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2013/07/17
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カテゴリ: カクテルブック
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 前回に続き、 ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の「Harry's ABC Of Mixing Cocktails」 の“初版本”(1919年刊)に収録されたカクテルのうち、著名なものについて個別・具体的な考察を続けます。

2.アレクザンダー(Alexander)

 アレクザンダーと言えば、クラシック・カクテルの代表的存在です。 現代の標準的なレシピは、ブランデー2分の1、クレーム・ド・カカオ4分の1、生クリーム4分の1、ナツメグ・パウダー (シェイク)というところでしょうか。

 僕の持っている本では、「Harry’s ABC Of Mixing Cocktail」に登場するのが一番古いのですが、誕生はもう少しさかのぼり、1900年頃と言われています。石垣憲一氏の著書「カクテル ホントのうんちく話」によれば、 「1901年のエドワード7世の即位式か、1902年のアレクサンドラ王妃の戴冠式の際に献上された」 というのが、現時点では最も信憑性があるとのことです。

 かつては、1863年、英皇太子エドワード=後の国王エドワード7世=とデンマークのアレクサンドラ王女の結婚式に捧げられたという説が有名でした。国内外のカクテルブックでもこの説を採用しているところが少なくありません。しかし、近年の研究で、1860年代当時は生クリームやクレーム・ド・カカオはカクテルの一般的な素材でなかったことから、この説には疑問が多いとされています。s-Alexander.jpg

 さて、 マッケルホーンの初版本ですが、アレクザンダーのレシピは、ブランデー3分の1、クレーム・ド・カカオ3分の1、生クリーム3分の1 でした。上記・石垣氏の本を含め様々な文献情報からも、 1910年当時、アレクザンダーと言えば通常ジン・ベースだったにもかかわらず、マッケルホーンはブランデー・ベースを採用していたのがとても不思議で、意外感 がありました( 写真 は、Gin Alexander@Bar Hardi)

 有名なサヴォイ・カクテルブック(1930年刊)では、アレクザンダーNo1、No2という2種類のアレクザンダーが紹介されていますが、 No1はジン・ベースで、No2がブランデー・ベース です。とくに米国では、禁酒法が廃止された1934年以降、40年代末までに出版されたカクテルブックでは、なおジン・ベースのものが主流です。

 もう一つ面白いのは、「Harry’s ABC…」は、ブランデーをジン・ベースに換えただけのカクテルを「プリンセス・メアリー」という名で収録していることです。まったく同じレシピの「プリンセス・メアリー」は、サヴォイ・カクテルブックや「カフェ・ロイヤル・カクテルブック」(1937年刊)にも登場しますが、サヴォイでは、ジンの割合を2分の1にすれば「アレクザンダーNo1」、3分の1なら「プリンセス・メアリー」と使い分けているのが何とも奇妙なところです。

 なお、 アレクザンダーは誕生当初は「アレクサンドラ」と女性の名で呼ばれていましたが、いつの間にか「アレクザンダー」という男性名に変化した そうです。残念ながら、なぜ男性名に変化したのか、その背景について納得のいく説明を紹介しているカクテルブックには出合ったことはありませんが。

 ご参考までに、1930年代に出版された欧米の代表的なカクテルブックでのレシピを、少し詳しくみてみると――。

・「The Artistry Of Mixing Drinks」 (フランク・マイヤー著 1934年刊)仏
   ジン2分の1、クレーム・ド・カカオ4分の1、生クリーム4分の1
         ※「アレクサンドラ」という初期の名前で収録されている
・「The Old Waldolf-Astoria Bar Book」 (A.S.クロケット著 1935年刊)米
   ジン3分の1、クレーム・ド・カカオ3分の1、生クリーム3分の1
・「Mr Boston Bartender’s Guide」 (1935年刊)米
   No1. ジン3分の1、クレーム・ド・カカオ3分の1、生クリーム3分の1
   No2. ブランデー3分の1、クレーム・ド・カカオ3分の1、生クリーム3分の1
・「Café Royal Cocktail Book」 (W.J.ターリング著 1937年刊)英
   ジン3分の1、クレーム・ド・カカオ3分の1、生クリーム3分の1

 ブランデー・ベースの「アレクザンダー」は1950年代頃まで米国内ではあまりポピュラーではありませんでしたが、1962年公開の映画「酒とバラの日々」で、小道具として使われたことから、一気にブレイクしました(出典:欧米の専門サイト)。

 現在の日本ではブランデー・ベースが一般的ですが、米国では、今日でもジン・ベースのアレクザンダーはよく好まれるといいます。従って、欧米では「ジン・アレクザンダー」「ブランデー・アレクザンダー」と区別して紹介しているカクテルブックも見かけます。

 有名なクラシックであるだけに、日本に伝わったのも比較的早く、1930年代には伝わり、 1936年に出版されたスタンダード・カクテルブック(村井洋著、JBA編)で初めて収録されています が、この本では、ブランデー・ベースとなっています。

<次回へ続く>




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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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