日本語で話そう

April 18, 2015
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開発から取り残された有る山奥の村の村はずれに一本の大きなしだれ桜が咲いていた。
想像してみよう。

誰がこの桜を植えたのだろうか。樹齢からしてかなり年月が建っている。100年は優に超えているだろう。

この村の誰かが願いを込めてたった1本の桜の木を村人みなが見える丘の上に植えた。わたしを忘れないで。
そして、その誰かの想い人がその人が去った後の桜の木を大事に大事に育てたとする。
愛する人を遠くに想いながら。日照りの時は川から水を汲んでやり、風の強い時は使え棒をして、大切に大切に桜を守る。
人々はいつしかその人を桜守りと呼ぶようになり、桜守りは人がいないそよ風の吹く日には遠き去りにし人を偲んで守り人の歌を歌う。

長い年月がたち、桜守りは土に帰り、その想い人だった人も遠くの地で儚くなった。桜の事を思い出しながら。桜を守る人のことを思い出しながら。

今は誰も知らない。
桜守りの事も、その歌も。
だけど、桜だけはひっそりとその谷間の村に咲いている。
風の吹く日は、桜守りの歌を囁きながら。



IMG_4430
IMG_4430 posted by (C)灰色ウサギ


霧に曇る雨の日、妻籠から馬籠まで歩くというドイツ人のトムを山の家に行くついでに回り道して送って行った。その帰り、新しい桜を求めてふと伊那谷の名も知らぬ谷あいの村に迷い込んだ。
花桃が美しいまるで花に埋もれたような村だった。花桃が咲き乱れるまさしく桃源郷。
そこで1本の大きな桜の木を見つけたのである。

この頃、桜の写真を撮るとき、桜の懐には入らず、一歩引いてその木の根元や周りの風景まで入るような写真を撮ることにしている。そうすればきっとその木が他の桜と違ったストーリーを持って植えられただろうことが伝わるかと思って。

こんな村の中で・・・。

伊那谷2
伊那谷2 posted by (C)灰色ウサギ

伊那谷
伊那谷 posted by (C)灰色ウサギ






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Last updated  April 18, 2015 08:48:25 PM
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