすがに2時間も暖房を切った布団は冷たい。そこでソファーに転がっていた靴下を履いてみる。照明を落とし眠ろうと意識。そしてこんな状況になった理由を思い出した。中国から帰国後、私はあるプランに熱中していた。微熱があり、洟水も出たが、例の「コロナウイルス」による肺炎ではないと判断。前日の検温は36度2分。これならいけるはず。




 それにしても危なかった。椅子が倒れた時に電気ストーブが倒れたら火事になる可能性もあった。それがそうならなかったのは、私が倒れた場所とストーブとの間に隙間があり、それでストーブを蹴飛ばさずに済んだ。不注意な事故。まかり間違えば焼死したかも知れないのだ。もし火事の原因が「当事者の過失」なら保険金が支払われたかどうか。もっとも自分が受け取れたかも不明だ。



 冷たい寝床の中で考えた。倒れた原因は疲れ。睡眠不足で体調は最悪だった。それでこの晩はどうしても寝た方が良いと判断し、いつもの焼酎に加え睡眠導入剤を1錠飲んだ。あれが第一の判断ミス。しかも眠った場所が最悪。おまけにその状態でPCを立ち上げ、急に眠気がして倒れた。しかしなぜスローモーションみたいな倒れ方をしたのか。



 実は数日前から椅子の背もたれ部分がバラバラになりかけていた。もともと木組みが弱い安物だが、何度も背中を預けているうちネジの部分が緩んだのだ。針金で椅子全体を縛り、ペンチで懸命に締めた。だが、それでも強度不足だったのだろう。もう謎解きは止め、眠りに集中する。



 前日恩師から電話があり、ある場所で待ち合わせた。かなり前から私はその建物の入口に立って、バス停から来る人数を予想していた最大値は3だったが。降りて来たのは紙袋を下げた恩師のみ。それでもう成り行きは分かった。3階の喫茶店で言葉を交わす。「最初の指導は「ラブレターの書き方」。あんなんじゃ女は受け取らない由。



 2つ目の指摘は私が経歴を描いたこと。70代半ばにもなる男が、今さら高校時代の恩師にそんなことを言われる筋合いもないが、説教が仕事と考える彼のために、我慢して聞いた。だが私の本音は別。「学術畑」の話は、普段彼らが接することがない世界なので、親切心で書いただけ。



 全国的な転勤に触れたのも、彼らに実感をもってもらうためで、自慢する意図はない。だが仙台市内で働いた経験しかない2人に辞令1本で全く事情の異なる土地へ家族全員で異動する激務を2、3年おきに繰り返すことなど到底想像できない世界だったのだろう。それが管理職の定め。そんな厳しい世界を分かれと言う方が無理だったのかも。



 恩師が最後に聞いた。恩師の子供時代の友で、私にとっは2番目の上司だった方の自殺の理由。私は筑波に異動し、たまたま研修の会場で、訃報と葬儀場所の電報を受けた。特別に休暇をもらい、急遽仙台へ。彼の死因は絶望のはず。彼は県からある教授のつてで転勤した人。



 それから彼の絶望が始まったのでは。教授に頼まれたから転勤した。行った先の事情も課題も把握しないまま。その一方、行政に明るいH氏(私の最初の上司)は人望もあり、進取の精神に富んだ彼は、一旦他部の課長補佐となり、元の部署の長として戻った。そうなるともうS氏が逆転するのは至難。死者に鞭打つようだが、結局彼は優柔不断だったのだろう。



 つまりはどれも似たようなもの。変化刺激に乏しい平和な職場に安住していると、その雰囲気にどっぷり安住し、それ以外の風景が見えなくなる。頼まれたから異動した。頼まれたから見合相手の写真を見た。だが自分の考えと異なる相手だった時は可能性や限界が見えて、「お断り」すら他者に頼んだのではないのか。



 一方の私は勝手に将来設計までし、結婚式を挙げる教会の下見までしていた。そしてそれが駄目な場合の代案も。だが私が選んだお土産が不満で、その返却を実兄に頼んだ。何もかお膳立てしてもらうのは縁談だけでなく、仕事も同様で、彼女は部下が造ったプランに目を通すだけだったに違いない。



 妹さんへと託した梅干しとユズのマーマレードも、彼女が口にしたかは不明。恐らく兄にチェックされたのは間違いない。すると「あて馬か出汁」だったんだねえ俺は」。まだ青年時代の頃、合唱団の先輩女性からこう言われた。「たとえ恋に恋して破れても、恋しないよりは良いんだよ」と。その時はそんなものかと思ったが、今ならうなずける。私は今声高らかに宣言する。「命短し恋せよ爺と。<続く>





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Last updated  2020.01.26 16:52:43
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