備忘録その7 . ラインヘッセンの格付け
ファルツの醸造所を訪問した翌日は、マインツでラインヘッセンのグラン・クリュ試飲会だった。 VDP ではグラン・クリュのことをグローセ・ラーゲ Gro ße Lage 、そこからの辛口をグローセス・ゲヴェクス Großes Gewächs と称するが、ラインヘッセンでは VDP 以外の醸造所有志が、 VDP のガイドラインに沿って醸造したグラン・クリュの辛口をラーゲンヴァイン Lagenwein と称している。
ただ、ラーゲンヴァインはあくまでも個々の醸造所の自主的な取り組みで、特に審査などはしていない。
VDP
の場合はグローセ・ラーゲの認定は各生産地域の
VDP
が行うが、それ以外の醸造所は醸造所の自己判断に任されている。つまり、その醸造所がグラン・クリュにふさわしいと思えば、その畑がグラン・クリュになってしまうという、けっこうユルい基準なのだ。いかに品種をリースリングとシュペートブルグンダーに限定して、
VDP
のグローセ・ラーゲの基準、つまりヘクタールあたりの収穫量を
50hl/ha
以下に絞り込んで、手作業で収穫を行い、伝統的な製法で醸造(これ自体曖昧な規定なのだが)したとしても、その品質を客観的に保証するものがないのが現状だ。
というわけで、その日のライン川沿いの選帝侯の館のホールの試飲会に参加した
40
の醸造所のうち
15
が
VDP
加盟醸造所で、彼らのグローセ・ラーゲは畑と生産年の個性を明瞭に反映したものが多く、官能審査を経ているだけのことはあった。一方でその他の生産者のワインにはばらつきがあり、ヴェクスラー
Wechsler
、シェッツェル
Sch
ätzel
、サンダー
Sander
、クネーヴィッツ
Knewitz
、ドライスィヒアッカー
Dreissigacker
は
VDP
と十分互角に渡り合っていると感じたが、それ以外は(
40
醸造所のうち
3
軒は時間切れで試飲出来なかった)やや物足りないと感じることが多かった。
2014
は確かに夏場に雨が多く収穫期に気温が上がった難しい生産年だった。それにもかかわらず説得力のあるワインを出してきたところと、それが出来なかったところとあって、そのあたりに実力というか、気持ちの差というか、葡萄畑、あるいは栽培の違いが出ているような気がした。
ラインヘッセンではこの他にオルツヴァインという村名ワインの規格があって、これも
VDP
の規格に倣っている。この試飲会は毎年
4
月下旬にあるのだけれど、こちらの方がラーゲンヴァインよりも楽しいのはなぜだろう。以前、
VDP
ラインヘッセン代表のフィリップ・ヴィットマンは、ラインヘッセンでは他の産地よりもオルツヴァインの基準を高く設定して力を入れている、と言っていた。実際オルツヴァインは楽しめる。ラーゲンヴァインよりも安定していて、ラインヘッセンという産地のポテンシャルを感じることが出来る。
単一畑の方が必ずしも優れているとは限らず、複数の畑をブレンドした方が欠点を補ってよいワインが出来ることがある、と田中克幸氏がセミナーで指摘して、なるほど、と思ったことがある。ラインヘッセンにはそれがよくあてはまるのかもしれない。
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