Laub🍃

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2020.01.21
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捕獲したケルベロスの洗脳が完了した。

「さっさとしろよ」

 目の前のケルベロスの状態はこの間まで自分が受けていた拷問と大差ないもので、見ているだけで具合が悪くなってくる。

「もはや歩く拷問器具だよねぇアイツ」
「……うう……」

 ケルベロスの妊婦のように膨らんだ腹をブレス=イラクサは踏み潰す。もはや何度目だろうか。数えたくもないが10回はとうに超えているだろう。
 その瞬間の衝撃には目を剥くものの、その衝撃が落ち着きじんじんとした痛みが広がるばかりの間は、ケルベロスはブレスの髪と同じ真っ赤な靴をうっとりと見詰めている。

 最初のうちの洗脳前のケルベロスとは大違いだ。
 はじめは覚悟を決めたようにじっとしていて、やることが度を越してきたころには身を捩っていた。だがどんな猛犬でも狂犬でも、両腕両脚を切り離されていれば出来ることは噛みつくこと吼えることばかり。隙を見て何度も喉笛を食いちぎろうとしているのは私にはできないことだから美しくさえ見えた。

 そうしてこの獰猛な犬の命運を握っているのが私だということに圧倒的な快感を覚えたのだ。

 今、薬と魔法と呪いで多重に洗脳をかけられたケルベロスは笑みを浮かべてはいるものの、その顔と全身は脂汗にまみれていて、とても余裕があるようには見えない。

「オレ様たちにつくと言え」
「オマエ…」
「貴方様、だろうが」

 ブレスは非常に嬉しそうな顔でその美しい相貌を歪めて嗤う。

 ぐりぐりと踏み潰される下半身。ケルベロスは断続的に空気を漏らすように喉から短い悲鳴を上げながらも、それでも笑みを絶やさない。

「言え駄犬。お前を捨てたゴシュジンサマはどうやったら出てくる?」

 切り捨てられた忠犬。哀れで頼りない存在。だから、着くと思った。だけど。

「ア゛ッ……」

 瞬間、ケルベロスは眼球をぐるんと回して気絶した。

「……ったく、なんだってんだ」


 ケルベロスは起き上がらなかった。
 ずっとずっと、眠ったまま。仕方がないので栄養補給を担当させられた私は、ホルマリン漬けにした腕脚を眺める。

 腕と脚はとうに獣の姿になっている。
 ケルベロスの切断した四肢からは獣の首が生えてきている。何度切り落としても生えてくるものだから焼いてみたけれども、それでも生えてくるのだから毎日切り落とすことが私の仕事になっている。

「…そこまでして、帰りたいのかな」

 どこからも逃げ出して、どこにも帰れなくてここに辿り着いた私からしてみれば、やはりケルベロスのその一途な生き方は羨ましかった。





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最終更新日  2021.01.03 20:48:49
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