2007/06/17
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カテゴリ: 醸造所訪問
saarstein1
葡萄畑の丘の上にある、シュロス・ザールシュタイン醸造所。

空一面を覆っていた暗灰色の雲が途切れ、緑に染まった葡萄畑のなだらかな傾斜に陽光が降り注いだ。丘の上端に聳える1900年に落成した醸造所のテラスに溢れる光が、ザールの渓谷を吹き抜ける風とともに試飲の行われている室内へと流れ込む。窓際のテーブルに並ぶクーラーからボトルを取り出し、グラスに一口だけ注ぐと、淡い金色に輝く2006年産のリースリングから爽やかな柑橘とミネラルが香り立った。

「去年は、10月5日にヴァイスブルグンダーの収穫からとりかかったのだけど」と、シュロス・ザールシュタイン醸造所のオーナー、クリスチャン・エバート氏。「他の葡萄も完熟していて、大あわてで収穫しなくちゃならなかったよ」 83エクスレで始まった収穫作業は、11haをわずか2週間半で完了。収穫期間の乾燥した好天と傷んだ房を捨てていったことで、収穫量こそ例年の3割減となったが、ワインの質は非常に高い。最も手頃な価格(4.60Euro)のハウスワインから既に、ミネラルと黄色い柑橘の香る爽快な仕上がりを見せている。

エバート夫妻
醸造所オーナーのアンドレアとクリスチャン・エバート夫妻。

先日のVDPモーゼルの新酒試飲会では濃厚に思われた果実味も、醸造所で改めて試飲すると、ミネラルと酸味の充実感に由来していたことがわかる。ザールのワインを「鋼鉄」に例えさせるこの二つの要素は、かつては軽さの中で突出して感じられたものだ。だが、2005, 2006年と温暖化の影響で完熟した葡萄果汁にある酸味は、明確に存在を主張するものの、ミネラルとともに果実味の力強い支柱となり、ワインに生き生きとした躍動感と凛々しさを与えている。中辛口、甘口と甘みが明瞭になるにつれて、味わい全体の調和の厚みを増しつつ、基底にあるミネラルと力強い酸のアクセントが立体感を与えている。

ザールの最も奥まった所にあり、最も寒冷であった醸造所の所在するゼーリヒ村は、温暖化の恩恵を現在最も受けているようだ。新酒も既に半分は売り切れたと言った時、人当たりの良いクリスチャンの笑顔がいっそうほころんだ。

お手伝い
「ちゃんと冷えているかな?」試飲会のお手伝いをするエバートさんの娘さん。

二部屋にまたがる試飲会場の奥に、もう一つテーブルがあった。そこに並ぶのはボックスボイテル。フランケンのハンス・ヴィルシング醸造所のワインだ。クリスチャンの奥さん、アンドレアの実家である。所有する畑面積は72haと、かなり大きい。
「従業員も20人くらいいるよ。僕の実家じゃ、1人しか雇っていないけど」と、ヴィルシング醸造所で研修中のマキシミリアン・フォン・クーノゥ氏。11haの葡萄畑を所有するザールのフォン・ヘーフェル醸造所のオーナーの息子である。「規模も違うけど、葡萄品種も違うし、辛口が多いことも違う。だから面白い」とマキシミリアン。栽培品種の38%がジルヴァーナー、20%がリースリング、8%ずつミュラートゥルガウとヴァイスブルグンダー、その他にショイレーベ、ケルナー、シュペートブルグンダーにドルンフェルダーなど。一方、フォン・ヘーフェル醸造所は100%リースリングだ。

このフランケンにあるドイツ最大の個人経営醸造所の一つは、規模は大きくても、ワインの品質はシュロス・ザールシュタイン醸造所にひけをとらない。ここでもまた、ハウスワインに相当する「ザンクト・ファイトSt. Veit」(ケルナー、ミュラートゥルガウなどの混醸、5.20Euro)からして既にミネラル感のしっかりした華やかさのある辛口で、とても楽しめる。ジルヴァーナーのカビネット辛口はメロンと青リンゴの香る、フルーティで調和のとれた辛口で、ジルヴァーナーのお手本のようなワインだが、同品種のシュペートレーゼ“S“は一気に果実味が舌の上で広がる奥行きを備え、複雑さ、土壌の味わい、完熟したりんご、プラムなどが渾然一体。見事なものだ。最上の畑イプホーファー・クローンスベルクとユリウス・エヒター・ベルク(それぞれ20haと13haを所有)から、樹齢30~40年前後の古木の完熟した房を手作業で選別しながら収穫(セレクション)したことにちなむ“S“であるが、「『最上の』を意味するシュピッツェSpitze、スーパーSuper、メルセデスのSクラスとか。色々、とりようはあるわね」と、アンドレアのお姉さん。同じ“S“のリースリングもジルヴァーナーに勝るとも劣らない見事なものだったが、その半額近いノーマルのイプホーファー・カルプのシュペートレーゼ・ファインハーブ(8.80Euro)は、力強いミネラルにクリーミィなボディ、完熟したりんごのヒントがとても魅力的でコストパフォーマンスは高い。赤も数種類出ていたが、同じフランケンのルドルフ・フュルスト醸造所の赤を小柄にしたような印象を受けた。

リースリング2007jun16

キーボードの生演奏が静かに流れる試飲室を出て、麓に広がる葡萄畑の中に入ってみた。例年ならばちょうど今頃満開の葡萄はすでに結実を終え、今年の実となる小さな緑色の粒をつけていた。2003年以来前倒しを続けている収穫は、今年、102年の観測史上最も早い9月中旬開始となる見込みだという。どんなワインになるのか、まだ固い葡萄の粒に期待を込めつつ、ザール最北の葡萄畑を後にした。

シュロス・ザールシュタイン醸造所のHP: www.saarstein.de
ハンス・ヴィルシング醸造所のHP: www.wirsching.de






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Last updated  2007/06/18 06:57:33 AM
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Comments

李斯。@ お久しぶりです。 御無沙汰しております。 何時も拝見してい…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その64(04/05) 「ムスカテラー辛口」は私も買おうかと思…
mosel2002 @ Re[1]:ひさびさのドイツ・その54(03/14) pfaelzerweinさん >私の印象では2013年…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その54(03/14) 私の印象では2013年からは上の設備を上手…

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