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カテゴリ: 競馬全般
日本調教師・騎手名鑑など多くの著書のある氏の昭和45年9月発行の本である
その中に、「調教や宿の思い出」という項があって、「宿は中山では山門前の角庄、府中では大国魂神社前の松本、横浜では、なんとか川のそばの日米ホテルと決まっていた。はじめのころは人力車を頼み、人力車がなくなってからは自動車を頼んでおき日支事変が始まって自動車が不自由になってからは、中山では角庄の板前の自転車を借りてたり歩いたりしていた。
戦後は、その宿がみんななくなってしまった。府中の松本も、中山の角庄も料理屋兼旅館であったが、旅館のほうを止めたので、再び競馬の仕事をはじめたときには、調教を見るための宿に困ってしまった。府中では、安倍正太郎君に頼んで、森末之助君の厩舎に泊まれるようにしてもらった。馬場に行くのに二、三分でいけるので、とても助かった。何しろ調教の時間は早いし冬などは寒いし、雨が降ったときなどは、とても遠くからでは間に合わないし、厩舎に泊まれば、なにかと馬の話を聞くのに便利だった。水曜日の午後三時ころに厩舎に行き午後の運動などを見て、馬の様子を見、木曜日の追い切りを見るのは、色々な点で都合が良かった。このごろ《当時)は午後の運動も三時には終わっているが、前には運動は惨事ころから始まって五時コロに厩の仕事が終わるようであったから、運動を見た後で厩を回って馬の調子などを馬手さんや、調教師、騎手に聞くので泊まるトコが厩舎なら都合が良かった。
私は府中では田中和厩舎《師がなくなってからは荒木厩舎》、中山では鈴木信厩舎をより所にして四手色々な話を聞いた。田中厩舎には、小西、阿部正君が鈴木信厩舎には石毛、松永君がいて、聞きたい話は何でも聞き、みんな親切に教えてくれたし説明もしてくれた。
柴田恒厩舎にも調教やドノ厄介をかけた。府中で之日吉寮の利用は、余り、他の社の人間で混まないだろうと思うときだけにし、天皇賞やオークスとかダービーとか特別のレースがある前の追い切りの時には、そういうときには藤本邸や課が武見君のところに厄介になる。朝馬場bに行くときに加賀君が自動車に乗せてくれるので大いに助かっているし、加賀君は、多くのレースに出ているし、レースの話をきくのがとてもさんこうになるからである。柴田恒さんの奥さんが入院したところには、幸いなことに野平祐二君の家が出来た。その二階の部屋が佐々木猛調教師をして「井上御宿」と書いてあるんでしょう」と笑われるほど世話になった。
私は、これまでもそうだが、この馬で勝てるだろうかとぴう事は聞かないでいる。馬の調子とか手応えについては執拗に聞くが、野平君なり加賀君の乗る馬で、勝てるかどうかということは聞かないし、聞かないでも、自然に相互関係がわかってくる。
オールカマーの調教のとき野平祐二君がローレルに行っていたときには二本柳俊夫君が「祐二君がいないから井上さん、僕の家にお出でなさいよ」と言ってくれたので柳君の家に厄介になった。その前に一度柳君のところに泊めて貰ったことがあったが、そのときには、アズマテンランがオールカマーに勝った。」

というようなことが書いてあった調教師と騎手に絶大な信頼がなければ不可能であろう。





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最終更新日  2010年09月07日 12時57分47秒
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