2013/03/15
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【おうみ狂言図鑑2013】

  2013年3月10日(日)  午後2時開演   てんびんの里文化センター(滋賀県東近江市)

  ◆古典狂言 「蝸牛」  山伏:茂山あきら  主人:島田洋海  太郎冠者:丸山やすし

  ◆古典狂言 「水掛聟」  聟:茂山茂  舅:茂山千五郎  女:増田浩紀

  ◆新作狂言 「続・鮒ずしの憂うつ-でっち羊羹の逆襲」
          鮒ずし:茂山正邦  でっち羊羹:茂山茂  赤こんにゃく:茂山童司
          でっち羊羹の母:茂山あきら



新作狂言の「続・鮒ずしの憂うつ」は2年前に上演された「鮒ずしの憂うつ」の続編です。
2年前の曲も鑑賞したのですが、と~~っても面白くて未だに印象に残っています。
鮒ずしってご存知かしら。滋賀の名産の一つで、琵琶湖に生息する「ニゴロブナ」をご飯と塩とで漬け込んだ発酵食なんですけどね。
まぁ、これがと~~~っても匂うんですわ。 いや、文字的にはこっちの「臭う」が正解ですな。
発酵さすということは、言い換えれば「腐らす」ということでしてね。
名産だからと、他地域の親戚にでも贈ったくらいなら「腐ったもん、送りやがってーー!」と、激怒されるという話もあるくらいでして。
関東でいえば、「くさや」と同系列の食べ物なんです。
湖国人でも苦手な人がいるくらいですけど、私は小さいときから食卓に出ていたもんですから、「臭い」と思った事もないし、「こんな美味しいもんないわ~」と思っているくらいです。
特に一緒に漬けこんで発酵したご飯も好きでしてね。鮒ずし好きでもご飯は食べないって人もいますが、私は食べるんです。まぁ、これで私が呑兵衛だという事が知れてしまうわけですけども(笑)

その湖国の名産である「鮒ずし」を主人公にした2年前の新作狂言のストーリーは、 近江の名産であるにも関わらず、臭いという理由で「近江牛」にバカにされ、何かと面倒を見ていた「でっち羊羹」も最近は「近江牛」の味方になって、憂うつな日々を送っていた。そこへ、関東地方から「ひきわり納豆」と「くさや」が臭いもん仲間として会いに来てくれます。そして、悩みを聞いてもらっている内に自信を取り戻した「鮒ずし」は、「近江牛」と「でっち羊羹」を負かして、堂々と近江の名産品として君臨するのでした。
と、まぁこういうものでした。
近江牛たちから消臭剤を貼られたりして、とっても楽しい曲だった。

その続編ということで、どんな風に話が展開していくのか、ワクワク度がハンパなかったです♪
では、他の古典狂言と共に、あらすじと感想をUPしますね☆彡


◆蝸 牛
 <あらすじ>太郎冠者は主人の言いつけで長寿の薬になるという蝸牛(かたつむり)を探しに山へ出かけます。そこで修行の帰りに竹やぶで休んでいた山伏に出くわします。蝸牛を見た事がない太郎冠者は主人から聞いた「頭が黒く、腰に貝をつけて時々、角を出し、やぶにいる」という特徴から山伏を蝸牛だと勘違いし、屋敷へ連れて帰ろうとします。山伏は蝸牛のふりをしてさんざん太郎冠者をからかい、「でんでんむしむし」と二人で舞っていると業を煮やした主人が登場、浮かれる太郎冠者を「それは山伏だ」と叱りつけますが・・・


<感想>
定番ちゃあー定番ですな。展開はわかっているのに、何度みても自然と笑えてしまいます。
狂言の山伏って上手に術が使えない人が多いですけど、蝸牛に出てくる山伏さんは主人にも「浮かれ」術をかけて、浮かれさすのですから、山伏としては充分力を持ってるね~。
太郎冠者を演じる丸山さんがまた人の好さそうな見た目でして、本当に掛け値なしで面白かったです。




◆「水掛聟」
 <あらすじ>聟が田の見回りにやってくると、隣の舅の田に水を取られていました。そこで、畦(あぜ)をきって水を自分の田に引きます。同じように見回りにきた舅は自分の田に水がないのに気づき、聟の田から水を引き戻して、水を取られないように見張っていると、再び聟が現れて水を引こうとするので、口論になります。二人は水を掛け合い、泥を顔になすりつけあい、しまいには取っ組み合いの大げんか。騒ぎを聞いて駆け付けたのは聟の妻。さて、父親と夫、どちらの味方をするのでしょうか?


<感想>この曲を見るのは2回目です。前も茂山家でしたが、聟と舅の争いって、着眼点が面白いですね。
現代じゃ、どちらかというと嫁と姑のいがみ合いの方がメジャーですけども(笑)
聟の妻、つまりは舅の娘ですが、最初は「聟の足を取れーー」と舅に言われて、自分の夫の足にしがみつきますが、夫に怒られて、今度は父親の足を掴んで夫の味方に付きます。そして、舅一人残して二人で帰っていくんですよ。
「お前ら、親をないがしろにしやがってーー!」と舅は怒るんだけど、「まぁ、ええわ」で終わる所がいいんだな。
最初に水を横取りしたのは舅の方ですからね。因果応報とも思うし、年寄が負けてやるという懐の深さも垣間見えるという解釈もありかな、と思います。
千五郎さんと茂さんの親子対決は所作がリンクしていて、DNAを強く感じました♪



◆「続・鮒ずしの憂うつ-でっち羊羹の逆襲」

 <あらすじ>今や名実ともに近江の名産となった鮒ずしは、得意の絶頂にあったが、いやなニオイゆえに女にもてないとの「憂うつ」があった。そのため、近江の食文化の人気を二分する「近江牛」が女性にモテモテと聞き、地団太を踏んでうらやましがる。そこで近江の食材として後輩にあたるでっち羊羹を呼び出して、女にもてる妙案を練ろうと考えるが。。


<感想>鮒ずしが女にモテたいと思っている。笑えるね~、それだけで。
このニオイは自分の「あいでんてぃてぃー」と言う所がまた面白し。悩んだ末に「でっち羊羹」を呼びだすのですが、でっち羊羹の返事の仕方が「へ~~~い」という、間の抜けた返事の仕方でしてね。茂さんの甲高い声がそれに似合うんですわ。
鮒ずしは近江の名産に君臨したので、でっち羊羹には偉そうに物言いするんですよ。面白くないでっち羊羹はもてる秘策と称して、「赤こんにゃく」と共謀して「鮒ずし」を罠にかけます。
「赤こんにゃく」かこれまた、やさぐれ感がアリアリで、悪いヤツだったわぁ。
でっち羊羹が考えたシナリオは「鮒ずしさんが好きだという女性がいるので、逢いに行きましょう~、とっても別嬪さんなんですよ。うまくいけば、夫婦になれるかも~」というもの。
ですが、実際のところ、その相手は「でっち羊羹の母」
母親には「近江牛」が会いにくるよ~。近江牛さんは恥ずかしがり屋なので、被きを被って顔を隠しててね。と言います。
そして、ウキウキとやって来た鮒ずしが対面して、どうしても被きを取って顔を見せて欲しいと頼むのですが、でっち羊羹が止めに入って見せてくれません。
母親の方も、近江牛さんならさぞかし良い香りがするだろうと、被きを取りかけるのですが、ムッサ臭いニオイにゲホゲホ蒸せながらも、赤こんにゃくにうまいこと言いくるめられて、相手が近江牛だとまだ思い込んでいます。
そして、最後には業を煮やした鮒ずしが無理やり被きを取ると、そこには老婆がいて、老婆もまた、「やや!そなたは鮒ずしではないか。わらわは近江牛だと思うておったに」と罵倒します。
でっち羊羹と赤こんにゃくは、してやったりと鮒ずしを笑いものにして終わりました。

でっち羊羹が鮒ずしをいたぶりたいと画策したのですが、何もお母さんを騙さなくてもね~。
そこが狂言らしいっちゃーそうなんだけども。
茂山家ならではのアドリブも入り、見所は笑いのシャワーが降り注いてました。登場人物(人物なのか?)が、馴染み深い「鮒ずし」や「でっち羊羹」、「赤こんにゃく」だから、親近感がわきますしね。

一緒に行った娘も「すごく面白かった!」と絶賛していました。
でもね、私はちょっと期待しすぎてたのか、尻すぼみ的な印象受けました。
出だしはとっても面白かったんですけどね。段々、中だるみっていうか、テンポ悪いというか。。
なんだろな、演者の違いかな。前作の鮒ずし役はもっぴー(茂山宗彦さん)だったんですよ。彼の持つ独特の間と見所との感覚が絶妙~で、終始お腹が痛くなるほど笑ってたし、中だるみだなんて考える事もなかったのにな。
今回の鮒ずし役は正邦さんだけど、それが合ってないって事でもないと思う。じゃ、なんだろ。
内容がベタ過ぎたか、前作の方が面白かったな、と思いました。(偉そうにスミマセン)
でも、他のお客さんは終始、満面の笑みでいらっしゃったので、またドンドン続編を作っていただいて、また湖国で上演していただきたいです。






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最終更新日  2013/03/16 12:20:00 AM
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