最近、日本人の「成長」のあり方が、
どこかおかしな方向へ進んでいるように感じることがある。
以前、テレビでこんな話を耳にした。
新入社員の自己紹介で、
「自分は褒められると伸びるタイプなので、あまり叱らないでください」
と平然と言ったというのである。
もちろん、それ自体は一つの個性なのかもしれない。
しかし、それを違和感なく口にできる空気に、私は少なからず驚きを覚えた。
教育の現場でも、
長い間、「その子の良い面を見つけ、それを伸ばしていこう」
という考え方が重視されてきた。
それ自体は決して間違いではない。
子どもの長所を認め、自己肯定感を育てることは大切だ。
だが、その一方で、「苦しいことを乗り越える力」まで
弱くなってはいないだろうか。
最近では、
「新入社員が入社式の日に退職した」
「新人研修中に『この会社は自分に合わない』と感じ、休憩時間に退職代行へ連絡した」
そんな話まで珍しくなくなった。
もちろん、それらはごく一部の例なのかもしれない。
しかし私は、そうした極端な事例を面白おかしく
大々的に取り上げるマスコミの姿勢にも疑問を感じている。
むしろ社会全体として、その風潮を助長しているようにさえ見える。
本当に自分のやりたいことにたどり着こうと思うなら、
苦しいことや辛いことを避けては通れない。
努力し、失敗し、ときには理不尽さにも耐えながら前へ進む。
その先にしか見えない景色がある。
私は、これからの子どもたちにも、
そういう感覚を持って育ってほしいと思っている。
しかし今の社会は、どこか逆方向へ進んでいるように見える。
「好きなことだけやればいい」
「嫌なことからは逃げてもいい」
「自分に合わないなら無理をしなくていい」
もちろん、本当に心や身体を壊してしまう環境から逃げることは必要だ。
だが、「少し苦しい」「思っていたものと違う」
というだけで背を向ける癖がついてしまえば、
結局その人自身が、将来もっと苦しむことになるのではないか。
私はそんな危機感を抱いている。
だからこそ、片田舎の小さな塾ではあるが、
微力ながら私はその流れに反旗を翻している。
楽な道ばかりでは、人は本当の意味では成長できない。
努力すること。
踏ん張ること。
乗り越えること。
その価値を、これからも子どもたちに伝えていきたいと思う。
