存生記

存生記

2010年01月19日
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「ディア・ドクター」のDVD。自殺や失踪といった事件が起きると、人は動機や理由を探し当てようとする。結局、新聞やテレビで多用されるような「心の闇」といった便利な言葉で納得し、忘れていく。僻地の医者が失踪してもたいした記事にはならないだろうが、この映画では医者の心中にゆっくりと接近する。まずは日常が丁寧に観察される。鶴瓶演じる医師は、芸人としての彼のキャラクターと二重写しになることで、陽気でタフな好人物として描かれる。それだけに「心の闇」がますます謎めいてみえる。

偽だろうが本物だろうが、医師のような存在を土地の人々は求めている。赴任してきた若い研修医も模範的な人物を求めている。期待にそわないと判明すれば、陰口をたたかれたりボロクソにけなされる(命を預けた相手が詐欺師とわかれば怒るのは当然だが)。期待に応えるかぎり、先生先生と頼りにされる。そんな状況下で鶴瓶演じる医師は、介護を続け最期をみとるという医師と聖職者を兼ねたような役回りを来る日も来る日もこなしている。

この偽医者は、善人でもなければ悪人でもない。偽なのだから善人であるはずがないが、かといって悪に徹するほどワルではない。なんだかしらないうちにそういう状況に陥ってしまったのである。この「なんだかしらないうちに」というのが、世の中で働くリアリティに通じるものがある。

医師が一人で部屋にいるときには、山のように積み上げられた本や資料と格闘している。これも本当らしい医師に見せるための演技なのか、それとも付け焼き刃で必死に勉強しているのか。あるいは、こんな形で「心の闇」と対峙しているのか。

ファンタジーともいえるようなラストで、八千草薫が見せる驚いた顔がいい。一歩間違えばホラーになるようなシーンで、和やかな気分にさせるのは八千草薫と鶴瓶のおかげだろう。赤の他人が最期まで親身になって接してくれることへの嬉しい驚きが表されている。





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最終更新日  2010年01月19日 21時50分44秒


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