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2024.05.18
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カテゴリ: 書籍
逃亡テレメトリー

逃亡テレメトリー

 弊機「人間はいつも幸運を祈りますが、運などクソです」
著者・編者 マーサ・ウェルズ=著
出版情報 東京創元社
出版年月 2022年4月発行

逃亡テレメトリー
かつて大量殺人を犯したとされた人型警備ユニット= 殺人  ( マーダー )  ボットの〈弊機〉は、インダー上級警備局員とプリザベーション連合の指導者メンサーが見守る中、プリザベーション・ステーションのモールで検死を行っていた。〈弊機〉の警備コンサルタントとしての初仕事で、ステーション警備局よりも詳細な情報を引き出すことができたが、にもかかわらず、遺体の身元はわからなかった。〈弊機〉は、メンサー博士を付け狙うグレイクリス社の仕業ではないかと疑っていた。
〈弊機〉がプリザベーションに滞在する条件として、非公開システムにアクセスしないこと、身元情報を隠さないということを約束させられていた。しかし〈弊機〉は本名を明かそうとしない。〈弊機〉の権利を護る弁護士ピン・リーが言うように「 殺人  ( マーダー )  ボット」を名前にしたら大騒動になることから、「警備ユニット」で妥協することになった。
〈弊機〉の当面の仕事は、メンサー博士に近づくグレイクリス社の暗殺者を警戒すること、プリザベーション連合から弊機を追い出そうとする警備局の野望をくじくこと、バーラドワジ博士が構成機体のドキュメンタリーを制作するための下調べに協力することだった。
〈弊機〉は、滞在条件を守りつつ死体の身元を確かめようと行動に出る。そして、被害者が宇宙港に係留されている貨物船に乗ったことを突き止めた。〈弊機〉は、以前、研究調査隊で行動を共にしたラッティとグラシンを呼び出し、船内に入ってみると、床に血痕が広がっており、警備局を呼んだ。
駆けつけたインダー上級警備局員やアイレン警備局特別捜査部員は、〈弊機〉の行動をいぶかしんで、尋問のように質問を続け、被害者がルトランという名前で、この船に次に積む予定の貨物を運んできた宇宙船がラロウ号であることがわかった。警備局員たちは〈弊機〉を伴いラロウ号に乗り込み、事情聴取を始める。そして、これら貨物船の意外な仕事が明るみに出る。
〈弊機〉は警備局と協力し、囚われている難民の救出におもむく。港湾管理局に内通者がいる疑いが出てきたが、ルトランを殺害した真犯人は‥‥。
事件が解決し、インダー上級警備局員は〈弊機〉に「おまえへの通貨カードの支払いを承認した。次にまた難事件が起きたら、あらためて契約してもらえるだろうな」と告げた。〈弊機〉は「よほどの難事件にかぎります」と応じる。

ホーム――それは居住施設、有効範囲、生態的地位、あるいは陣地
プリザベーション連合の指導者アイーダ・メンサーは、前任者のイフレイム議員と〈弊機〉の扱いを協議していた。プリザベーションは企業リムからの難民を受け入れてきた。〈弊機〉も同じように扱うことはできないだろうか――それがメンサーの願いだった。それでもイフレイムは言う。「あの警備ユニットを製造目的から切り離せるのか?」と。
構成機体のドキュメンタリーを制作しようとしているバーラドワジは、「警備ユニットがきわめて危険になりえる事実は無視できませんよ。そこをきれいごとでごまかしたら、この議論はこっけいなものになる」と言った。
アイーダはステーションにあるホテルのスイートで、コロニー惑星から帰還した調査隊の話を聞いた。バーラドワジはアイーダにマケバ中央病院のトラウマ治療科を受診するよう勧めるが、彼女は「その話はまた今度ね」と軽くさえぎち、シロップを取りにスイートから出てロビーへ向かった。
途中、見知らぬ男が「メンサー博士ですね」と声をかけてきた。アイーダがパニックを起こすより早く、〈弊機〉が彼女と男の間に割って入り、「ステーション警備局が47秒後に到着します」と告げた。男は警備局員に連行された。
〈弊機〉はアイーダに「必要なら抱きついてもかまいませんよ」と言うが、アイーダは〈弊機〉が頼られることを嫌っていることに思いを巡らし、逆に、「要望書をずいぶんたくさん送ってくれたけど、あのなかで本当にほしいものはある?」と聞いた。〈弊機〉は偵察用の小型ドローンが必要だが、「それは賄賂ですか?」と言ってきた。アイーダは苦笑した。

本書には、長編『逃亡テレメトリー』と、〈弊機〉がメンサーと出会う前を描いた短編『義務』、メンサー視点で描かれた短編『ホーム――それは居住施設、有効範囲、生態的地位、あるいは陣地』の3本が収載されている。
対人恐怖症で皮肉屋で、仕事の合間にダウンロードしたドラマを見て過ごす警備ユニット(アンドロイド)〈 弊機 〉は、今回、シャーロック・ホームズのような頭脳のキレを見せる。「弊機は頭の一部に人間の神経組織がはいっているせいで知能が低いのかもしれません」と皮肉と飛ばす。
今回、利益至上主義で、労働者を奴隷のようにこき使う超格差社会の 企業リム に対峙する ブリザベーション が、難民を受け入れることで成長してきたということが明らかになる。前作『 ネットワーク・エフェクト 』もそうだったが、 企業リム が会社社会であるなら、 ブリザベーション は、私たちが自宅警備するコミュニティということを暗喩しているように感じる。
予告通り、アップルTV+でドラマ『 Murderbot 』の放映がはじまった。2024年4月現在、英語版のみ。






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最終更新日  2024.05.18 13:00:02
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