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今日は雨が降って、かなり寒く感じられました
こんな日は「猫の部屋」にいる仲間たちも、いっそう寒さで丸まっています。
『仲間たち全員に温かいお家があって、フカフカのお布団で眠れるといいのに…』
こんな日は、いつも同じことを考えています。
中之島公園の猫たちは、寒い冬も暑い夏もお外で暮らしてきました。
中にはホームレスさんのお家に入れてもらって、寒さや雨風から身を守ってきた仲間たちもいますが…
やはりほとんどの仲間たちは、木の下や植え込みの中、橋の下などで仲間同士で寄り添い、暖めあって生きてきました
公園で生まれ育った仲間たちも多く、”家”という概念を持っていない仲間たちもいます。
『お家って何だ』
『それって、いいものなの』
そんな仲間たちを見ていると…
思い切りお家の温かさを教えてあげたい
人から大切に可愛がられることの喜びを教えてあげたい
いつも秘書たちはそう思うのだそうです。
そんな仲間たちの中には、かつて”家”での暮らしを経験した子もいます。
それがどんな暮らしぶりであったのかは、わかりませんが…
少なくても、その経験をした仲間たちの記憶の片隅には”家”というものの思い出は残っているのだろうと思います。
おそらくコウイチ君も、そんな経験を持つ1匹だと思います
コウイチ君がやってきたのは、まだ少しだけ桜には早かった頃…
いちばん最後に捕獲された仲間でした。
お当番の朝
仕掛けておいた捕獲器に1匹の猫が入っているのを見つけた秘書たち
コウイチ君は、不安そうなお目々を秘書たちに向けていました
「シャム猫みたいだよね」
「うん、男の子なんだね」
3月中旬、猫たちの恋の季節まっただ中
コウイチ君もお腹を減らせて、ウロウロと工事エリア内を歩いていて…
仕掛けてあったちくわに目が眩み、捕獲器に入ったのでしょう
ジッと見つめていた秘書たち、見つめ返すコウイチ君
次の瞬間、捕獲器の中で金網にスリスリし出しました
「…えっこの子…」
「もしかして甘えてる」
そっと金網の中に指を入れた第一秘書
その指に、戸惑うことなくコウイチ君はスリスリしました
頭や背中を指で撫でていても、コウイチ君は怒ることなくジッとしていたそうです
そして第二秘書が指を入れると、何とコウイチ君はその指を甘噛みしたのだそうです
何度も何度も甘噛みを繰り返すコウイチ君…
「この子、もしかして…」
「…人と暮らしていたのかもしれない」
「コウイチ君、最初は甘噛みしてましたよね」
先日、Sさんと話していたところ、Sさんもそう言っておられました
「えっSさんも甘噛みされたんですか」
「ええ、来てすぐの頃は、ちょっと甘える様子を見せていたんです」
「やっぱりそうですよね
まだ捕獲器の中にいたコウイチを撫でたら、私たちにもスリスリして、甘噛みもしたんです」
「やっぱり、あの時のシャム猫だったのかも」
Sさんのお話は驚くべき内容でした
長年、中之島公園バラ園で猫たちを見守ってこられたSさん。
一人で仲間たちの手術を行い、毎日お世話を続けてこられました
まさにバラ園の仲間たちにとっては、お母さんのような存在です
ある日…
いつものように仲間たちのお世話をしておられたSさんは、1匹のシャム系の猫を抱いた女の人にあったそうです。
その女の人はキャリーも持たず、腕に猫を抱えてバラ園に佇んでいました。
少し様子がおかしかったので、気になったSさんはソッと見ていたのだそうです。
すると、その女の人は抱いていた猫を地面に下ろしました
放された猫は、Sさんが仲間たちにあげたご飯のところまでやって来たそうです
「それでその猫は、その後、どうしたんですか」
「ジジと悟空がご飯食べてたんですけど、ほら、あの子たちは他の猫が来ても怒ったりしないから…」
そのシャム系の猫はジジと悟空に混じって、一緒にご飯を食べ始めたそうです
その様子を見ながら、まだ女の人はぼんやりしたまま立ちつくしていました。
「ちょっとおかしいなって思ったので、その女の人に
”お散歩ですか”
って声をかけたんです」
Sさんに声をかけられて、その女の人は少し驚いたのか…
「…ええ、そうです」
そんなことをもごもごと答えながら、猫を抱き上げてそのまま立ち去ってしまいました
その後もSさんは何度か、女の人とシャム系の猫の”お散歩風景”を見かけたのだそうです。
「コウイチ君に初めて会った時、あの時の猫に似てるって思ったんです」
「…そう言えば猫たちの個体チェックをしている時、バラ園にはシャムちゃん以外にもシャム系の猫がいたって言ってた人いましたよね」
「ええ、あの時、私はもう1匹の猫はお散歩に来ている猫だって、その人には言ったんですけど…」
「もしかしたら…」
「ええ、知らない間に、あの女の人が置いていったのかもしれないです」
「…」
もう1匹シャム系の猫がいる
その話を秘書たちが聞いたのは、1月中旬
その時点で、少なくても中之島公園内で、人と一緒ではないシャム系の猫を見かけた人がいるということです。
そして捕獲が始まって、捕まったシャム系の猫は2匹、シャムちゃんとコウイチ君だけです。
「Sさんの話、悲しいけど、きっと当たってる」
「…うん、コウイチ可哀想に」
とても寒くて、大雪が降る日も多かった1月
コウイチ君はどんな気持ちで、公園内をウロウロしていたのでしょうか…。
その後、
1度きりのスリスリと甘噛みを最後に、コウイチ君は怖がって怒り出しました
ワンルームからの逃亡を繰り返し、誰も近寄れなくなってしまいました
ただ…
最近では少しずつ距離も近くなってきています
朝や夕方には扉の近くまでやってきて、ご飯を待つ姿も見られるようになりました
秘書たちはとても喜んでいます
でもまだ、こちらから近寄って行くと…
「ありゃりゃ、またコウイチは逃げるのか」
「うーん、もう少し時間が必要なんだね」
コウイチ君は、きっといろんな気持ちを抱えたまま「猫の部屋」にたどり着いたのでしょう
彼の心の傷を埋めるには、もう少し時間がかかると思います
ただコウイチ君がどんな悲しい過去を持っていたとしても…
これから大きな幸せがやってくれば、きっと悲しい記憶は消し去ることが出来るはずです
「1度だけだったけど、元々は、あのスリスリと甘噛みをする子なんだもん」
「人に甘えることの心地よさを取り戻せる日が来るよね」
今度こそ、温かくて優しい”家”の思い出を作ってあげられますように…
コウイチ君を見るたびに、秘書たちはそう願っているそうです![]()
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