続きです。
常和氏と高子さんの関係に戻ると、高子さん、 30
歳が目前に迫っていましたから、もうこの機会を逃しては結婚できないと焦っていました。
既に結婚していた友人たちは、今までの交際相手よりも絶対条件が悪そうな男でしたから反対したのですが、彼女がむきになって常和氏と結婚すると言い張るので、面白がって凄く当たると評判の易者に彼女を連れて行って占ってもらったのです。
すると、「あんた、何度も離婚するけど大金持ちにならはるわ。あんたたち、この人と仲ようしといた方がええで。それから、最初の子供は、十万人に一人の天才児が生まれるわ。」と言われたのです。
結婚する前から何度も離婚すると言う占いでしたから、連れて行った友人たちの方が、慌てて、易者を梯子したのですが、何と皆同じ結果だったのです。
それでも、複数の易者が同じことを言ったわけで、友人たちは、冷静に見ても彼女と釣り合う相手ではありませんでしたから、常和氏との結婚は考え直すようにと引き留めました。
しかし、余計に意地を張った高子は、半ば強引に常和氏に結婚を迫り、父の貴尚氏は渋りましたが、母の鶴子さんは親の言うことを聞けないのなら勝手にしろと突き放し、結局は常和氏を神坂家に養子縁組する形で、半年後に式も挙げずに結婚しました。
叔母の梨乃さんが失踪した後、結局住む家が無くなった常和氏でしたから、高子さんとの結婚を進めざるを得なかった面もあり、結婚後は神坂家に転がり込んで同居することになりました。
実は、常和氏も高子さんから占いのことを聞かされていましたから、彼女には話さずに、自分も同じ易者に見てもらいました。
すると、占った易者が、最初に聞きました。
「あんた、前の相手はどうしたんや。」
痛いところを突かれた常和氏、どうしても結婚できない事情がありましたからとごまかしました。
これはこれで真実なのですが、この易者は、そのことも見抜いていたようでした。
「そやな。大きな障害ありと出てるわ。しかし、今の相手よりずっと相性は良かったと思うわ。今の相手、結婚してもええが、子供が生まれる前に別れることや。」
何故子供が生まれる前に別れた方がよいのか疑問に思っていると、易者はその理由も述べました。
「最初の子供は、何十万人に一人の天才が生まれるやろう。そして、あんたが悪いんやが、その子が、あんたと奥さんの仲を引き裂くで。あんた、今の生活をコツコツ続けていく分には悪うない人生を送れるやろうが、生活変えたらあかん。それ以上に、絶対悪いことはせえへんことや。やったら身の破滅や。どうしても結婚したいなら、して直ぐに金だけもらって別れるっちゅう手もあるな。あんた、その相手が好きでも何でもないんやろ。それに、あんたより、奥さんの方がずっと金持ちなんやろ。」
確かに常和氏、高子さんにと言うより誰に対しても、好きという感情が持てないでいましたし、易者の言うことにはいちいちうなずけるものがありました。
また、高子さんが話してくれた占いの結果とも整合性があるものでした。
しかし、常和氏、戦時中に特殊任務で潜水艦に乗ったことを否定され、そのために海軍兵学校で特別な教育を受けたことも否定され、そして自分が本当は戸籍上の年齢よりも3歳年長であることも否定され、すべてを嘘だと否定されてしまう経験をした結果 PTSD
になっていましたから、易者が言うことを素直に聞けませんでした。
それ以上に、信じていたと言うよりも甘えていた叔母の梨乃さんにも裏切られた気がしていましたから、破滅願望もあったのです。
そして、不幸になるなら、高子も道連れだと。
画像は、食後ひだまりで昼寝のヤマトです。
順調に太っているような。
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