Laub🍃

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2018.11.01
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冥府の管理人、ハーデス一族の末裔・ハルディスは記録書を繰る。

 そこには古の出来事と約束事が書かれているーーーーーー。

 ハルディスは眠るケルベロスを膝に抱えて頭を撫でながら、寝物語のように書を読み上げる。

~~~~~~~~~~~~~

 かつてー、

 地の国は金の国であった。
 火の国は風の国であった。
 木の国は獣の国であった。
 水の国は呼名もなかった。

 金の国と風の国はかつて覇権争いをしていた。
 今の地表面全て爛れ廃れている土の国と乾き罅割れ砂漠化した火の国からは到底想像しづらいその世界で彼らは、豊かで、そして驕っていて餓えていた。故に多くのものを喪った。

 金の国は禁を犯し今を費やした。
 風の国は封を犯し富を費やした。

 金の国の化学兵器は風の国を草木の育たぬ枯れた地にしたし、
 風の国の生物兵器は金の国を生物の棲めぬ毒の沼に変えた。

 そうして各々の兵器は互いの国の人々の命と姿さえも蝕んでいった。




 異形となる体を怖れた金の国は眠る者と獣の国に逃げる者に分かれた。
 異形なら生きやすいと風の国は変わる者と獣の国に逃げる者に分かれた。

 そうして未開の地であった獣の国は切り開かれた。

 獣の国では今も元金の国の住人と元風の国の住人と双方の血を継ぐ者と原住民とで溝がある。

 ここいらで「闇の大魔王」は倒される。
 現在「光の大魔王」と呼ばれる彼らは、この獣の国を切り開く先遣隊だった。

 そこで非科学的な呪いを受けた光の勇者は光の大魔王となって、闇の大魔王の配下-いや、盟友であった水の魔王により今も生命力だけを利用されている。

 ーさて、今度はこの水の魔王の生い立ちについて語ろう。

 水の魔王は元は水の国の一市民であった。

 水の国は元は名前のないただの「ゴミ捨て場」だった。
海流の関係で、世界からありとあらゆるものが流れ着くのだ。

 廃棄物。汚染物質。兵器。死体。傷付いた海の生物。----罪人。-----育てられなくなった赤子。

 世界から不要とされた者たちはそこで寄添い支え合った。
毒の雨の庇を作り、散らばる氷河の移動を予期する術、固める術、移動を利用する術を発展させていった。

 そして何世代か過ぎて、人々の中でも秩序や法整備がなされた頃、彼らは誰かに認められたいと思った。けれど同時にばれたくないとも思っていた。どうせ傷付けられるのだから。奪われるのだから。捨てられるのだから。

 けれど、獣の国から流れ着いたとある旅人はそんなそぶりをちらりとも見せなかったのだ。
 だから水の国の若者は旅人を帰してあげたいと考えたし、---実際、帰すことが出来た。

 なんでも流れ着く地だから、外には出ていけないと思っていた彼らの喜びようはすさまじかった。ー恐れもすさまじかった。何せ、今まであらゆる危険人物がここに辿り着いては出られない事に絶望して大人しくなったのだ。出られるとなったらどうなる?……

 -それでも、獣の国との交流は穏やかなものだった。なので、ずっとこのままでいたいと思いながら緩やかな交流をしていたのだーーー彼らが侵略するまでは。

 獣の国の住民は二手に分かれた。水の国に逃げ込む者と、獣の国に残って戦う者とに。

 しかし後者はみな滅ぼされるか支配されてしまった。


 ---そして現在、木の国と名を変えた彼らは新しい歴史を流布している。

「奴らは魔物だ、滅ぼしてしまえ」と。

 その標的は火の開き直った者であり、水の閉じこもる者であり、土の眠り続ける者たちであり、木の奥地に追いやられた者たちだ。
 繁殖力と洗脳能力が異様に優れている彼らはそれぞれの地の人々を「魔物」「魔王」と呼び、狩り、搾取することを正当化している。


 -私か?私は……金の国の門番。この地下洞窟には沢山の人々が眠っている。異形になることを怖れたゆえに眠る彼らに、いつか目覚める時が来たと告げる為に。そしてそれまでの眠りを守る為に、代々こうして静かに暮らしているのだ。

 この地で育てる食べ物は汚染されるから、鉱石を木の闇商人に売っては、代わりに食べ物を得ている。何を食べるかは秘密だ。

 ここはつまらない。退屈で仕方がない。蔵書も全て読んでしまった。手遊びも限界を迎えた。だから暇潰しの相手が居ないといけない。だから、食べ物の中に居たお前を生かしてるんだ、ケルベロス。---眠りから覚めたらまた付き合ってもらうぞ、長い長い遊びに。










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最終更新日  2021.05.07 01:21:05
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