1年 南風一
10時の時報が鳴って
車のドアを閉めると
2階の会議室へ急いで駆け上がった
部屋に入ると
ボランティア仲間はすでに着席して
残すところ私一人となっていた
きみの姿が見えたけれど
そこにまっすぐ行くには気が引けたので
ぐるりと後ろから回ってはみたけれど
結局きみの隣に着席することになった
ただきみの隣で
きみの横顔や掌
素肌の足首、踵を盗み見るだけでも
幸せだった
これから1年の予定を聞きながら
きみと会ってからの6年の日々のことを思い巡らせた
初めて自己紹介した日のこと
土曜日に集まったのがきみと俺の二人だけだった日のこと
土砂降りの中きみの車に乗って昼飯を食べに行った日のこと
どれも懐かしい思い出となって
ただきみと隣り合っていることを至福の時間として味わっている
きみを素っ裸にしたところで
女であることに変わりないだろう
セックスしたところで
他の女と変わるところはないだろう
そんなことを妄想する私と
とてもそんなことをする勇気がない自分を
交互に思い描いて
結局いつものようにおとなしく座っている
突然変化すれば
何かが変わるのかもしれない
変わらないのかもしれない
そこで変わって何かがよくなるというものではない
悪いことしか残らないということもある
そんなリスクを思い描いて
きみの横顔を盗み見ている私
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