昔からよく見る悪夢がある。
夢の中で僕は、右手に鉛筆を持ち、
目の前の紙を見て頭を抱えている。
紙に書かれているのは、算数の問題。
3-5=
額から止めどなく流れ出る。
僕は成す術もなく、計算式を睨み据えている。
小学生の頃から、算数が大の苦手だった。
ちなみに、国語と図工は勉強をしなくても出来た。
算数の中でも「文章問題」や「証明」と言われるジャンルは、比較的出来た記憶があるが、
こと単純な計算問題がまるで駄目だった。
考えているうちに、何が何だか訳が分からなくなってしまうのだ。
計算問題の中でも、特に答えがマイナスになる問題が苦手だった。
何故って?
自慢じゃないが、さっぱり意味が理解出来なかったからだ。
今だに、よく意味が分かっていない。
例えば、さっきの、
3-5=
この問題の答えは「-2」。
学校の先生が、これが正解だっつーんだから、正解なのでしょう。
んが、しかし、僕の感覚的には、答えは「0」なの。
3から5ひいたら、視覚的には、物理的には、もう何もない。
ゼロ!
無!
むっ!
リンゴに置き換えて考えてみよう。
え~、リンゴが3個ありましたあ。
3個のリンゴのうちから、5個のリンゴを食べましたあ。
うおおおおお! もう訳が分かんねー!
リンゴ3個なんだから、黙って3個喰いさらせ!
なーんで5個喰うかね! いちいち奇妙奇天烈な喰い方すんな!
え~、こうして、リンゴはマイナス2個になりました。
わーーーい! 迷宮入りだーい!
何?
リンゴがマイナス2個ってどーいうこと???
見せてよ!
その世にも不思議なマイナスのリンゴってやつを僕に見せてちょうだいよ!
3から5引いたらひいたら、何も残らねーんじゃねーのかよ!
ゼロでしょ!
無!
むっ!
気温の、「ー2℃」っちゅーのも、さっぱり分からん。
0℃の向こう側に、気温が「存在する」ってのが理解出来ん。
0℃っちゅーのは、温度が無いってことじゃねーの?
んーだったら、0℃も、マイナス2℃も、マイナス100℃も、ゼロでいーじゃーねーか!
ゼロ!
無!
むっ!
昔からよく見る悪夢がある。
3-5=
額から止めどなく流れ出る。
こ、答えが分からない。
か、か、書けねー。
く、く、く、苦しー。
い、い、い、い、息が出来ねー。
ぬわああ!
そして、いつも汗だくになって目が覚めるのである。
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