家曜日~うちようび~

家曜日~うちようび~

2020.09.09
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心が折れた。

という表現が出てきたのは、いつ頃からだろう?

少なくとも、僕が若い時はあまり耳慣れない言葉だった。
「傷付いた」とはちょっとニュアンスが違うのよね。
「意欲を失った」「やる気が失せた」という意味合いだと、僕は解釈している。
張りつめたつっかえ棒が、バキッとへし折れ修復不可能になった心情を、的確に言い表す絶妙な言葉だ。
誰もが事あらば思わず使ってみたくなる魅惑の言葉だ。

特に若い社員は頻繁に使うよね。きっと、嘘ではないのだ。現に彼らの心は、ポキポキと簡単に折れる。

私、とても傷付きました。

という発言のなかには、どこかしら、擦り、磨けば、まだ修復が可能なニュアンスに対し、

私、心が折れました。

と堂々と言われちゃうと、もう完全に手の施しようが無い印象を受けるのよね。
まあ、ポキッと折れるのは勝手なのだが、その後自ら迅速に心の修復にかかれない。
折れたら折れたまんま、修復する術を知らない。
結果、そっこーで諦める、楽勝で挫折する、いわゆる環境を変えてイチから出直すパターンを求む。

可哀そうに。困難や挫折に免疫がない。
大人に叱られ慣れていないのだ。まるで怒鳴られ慣れていない。
これを、褒めて伸ばす教育の弊害と言わずして、何ちゅーの?

あ、ちなみに、意外や意外、僕の両親は今の時代を先取りしていたのか、
あまり子供を叱らない親だったっす。
どちらかというと、時々思いついたように、無駄に僕たち子供を褒める親だった。
姉と妹は、どう考えているか分からないが、僕にとってはそういう人たちだった。
母は、自分が生んだ子供に関心があるの無いのかよく分らない、
はっきり言ってネグレクトぎりぎりの人だったし。
父は、よく子供たちに暴力をふるい、姉などは灰皿で頭を割られたこともあったが、
あれは、ただギャーギャー騒いでいるダメ人間の酒乱であって、
そこにモラルやパワーやハラスメント性は、微塵も見当たらなかった。

でも僕は、今じゃ同世代のまわりの誰よりも、折れない心を待っている。
また、仮にいかなる困難や挫折にぶち当たり、心がへし折れても、
その瞬間から、折れた心の再生を図り、さっさと次の策を講じる習性を身に着けている。

それは、何故か?

今の若者たちと違い、僕がクソガキだったあの頃は、
幸いにして、まだまわりの大人たちが、本気でよその子供を叱ってくれていたからだ。
警察、教師、塾の講師、教習所の講師、ご近所のおっさん、通りすがりのおばさん。
みんな、今では考えられない威圧感と問答無用の恐怖の理論をもって、
どいつも、こいつも、いつも、何度でも、この僕の目の前に立ちはだかった。
どいつも、こいつも、いつも、何度でも、バッキバキに僕の心をへし折り続けた。
どれだけ心をへし折られ続けた青春だと思っとんじゃい。
こちとら折られた心の再生法なんてなあ、十代でとっくに熟知しとりますわ。
チョチョイノチョイで修復完了ですわ、匠の技ですわ。

不幸にも、僕の親は、ちゃんと子供を叱ってくれる親ではなかったが、

幸いにして、まわりの大人たちが、全力で僕を叱り飛ばし続けてくれた。

あの大人たちを、認めたくない。

あの屈辱の日々、今でも思い出すたび腹ワタが煮えくり返る。

んが、いい加減に認めるところは認めよう。

あの頃、僕の心をバッキバキに折ってくれた、全ての大人に感謝します。

だって、僕のこの心の強さは、あの大人たちの傑作だから。


今の若者はどうだろう? 僕らの子供たちは?

学校の先生も、気の毒なほど本気で生徒を叱れない。
塾の講師だって人気商売だ、嫌われる覚悟では叱れない。
近所のおっさんも、通りすがりのおばさんも、若者の悪行に見て見ぬふり。
会社で上司が若手を叱れば、なんたらハラだ、かんたらハラだ、と訴えられてしまう。

もう、いよいよ、親だけだ。

子供を、本気で、

相手のことを思い、嫌われる覚悟で叱れるのは、

親だけ。

なんか、かわいそうになってきた。

これからの時代、親が子供を叱らなかったら、

いったい、誰が子供を叱ってくれるのだろう?

親すら、子供を褒め続けたら、

子供は、いつどこで、困難や挫折でへし折れた心を、修復し再生する術を学ぶのだろう?


我が家では、二階の書斎でこの日記を書いている今も、

頼もしき妻が一階で子供らを怒鳴り散らかす声が絶えないわけであるが、

実際のところ、子供が可愛くて可愛くて、ちっとも叱れない情けない僕は、

お~い、ほどほどにしとけよ~。あんまギャーギャー叱ったんなよ~。

と助け船を出したい気持ちをググっと抑えて、

けっこー真剣に、そんな風に考えているわけである。




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最終更新日  2020.10.04 20:56:15
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