Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2022/03/01
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カテゴリ: ITTETSU GALLERY
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 ITTETSU GALLERY:もう一つの成田一徹(481)~(500)

 バー・シーンを描いた切り絵で有名な成田一徹(1949~2012)ですが、実は、バー以外をテーマにした幅広いジャンルの切り絵も、数多く手掛けています。花、鳥、動物、職人の仕事、街の風景、庶民の暮らし、歴史、時代物(江戸情緒など)、歴史上の人物、伝統行事・習俗、生まれ故郷の神戸、小説やエッセイの挿絵、切り絵教則本のためのお手本等々。

 今回、バー・シーンとは一味違った「一徹アート」の魅力を、一人でも多くの皆さんに知ってもらいたいと願って、膨大な作品群のなかから、厳選した逸品を1点ずつ紹介していこうと思います(※一部、バー関係をテーマにした作品も含まれますが、ご了承ください)。
※故・成田一徹氏の切り絵など作品の著作権は、「Office Ittetsu」が所有しております。許可のない転載・複製や二次利用は著作権法違反であり、固くお断りいたします。


(481)「日本丸の神戸母港化」要請運動ステッカーのために  1980年代前半
 ※昨日に続いてもう一つ、ステッカーに描かれた切り絵作品。1984年に建造された2代目の実習帆船「日本丸」は、一徹氏の神戸港振興協会職員時代、たびたび神戸港を訪れた。来航のたびに歓迎セレモニーや見学会が開催され、一徹氏も対応に駆り出された。このステッカーは、2代目日本丸の母港を神戸港にするよう官民で(当時所管していた)文部省に要請する運動のために作られたが、結果的に母港化は実現しなかった(2代目は現在、独立行政法人「海事教育機構」の所管となっている)。







(482)客船とカクテル  2002年と2010年
 ※大型客船の形をしたグラスとカクテルグラスが並立するという妄想上の構図は、一徹氏の好きなモチーフの一つで、生涯に何度か切り絵として制作している。これらはそのうちの2枚。
 1枚目は文芸評論家・清水良典さんの連載エッセイ「ポケットに栞(しおり)」(東京新聞・中日新聞紙上)のために制作したもの(月1回の連載で2002年10月17日掲載分。連載期間は約3年<2000年~03年>に渡ったが、一徹氏は毎回、「グラス+何かのモチーフ」という構図の切り絵を提供した)。
 そして、2枚目の作品はその8年後の2010年に、神戸の古書店「ロードス書房」の目録の表紙絵として、店主から依頼されたもの。ご覧のように、ほぼ同じ図柄だけれど、左右を反転させている。8年後の作品でなぜ反転させたのかは不明だが、やはり船が左側に向いている方がなんとなく落ち着くからと思ったのか。





(483)雑誌「ダ・カーポ」のための挿絵  1990年代後半
 ※雑誌「ダ・カーポ」(マガジンハウス社から1981~2007年に刊行)からの依頼で制作した作品。1994年、時の首相暗殺未遂事件を起こして逮捕され、実刑を受け獄中にいた、ある右翼活動家のエッセイに添えられた。言わずもがなだが、一徹氏がこの活動家と親交があったという訳では全くなく、単に雑誌の編集部を通じて挿絵の仕事を依頼されたというだけ。






(484)「雨の女」のための表紙絵  1999年
 ※1999年に月刊「オール読物」(文藝春秋刊)に掲載された村雨貞郎氏の推理小説「雨の女」の表紙絵として制作された作品(残されているレイアウト完成予想図=下=と共に紹介する)。村雨氏は1949年高知県生まれ。新聞記者、広告代理店勤務などを経て、93年「砂上の記録」で第15回小説推理新人賞、97年「マリ子の肖像」で第4回松本清張賞を受賞した。






(485)オレンジ・スライス  1990年代前半
 ※何かの挿絵として制作したと思われるが、それ以上の詳細は不明。後に、自著の切り絵技法書の「作例」として収録された。









(486)囲炉裏端(3種)  1990年代
 ※「囲炉裏端」も一徹氏の好きなモチーフの一つだった。この連載でも第71回(下の画像ご参照)と第439回(同)で登場しているが、あと残っている3枚の作品をまとめて紹介する。








(487)石 臼  1990年代前半
 ※珍しくモノトーンの紙ではなく、御影石のような模様をつけた紙をメインに使い、仕上げた作品。一徹氏は時々、実験的にこのような試みにも取り組んだ。安易に市販のスクリーントーンを使うのは好まなかったので、石臼本体に使ったの模様紙は、白い紙の上からスパッタリング技法(絵具やインクを付けた歯ブラシで金網を擦り、不規則なシミのような模様をつくる)で、自ら制作した。石臼の質感、素材感を出すのにはとても成功していると思う。





(488)バラ<1>  1990年代前半
 ※本日からバラの絵を4回に分けて紹介したい。本日は、あるエッセイの挿絵として制作された作品。上下で反転したような図柄にしているのが面白い。





(489)バラ<2>  1990年代前半
  ※本日もバラの切り絵を。これもおそらく、誰かのエッセイか何かの挿絵として制作したもの。風にたなびく一輪のバラから、しなやかな枝の動きが伝わってくるような作品だ。





(490)バラ<3>  1990年代後半
 ※昨日に続きバラの切り絵を。月刊「文藝春秋」の目次ページカット絵のために制作された。カット絵はあくまで「(目次ページの)脇役」であるが、上品でおしゃれな雰囲気が漂い、おそらく読者の目を引いたことは間違いない。





(491)バラ<4>完  1980年代後半
 ※「バラ」をテーマにしたシリーズも、とりあえず本日でおしまい。プロデビュー後間もない頃の一枚と思われるが、何のために制作したのかよく分からないが、スクリーン・トーンを多用した実験的な作品。





(492)スイセン  1990年代前半
  ※「バラ」シリーズは昨日終わったが、もう1枚、ちょうど今が旬の花の絵(スイセン)を。かなり縦長の図柄は、おそらくは、月刊「文藝春秋」の目次ページのカット絵として制作されたのだろう。





(493)メッセージ・イン・ザ・ボトル  1995年頃
 ※ボトルに手紙を入れて、海に流す。ボトルは遠い、どこかの浜にたどり着き、拾った誰かに読まれる。そこから新たな出会いが生まれる。昔、ケビン・コスナー主演でそんなことをモチーフにした映画もあった。自著(1996年刊)の切り絵技法書の「作例」として制作した作品。





(494)皇太子時代の徳仁・天皇  1992年
 ※本日は祝日(天皇誕生日)。一徹氏は、(仕事の依頼もなかったのか)皇室がらみの作品はほとんど手掛けなかった。唯一残っているのは、1992年、現在の天皇陛下の皇太子時代を描いたこの一枚である。当時、週刊誌「サンデー毎日」に掲載された皇太子殿下の御妃候補についての記事に添えられたもの。候補の「本命」は、外務省職員だった小和田雅子さん(現・皇后陛下)だったが、バックにシルエットとして描かれた女性もおそらくは、小和田さんをイメージしたのであろう。





(495)歳徳神  1990年代後半
 ※何のために制作したのか不明の作品。「歳徳神(としとくじん)」が描かれた暦本のページ。「歳徳神」とは陰陽道ではその年の福徳を司る神で、「歳神(としがみ)」とも言う。ほとんどの暦本では、最初の方のページに美しい姫神の姿をした歳徳神が登場する。「歳徳神」の居る方位が「恵方(えほう)」(「あき(明き)の方」とも言う)で、その方角に向かって事を行うのが「吉」と言われている。
 「恵方」は毎年変わるが、実は基本的に「東北東」「西南西」「南南東」「北北西」の四つだけ。その年の「十干(じっかん)」と組み合わせることで決まる。「十干」とは「十二支」のようなもので、「甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)」の十通りで暦を表す。ちなみに、ことし2022年の「恵方」は先日の節分でもお聞きになったように、「北北西」である。





(496)老舗蕎麦屋   1990年代後半
 ※老舗蕎麦屋「砂場」を描いたと思われる一枚(おそらくは料理系の雑誌の依頼で制作したのだろう)。しかし、都内には明治2年(1869)創業の日本橋「室町砂場」を始め、「砂場」を名乗る老舗蕎麦屋が少なくとも5軒はある。この切り絵、最初は日本橋の店を描いたものと思ったが、玄関の壁に取り付けている「おそば」という外看板の位置が、今も残る店のものとは左右が逆だ(近年、位置を変えたのか?)。グーグルで画像検索しても、同じ外観の「砂場」にはヒットしない。一徹氏はいったい、どの「砂場」を描いたのだろうか?





(497)アイヌの祭り   1990年頃?
 ※北海道の先住民族、アイヌの人たちの祭りを描いた、実に手の込んだ作品。落款のスタイルからして、デビュー後、間もない時期のものと見られるが、完成度はとても高いと思う。残念ながら、何の(媒体の)ために制作したのかは、現時点では分かっていない。





(498)「Old Bridge」という名の酒場   2009年
 ※一徹氏がプロデビュー(1988年)前から、グッドバー同好会の会員向けに葉書で発行していた(切り絵と文章による)「グッドバー通信」。1995年を最後に一時中断していたが、2007年から再開することを決めた。旧「グッドバー通信」は田中正樹が文を担当したが、再開後は荒川英二が文を受け持つことになった。
 これは再開後9回目の「通信」(2009年)で、大阪・鶴橋のJR環状線ガード下にあった「Old Bridge」という酒場(現在は閉店)を描いたもの。取材のため荒川と一緒に店を訪れた一徹氏は、バック・バーの棚が引き戸になっていて、そこを開けると奥がキッチンになっているというこの店の面白い造りに、いたく感激し、迷うことなく切り絵の主題に選んだ。
 (※この店の任されていたMさんは現在、大阪・上本町6丁目で「ドラムハウス・ザ・ルート」というバーのオーナー・バーテンダーとして活躍している)。





(499)作品名不詳の挿絵<1>   1990年代前半
 ※一徹氏の制作した切り絵作品の中には、ミステリー小説を含む小説やエッセイの挿絵が数多くある(主に挿絵の依頼を受けたのは、「ミステリ・マガジン」「SFマガジン」「文藝春秋」「オール読物」「小説現代」「小説宝石」「野生時代」「サンデー毎日」「週刊小説」「週刊実話」「スーパージャンプ」等々)。
 残念ながら、残された挿絵の多くは、誰の何という小説(またはエッセイ)のために制作したのかは、現時点ではよく分からない。しかし、それを承知のうえに、本日からしばらくの間は、こうした作品を紹介していきたい(同じ小説のための挿絵と思われるものは、出来るだけまとめて掲載したい)。





(500)作品名不詳の挿絵<2>   1990年代前半
 ※一昨年(2020年)の10月からスタートした「ITTETSU GALLERY」も本日で500回。公開できる素晴らしい作品がある限り、この連載は続く。本日も、昨日に続き一徹氏の残した小説やエッセイの挿絵(切り絵)で、「何の作品のために(何の媒体のために)制作したのか不詳のもの」を紹介する。シルエットで描かれた女性のバックにスパッタリング(吹き付け)技法を使った、シンプルだが、とても幻想的な作品。




◆故・成田一徹氏の切り絵など作品の著作権は、「Office Ittetsu」が所有しております。許可のない転載・複製や二次利用は著作権法違反であり、固くお断りいたします (著作権侵害に対する刑罰は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金という結構重いものです)。

※「ITTETSU GALLERY:もうひとつの成田一徹」過去分は、 こちらへ

★過去の総集編ページをご覧になりたい方は、 こちらへ。

【Office Ittetsuからのお願い】成田一徹が残したバー以外のジャンルの切り絵について、近い将来「作品集」の刊行を計画しております。もしこの企画に乗ってくださる出版社がございましたら、arkwez@gmail.com までご連絡ください。


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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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