行き暮れた情感を持っている。
好んで日陰に添うような
声をかけるのが憚れるような。
極端に寡黙だったから、
無口なぶんだけ
幼さを感じたけれど
幼いながら充分に雄弁だと
後で分かった。
それにしても 彼女は
石膏のトルソーのような
哀しみを曳航する。
脊光性の植物が
仄暗く閉ざされた部屋で
やっと息衝くという風に。
もし、その原因が何にせよ、
悲しみが女を美しくする
ということがあるのなら、
彼女はそういうたちの女性だった。
不思議に生活臭を消し去った彼女なのだ。
死滅しない恋ってありますか?
それは人の希望に含まれるものだから・・・。
だれでも一時期はそのように願うものだから・・・。
コーヒーを淹れて彼女を振り返れば、
ソファーの腕に頬を載せて微かな寝息をたてていた。
凍てし薔薇手にしたたりし嘆ききく
*misty*