数年前から除雪作業が町役場から民間に引き渡されたそうだ。
年間億単位の費用がかかるらしく過疎化著しい町は財源不足。
そういえば、夜中にゴウゴウと音を鳴らしていた除雪作業風景
を最近見かけなかった。
「あ~、もう嫌になっちゃうわ。また店の前にあんなに雪を
残したまま。今年は全然、来てくれないのよ。ママさんダンプ毎日出動よ」
喫茶店のママが窓の外を眺めながら口を尖らせた。
少し痩せたみたいだった。
「除雪車のこと?」
「そうよ。民間になってから、今年に入ってからまだ二度しか来ないのよ」
「ここはまだいいわよ。通学路だし、商店街だから綺麗なほうよ。
ここへ来る途中、道路脇の積雪が去年より高く積み上げられたままで、
向こう側の道どころか街並みも見えなかったもの。
民間になったから、以前より頻繁に来てくれているんじゃないの?」
「違うわよ。アレは年間契約だから、何回除雪しても同じだからよ。
そりゃぁーね。ガソリン代、人件費、もろもろ全て一会社持ちだから、
一年目は損を覚悟で落札しているだろうしね~。
今はどこも大変だから。仕事が皆無、ゼロよりは
腹の足しになるだろうと想ったんだろうね~。
数日前までは舗道が見えていたのに、一晩で別世界だもんね。
ま。これがいつもの冬なんだけどさ。
しかし、よく降るわね~。男手がないと、こんなとき一番辛い」
また吹雪になった。視界ゼロだ。
「ところでさ、あんた、なにか用事があったんじゃないの?」
「用事というか、ちよっと聴いてみたいな、と想ったの」
「なにをさ?」
「ん・・・。わたしって頑固?」
「当たり前じゃん。頑固だよ」
「そうなの?そんなに頑固なの?」
「ま。訳のわかんない頑固とは違うけどね。こうと想ったら曲げないしょ?」
「ん。それは言える。だけど、それってイコール頑固?」
「で、なにがどうしたって?」
ママが呆れた顔をしてタバコに火をつけた。
「いや、別に・・・。ただ、あなたって意外に頑固なんですね?
って言われたから」
「誰に?」
「わたし、人の意見はちゃんと聞くわよね?」
「うん。だけど、思い込んだら曲げないしょ?」
「で、根性なしかな?」
「あんたは根性あるよ。他人の眼は気にしすぎだけどね」
「あ。そこ、そうなの。すごく気になる。
こんな拙いモノを、と笑われているんだろうな~、とか。
だからどうした?と自問自答もしている」
「どうしてさ?」
「ん・・・。とにかく素晴らしい人たちで一杯なの」
「当たり前。世界は広い。だけどカンケーない。あんたさ、
プロじゃないんだからさ~、好きでやっているんだから、
他人がどう言おうが、どう想われようが、好きなことを
すればいいじゃない」
「どこかで、これは邪道だな、とも想うし、だけど、
あれもこれも好きだから、とか想うわけ」
「いいじゃーない、それで。あんたはアレもコレもできるから、
そんなことが言えるんだよ」
「何一つ、満足なものはないわよ?」
「当たり前。それを探してゆくんだろうさ?
それが楽しいから続いているんじゃないの?」
「たしかに・・・」
「今、壁にぶっかったんじゃないの?なんでも深いから」
「ん。深いね~。短所か長所か、あ、これは違うな、と
すぐ分かっちゃうんだよね。一応努力はしているのよ。これでも」
「努力が足りない、とは言わない。それで食べて行くわけじゃないんだから、
今を楽しむ、それでいいじゃない。と、わたしは自分の趣味を一筋20年。
それまでは子育てとか生活苦でそれどころじゃなかったし。
ようやく今、好きなことが出来る」
「すごいよね~。先生だもんね~」
「好きだから。これしか能がないから」
「わたし欲張りなのかな~」
「欲張りだよ」
「やる以上は少しでもいいものをと想うのが当然でしょう?」
「かたち違えど、ものづくり、表現者はみな同じ」
「表現者ねぇ~。わたしとは無関係な言葉」
「何言ってのさ。あんたはそうでしょ。少し休んでみたら?
なんにもしないでボーとしていたら?そしたら、どうしようもなく
またやりたくなるから」
「あ。小降りになったから今のうちに帰る」
「あ~、また明日、朝五時起きしなくちゃ、
玄関の戸が開かなくなる~。ほら、ケータイ鳴ってるよ」
「うん。じゃ、またね」
「滑って転ぶんじゃないよー」
「はぁーい」
雪は降る、あなたは来ない~。
気づいたら、ハミングしていた。
そちらは雪、降っていますか?
さてっと、
(=^・^=)好きさん、あつまれ~♪
こんな日には楽しいことを考えよう。
misty you tube番外編
二年前に創った古いもので、<(__)>にゃ~。