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2018.09.30

9月30日はモーツァルト作曲の最後のオペラ『魔笛』が初演(1791年)

テーマ：モーツァルト(120)

カテゴリ：管弦楽

　1791年の9月30日、モーツァルトの不朽の名作歌劇「魔笛」が、モーツァルト自身の指揮により、ウィーンのウィーデン劇場で初演されている。この歌劇は、この劇場の経営者で喜劇俳優であったシカネーダの依頼によって作曲されたもので、すでに健康をむしばまれていたモーツァルトは、この歌劇の作曲中に体力をひどく損耗し、初演の65日あとに、あの世への帰らぬ旅に旅立ってしまったのである。モーツァルトの絶筆となったのは、有名な「レクイエム」(死者のためのミサ曲)であるが、その死のまぎわまでいつも彼の頭を占めていたのは「魔笛」の反響だったようだ。というのは、その初演は、予期に反して、それほど暖かく迎えられなかったからである。しかし、この歌劇の人気は、2回、3回と回を追うごとに上がり、その年の10月のうちに24回上演され、翌年の11月23日までに百回も上演されるほどの人気をかちえたのだった。モーツァルトがいかに歌劇「魔笛」を愛していたかは仕事がいそがしくて劇場に行けないときでも、「魔笛」の上演時刻がやってくると、時計をながめては、舞台ではそのときどんな場画が演ぜられているかを想像して楽しんでいた、というエピソードからも容易に察することができよう。この年の12月4日、つまり死の前日であるが、何人かの友人の音楽家たちが彼の家に見舞いにやってきた。モーツァルトは、そのとき、書きかけの「レクイエム」を彼らといっしょに歌った。曲が「ラクリモザ」(涙ながらの日よ)のところまできたとき、彼は、急に泣き出してしまい、その先を歌うことができなかったという。しばらくして涙をおさめたモーツァルトは、こんどは「魔笛」を聞きたいといい出し、みずから有名なパパゲーノのアリアの一節を口ずさんだ。
　わたしは、鳥刺し男でございます。いつも愉快にエッサッサ。老いも若きも、この国中で、知らぬ者なき鳥刺し男。・・・鳥は残らず、おいらのえもの、されば、愉快に、よい機嫌・・・
　「魔笛」のなかでもっとも楽しくほがらかなこの歌をモーツァルトはたいへん好んでいた。そこで、客のひとりの楽長ヨハン・ゲオルク・ローザーが、クラヴィアを弾きながらこのアリアを歌ってきかせたのだった。このエピソードは、生来楽天家で屈託のなかったモーツァルトの性格の一面を示すものとして忘れられない。それにつけても思い出されるのは、モーツァルトよりもさらに5歳も若く、31歳でなくなったシューベルトの絶筆「白鳥の歌」である。シューベルトは、この歌曲集の最後に、伝書鳩に託して恋人に愛の便りをおくるという、希望にみちた甘い内容の歌「鳩の使い」を書いて死んでいった。死のまぎわにそうした明るい恋の歌を書いたシューベルトと、「鳥刺しのアリア」のような天真らんまんな歌を回ずさみつつ死出の旅路についたモーツァルト。このふたりには、たいへん共通したものがあったように思われてならない。(志鳥栄八郎)
歌劇「魔笛」K.620 - 序曲
　 https://ja.wikipedia.org/wiki/魔笛

モーツァルト/歌劇序曲集
　 https://www.amazon.co.jp//dp/B003QERSLQ
　 http://ml.naxos.jp/album/8.550185
　１２歳からオペラの作曲をはじめたモーツァルトモーツァルト音楽の心髄があつめられたオペラ序曲重厚なものからコミカルなものまで１４のオペラ序曲を収録広く演奏される「魔笛」「フィガロの結婚」「コシ・ファン・トゥッテ」序曲
　アポロとヒュアキントゥス K.38 - 序曲
　歌劇「バスティアンとバスティエンヌ」K.50 - 序曲
　歌劇「ポントの王ミトリダーテ」K.87 - 序曲
　歌劇「ルーチョ・シッラ」K.135 - 序曲
　歌劇「偽りの女庭師」K.196 - 序曲
　歌劇「羊飼いの王様（牧人の王）」K.208 - 序曲
　歌劇「イドメネオ」K.366 - 序曲
　歌劇「後宮からの誘拐」K.384 - 序曲
　歌劇「劇場支配人」K.486 - 序曲
　歌劇「フィガロの結婚」K.492 - 序曲
　歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527 - 序曲
　歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」K.588 - 序曲
歌劇「魔笛」K.620 - 序曲
　歌劇「皇帝ティートの慈悲」K.621 - 序曲
　　バリー・ワーズワース指揮/カペラ・イストロポリターナ
　録音: 6-9 September 1988, Concert Hall of Czechoslovak Radio, Bratislava