マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2021.05.25
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テーマ: ★人生論★(325)
カテゴリ: 人生論
~脳の一部が破壊した荒行~



 先日テレビである番組を観た。一人の僧侶が記者の質問に応えているが、それだけではなさそうだ。話が進むうち、意外な展開を見せ始めた。「あれっ、この人のことは聞いたことあるぞ」。しかもわが家と同じ区にお寺があり、かつてない偉業を成し遂げた人。その当人が成就した「行」の実態を知るのだが、全く予測不可能な凄まじいものだった。



 多くの信者に囲まれた塩沼亮潤(しおぬまりょうじゅん)大阿闍梨。(だいあじゃり)。住職を務める慈眼寺(仙台市太白区秋保)にて。師は1968年(昭和43年)仙台市生まれで東北高校卒。比叡山延暦寺の酒井雄哉師が、史上初めて「千日回峰行」を2度達成したことをTVで知って、自分も千日回峰に挑戦したいと願ったそうだ。偶然にも、そのニュースは私も聞き、世の中には凄い人がいるものだと衝撃を受けたものだ。

  奈良県吉野山金峯山寺

 塩沼青年は早速行動を起こす。1987年。19歳で吉野の金峯山(きんぷさん)寺にて出家得度(金峰山修験本宗)。1991年23歳で大峰山千日回峰行入行。1999年31歳で千日回峰行満行。翌年四無行満行32歳。番組作成のため記者と修行地の吉野に赴き、塩沼氏は現地の人たちと親しく挨拶をしていた。小僧時代の塩沼氏を良く知っている地元の方々は、久しぶりの再会に感激していた。

 若き日の師は千日回峰行に向けて毎朝早朝に起き、トレーニングのために山道をランニングする姿を目撃されていたのだ。私は大阪勤務時代に吉野の桜を見に行き、この金峰山寺の姿を良く覚えている。

     蔵王権現   

 この寺は真言宗の僧侶(満堂方)、天台宗の僧侶(寺像方)、神社の仏事を行う(社僧)らによって運営されている由。神仏混交のうえ、吉野から大峰山、熊野にかけては、修験道の祖と伝わる役行者(えんのぎょうじゃ)が開拓した山伏の修行の場でもある。その守護神が蔵王権現なのだろう。

  役行者(えんのぎょうじゃ)木像

 さて、わが宮城県にも「蔵王連峰」があり、東北地方には役行者の修行地と伝わる場所も多い。役行者は吉野から東北まで、空を飛んで移動したと言われる。私が初めて役行者の木像に接したのは、熊野那智大社の神護寺である青渡岸寺の本堂だった。旅を重ねていると色んな事象や事実に遭遇し、わが国の歴史認識や、日本人の優れた感性について示唆を受けることが多い。

 千日回峰のコース   

 「千日回峰行」を再現(普段「回峰行」の撮影は許可されない)するために53歳の師が錫杖(しゃくじょう)を片手に、鎖も使わずに急な崖を登って行く。若いプロデューサーは必死で後を追うが、危険な場所は避けた。大峰山千日回峰行は高低差1300m以上の厳しい山道を、往復48km、1日16時間以上、千日間歩き続ける荒行。

  大峰山山上ケ岳(コース)

 修行期間は年間4か月。それを足掛け9年行い、その翌年に「飲まず」、「食わず」、「眠らず」、「横たわらず」の「四無行」を9日間行う。それで満行となるが、これまで達成したのは1300年間でわずか2人だけとのこと。達成者は「大阿闍梨」(だいあじゃり)の尊号を授かる。上の写真の右奥に見える大峰山が千日回峰行の中間地点で、ここからまたスタート地点に戻って1日が終わる。それは雨の日、雪の日、嵐の日も同様。照明器具があるようには見えなかったが。



 行を終えた塩沼師は仙台へ帰省する途中、東京で人間ドックを受けたそうだ。その時に脳の撮影をしたら、後頭部の3分の1ほどが真っ黒になっていた由。その写真がTV画面に映ったが、ドクターの診断によれば、不眠不休の厳しい修行を長期間続けたために脳が大きなダメージを受けて、「破壊」されたのだろうとのこと。1300年間に2人しか達成出来なかった荒行の凄さが理解出来よう。師の体は白血球が少ない特異体質のようだが、今もランニングを楽しんでおられるとのこと。

  慈眼寺

 塩沼大阿闍梨は故郷の仙台に帰って、秋保温泉の奥に建立した慈眼寺で住職を勤める傍ら、世界中を飛び回り、仏教の精神と平和の尊さを説くなど、活発な講演活動を行っているそうだ。3分の1が破壊された「脳」はどうなったのだろう。徐々に再生されるのか、それとも今後重大な障害が発生するのか。塩沼師はそんなことに拘ることなく、今日も穏やかな笑みを浮かべつつ信者に接している。

            護摩供養する塩沼師   

「比叡山の千日回峰行」成就に感銘を受けた少年が、自らも厳しい修行の道を目指し、見事2人目の「大峰山千日回峰行」満行を叶え大阿闍梨となった。塩沼師の慈眼寺では節分の際、「福は内、鬼も内」と唱えるそうだ。それは悪行を重ねる鬼を仏の力で改心させ、再び世に送り出すためとか。何と尊い話ではないか。不信心で不遜な爺の心にも、一瞬灯が灯った(気になった)のであった。 合掌。





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Last updated  2021.05.25 16:43:01
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Re:ある高僧の行とは(05/25)  
Kazu さん
Aさん,こんにちは~

自転車の走行距離はGPS付きの時計で計測しています。マラソンの名残,ま
たランで使いたいものです。

お寺さんに興味があるので,千日回峰について達成者は「大阿闍梨」の尊号を
授かることや修行内容など,いくらか知識はありました。
しかし,秋保温泉の奥に建立した「慈眼寺」で住職をなさっているとは全く知りませんでした。
大変貴重な情報,ありがとうございました。コロナ終息しましたら是非参拝
し,御朱印も頂戴したいと思います。

本日,久しぶりにUSO放送に投稿掲載さてました。 (2021.05.25 10:48:13)

Re[1]:ある高僧の行とは(05/25)  
マックス爺  さん
Kazuさんへ

今日は~!!
いつもコメントありがとうございます。
とても嬉しく拝見しています。💛😊

距離計測方法、了解です。やっぱりランで
使いたいですよね。(^_-)-☆

新聞、拝見しました。なるほどそう
来ましたか。今は銀行も大変な時代なの
でしょうね。( ;∀;)

お寺は秋保からからさらに二口方面に向かい、
右手の丘の下にあります。二口街道から
少し離れているので要注意。注意してたら
お寺が見えます。

たまたま先日NHKで特別番組を放送していました。
大峰山は、比叡山のコースよりかなり厳しいですね。
あのコースを連日歩くのはとても人間業じゃ
ないですよ。ぜひご参詣くださませ。
(2021.05.25 11:27:07)

Re:ある高僧の行とは(05/25)  
凄いな! と思いながら息を詰めるような気持ちで読み進みました。
私も比叡山延暦寺の僧が千日回峰を達成し大阿闍梨となられたことは、だいぶ前にテレビで見たことがありました。私が比叡山延暦寺に参拝に行った後のことだったので、大変興味深く見た記憶があります。

 千日回峰達成者がもう一人おられたことは知りませんでした。
しかもマックス爺さんの身近におられたとは。修行内容も熟読しましたがとても人間が耐えられるというか、先ず不可能なことですね。

 ランニングにも励んでおられるということで、いつか何処かで遭遇されるかもしれませんね。 (2021.05.25 18:17:04)

Re[1]:ある高僧の行とは(05/25)  
マックス爺  さん
クマタツ1847さんへ

今晩は~!!
いつもコメントありがとうございます。
とても嬉しく拝見しています。😊

あのね、クマタツさん。同じ千日回峰行でも、
全く場所が違うのですよ。

延暦寺の方は達成者が何人もおられます。
ただ酒井大阿闍梨は1人で2回達成した初の方。
コースは40kmから80kmと長いのですが、
山の険しさは違いますね。

このブログに紹介した方は、1300年間で
2人目と言う困難さ。コースの大峰山の山上ケ岳
はまるで崖を登るような感じで、あそこを
悪天候で登るのはプロの登山家でも厳しいと
感じました。

一般の方が修行するのはせいぜい一週間。
それも山伏が先導します。それでも凄い行みたい
ですが、そこを1人で千日間ですから人間業
ではないですね。(;^_^A
(2021.05.25 19:32:58)

Re[2]:ある高僧の行とは(05/25)  
マックス爺さんへ
いやはや、いつもの私の早とちりでした。(笑)

いつも妻に言われています。

ご教示いただき、比叡山のことも今回の塩沼師のこともよくわかりました。
ありがとうございます。 (2021.05.25 20:54:01)

Re[3]:ある高僧の行とは(05/25)  
マックス爺  さん
クマタツ1847さんへ

お早うございます!!
何度もお運び下さり、ありがとうございます。


勘違いは誰でもありますが、文章をじっくり
お読みくだされば、理解出来たかと存じます。

理解はまず熟読から始まります。
釈迦に説法ですが。(;^_^A

仙台は今日も厚くなりそうです。
早速職植木鉢への水やりからはじまりました。
くれぐれも猛暑にはご自愛下さいませ。☀(;^_^A
(2021.05.26 05:30:49)

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