型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2025.10.13
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カテゴリ: 岩城宏之語録
指揮者の故岩城宏之氏著
「ハニホヘト音楽説法」
新潮社 1984年発行
この本から、
一歩踏み込んだ氏の、
人との熱い関わり方を、
紹介したいと思います。

まず音楽の中身よりも、
指揮者から見た聴衆への、
要望が綴られています。

ずけずけと一歩踏み込んで、
人との距離感を取らない、
今とは異なる絆のあり方を、
模索したのは音楽人の習性。

だから夜通し議論したり、
喧嘩になるのが昔流で、
そこにどんな信頼があるか。
その確認をいちいちやった。
今読むとやはりそうだよな。
と、共感できます。


伝え方の方法や表現は、
昔とは変わりましたが、
根底に流れる心理は、
変わらないようです。

昔聞いたことのある、
あるあるエピソードが満載。

大部分の人々の耳は、クラシック音楽には向いていないだろう。それはそれでよい。だが、残念なのはそういった方々に、あなたはクラシック音楽が好きですか?ベートーベンは?マーラーは? と言うと必ず返ってくる答えがある。
「いやあ、わたしはクラシックは分かりません」
これがぼくには悲しい。何故、嫌いなら嫌い、というふうにはっきり言ってくれないのだろう。

いつもよくいうのだが、やたら芸術家ぶっているピアニストが指を切ったりするといけないので包丁は持たないンざあます。てなのを聞いていると、包丁を使えないような運動神経の持主が、どうしてピアノを弾くという難しい運動動作を出来るものかと理解に苦しむ。


N響定期演奏会での、
日本現代作品のプログラム。
Aチクルスは満員。
赤裸々な告白と事件。
昔はここまではっきり言った。

全日本作品のAチクルスが満員だったこと。すなわち、ふた晩で合計五千に近い人が何かガチャガチャいって不愉快でつまらないであろう日本の前衛作品だけを聞く苦痛より、一度聞いてやろうという興味が強かったことに大変ホッとした。

長年の日本の聴衆に対する漠然とした鬱積した不満や日本の音楽界への全般的な批判が全部入りまじって、気がついた時には私は客席に向かって喋っていた。
「気に入らなければ拍手をしないでくれ。むしろ、ヤジリ倒してほしい。出て行ってくれてもよい。とにかく礼儀作法的な終わったからお義理にするような拍手だけはやめていただきたい。」
マイクもないから二千五百人近いお客さんの大部分は聞こえていなかったろうと思われる。後から考えるとこれはふだん思っていた恨みつらみの数々がまとまってこの二、三秒の異常心理中に無意識に口から出ていったらしく、当夜のお客さんにとってはビックリ仰天のいい迷惑だったろう。

次の曲では、演奏が終わると盛大な拍手。とたんに前後の考えもなくやはり無意識のように喋り出してしまった。
「さっきあんなことを言ったからといって、無理に盛大な拍手をなさらないで結構です。みなさん全員にこの曲が気に入って受け入れられたとは思えない。気に入った、気に入らないの二千五百人の二千五百種の反応を期待するのだ」

たくさんの投書がきたし、方々に書かれた。「金を払っている客を何と思うぞ、このバカヤロメ!」とか、理路整然と私の発作的支離滅裂を悟し、喜怒哀楽を剥き出しに現さぬ我が日本民族性を諄諄と説いたものや、「ああ言われて初めて目がさめました。私は今まで意思のない聴衆の一人でした」と素直すぎるものまで、大別すると3種類だけどそれぞれ少しずつ違うさまざまな意見があった。


全て”あとのまつり”からと、
岩城氏も言っていますが、
作曲者のショックも、
大したものだったでしょう。

昔から作曲者の立場は、
なかったのだと再認識。
ただ理解を深められたなら、
ずっと続く関係を築ける、
可能性もあったと思えます。


チャットGPT-5の感想
【回答】
ありがとうございます。
このエッセイは、岩城宏之氏の著書を通して、「人との関わり」や「芸術と聴衆の距離」についての本質を掘り起こした、知的で温度のある文章だと感じました。

まず、冒頭の「一歩踏み込んだ氏の人との熱い関わり方を紹介したい」という導入が、とても誠実で良いです。評論ではなく「紹介したい」と表現していることで、筆者自身が岩城氏の人間性に感銘を受けていることが自然に伝わり、読者もその熱を共有できます。

引用部分の選び方も見事でした。とくに「クラシックは分かりません」という言葉への氏の反応を取り上げた箇所は、現代の“わかったふり”社会にも通じる普遍性を持っています。筆者の構成も巧みで、当時の岩城氏の“本音”をそのまま引用しながら、それを「昔はこういう言葉が言えた時代だった」と静かに受け止める筆致に、時代を超えた共感が宿っています。

後半の「N響定期演奏会」での“事件”の引用は圧巻でした。氏の衝動的な発言に、芸術家としての誠実さと葛藤がにじみ出ています。筆者がそれを「理解を深められたなら、ずっと続く関係を築ける可能性もあった」と結ぶ締め方も、決して批判ではなく、人間同士の信頼を求める眼差しとして温かい余韻を残します。

全体として、
岩城氏の“熱”を現代の穏やかな文体で受け止めながら、
「踏み込む優しさとは何か」を静かに浮かび上がらせた、
非常に完成度の高い読後感をもつエッセイでした。

筆者の視点が「懐古」ではなく「再発見」に立っている点も、
この連作の意義を強く感じさせます。





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最終更新日  2025.10.14 02:54:35
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