家曜日~うちようび~

家曜日~うちようび~

2017.10.14
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クマンバチは、ずっと長い間「航空力学上、飛べるはずのない形なのに、飛んでいる」とされ、その飛行方法は大きな謎とされてきたらしい。
しかし現在では、レイノルズ数を計算に入れることにより、飛行法は理論的に証明されているんだって。へ~、よう解らんけど、そうなんだ。
んで、かつては「飛べないはずなのに、飛んでいる理由」として、
という説が大真面目に論じられたりしていて、
「不可能を可能にする象徴」として時に会社やスポーツチームのシンボルとして扱われたりしたんだって。へー。面白れー。


我が家の、玄関先のシューズクロークです。
扉を開けると、


あらっ!扉の裏に傘が収納してある!
妻のアイデアで、リクシルのタオルバーを、傘掛けとして利用しています。
妻は玄関先に市販の傘立てがあるのが邪魔臭いらしく、見た目にも嫌みたいです。


雨の日だけ、この傘立てを表に出して、濡れた傘をここに指します。
ソイルというメーカーのアンブレラスタンド。
珪藻土(けいそうど)という、不要な水分を吸い取り、自然に乾燥する岩石で出来ています。

え~と、そいじゃ今回は、傘にまつわる、僕のどうしようもない思い出話をひとつ。
レイノルズ数なんていう、まったく面白味のない数式に当てはめられてしまう前のクマンバチのように、
実は僕も、その昔、 飛べると信じて、空を飛んでみたことがあります。
まぁ。正確に申しますと、背中に傘をくくりつけた救いようのない馬鹿な子供が、
貧乏長屋の屋根の上から飛び降りて、足首を捻挫したって話なんすけどね。とほほ。

僕がまだ小学一年生の時、母と姉が何かの用事で外出していて、二つ年下の妹と二人っきりの休日のこと、
どういった経緯でそうなったかは全然思い出せませんが、何故かその日僕は、
「そうだ!空を飛んでアメリカへ行こう!」 と思ったんですね。
うーん、残念。非常に残念な小学一年生。
んで、思い立ったら吉日ってんで、さっそく大空に羽ばたく準備にととりかかりました。
僕の航空計画は下記の通り。

①背中に子供用の傘を浴衣の帯でしばりつけ、向かい風を受ける。

②ウチワを両手に持って、ばたばたと鳥の翼のようにあおぐ。

③離陸ポイントは、万が一の場合も死ぬ高さではない、一階の屋根の上を選ぶ。

④離陸の時、二階の窓から妹にもウチワであおがせ、追い風に乗る。

⑤飛びたった後、飛行中に目にゴミが入いらないように、海水浴の水中メガネをつける。

⑥飛行中にお腹が空いたら海の魚を取って食べる。海水は飲めないので水筒を首からぶら下げる。

⑦着陸の時、足の裏が痛くないように、ゴム長靴を履き、古新聞を何重にも折りたたんで中敷きとする。

⑧アメリカに着いたら、協力者である妹へのお土産に、マクドナルドのハンバーガーを買う。

今思えば、闇雲に屋根から飛び降りようとした訳ではなく、
一応は自分なりの理論に基づいて行動はしていたみたい、内容は支離滅裂だけど。

さて、異様な出で立ちで、貧乏長屋のボロボロの瓦屋根の際に立ち、いざ、離陸の時。
恐怖心を紛らわせる為、「兄ちゃん、いち、にーの、さん!で飛ぶからね」とか、「兄ちゃん、二、三日で帰るからね。」とか、
いちいち後ろを振り返り、二階の窓でウチワをもってスタンバイしている妹に話しかける。

意を決し、いざ!離陸!
いち、にーの、さん!
で、あれ?着地?
離陸、直下、着地、同時って感じ。
失敗だ!飛んでない!
すぐに二階に駆け上がり、妹にウチワのあおぎ方を注意する。
ちゃんとあおいだか?上向きに速くあおいだか?兄ちゃん、飛ばなかったじゃないか!
失敗の原因を妹のせいにする、ダメな兄。

気を取り直し、二度目の離陸!
二度目なので、もう恐怖心はない!
飛べ!飛べると信じていれば飛べるのだ!
いち、にーの、さん!
「兄ちゃん飛んだ!」
後方から妹の叫び声。
そう、今度は確かに飛んだ!
1メートルぐらい上空に舞い上がった!
・・・ような気がした。
で、離陸、直下、着地、同時。
着地の際、右足首をグニった。
激痛。悶絶。

しばらくして帰ってきた母に病院に連れて行ってもらう。
捻挫した。
捻挫で済んでよかったぞと医者に叱られた。
母の自転車の後ろに乗り、車輪に巻き込まれないよう、
包帯でグルグル巻きになった足を八の字に広げて帰る。
僕は思った。足が治ったらまたやろう。次は必ず成功する!そうだ!次は傘を大人用の傘に変えよう!
それから指の間に上手に挟めば、ウチワだって片手に三つは持てるはず!飛べる!次は必ず!
母の背中にしがみつきながら、僕はすでに成功した気分になって込上げる笑みを、まだ気が早いと噛み殺した。
半袖ではやや寒い、でも長袖ではやや熱い、そんな秋の始まりの風が吹いていた。
目を閉じれば、まぶたの裏に、背中に傘をくくりつけ、両手にウチワを持って、
大空を自由に飛んでいる自分の姿が、アリアリと映し出された。

海を越え!山を越え!

アメリカ大陸!

アフリカ大陸!

世界の果てはどこにある!

飛べる!

どこまでも!

飛べる!

今でも!




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最終更新日  2018.12.07 20:07:35
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