ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Mar 26, 2006
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 今日は、ニューヨークのとある教会でバイオリンを弾きました。
 この教会、復活祭とかクリスマスとかの「ここぞ!」というミサの時は当然プロの奏者や声楽家を雇うのですが、ふだんの日曜日の礼拝は、専属オルガン奏者が数人の聖歌隊とともに賛美歌を担当してます。で、たまに(二ヶ月に一回ぐらい)、僕のような「村の辻音楽師」にも演奏の場を与えてくださるのです。僕はお言葉に甘え、自分の実力や立場もわきまえず(キリスト教徒でもないのに)、思いっきりギコギコ弾いちゃうのです。

 今朝の礼拝で僕が参加した楽曲は以下の通り。緊張したけど楽しく弾けました。

 バッハ: 無伴奏チェロ組曲第四番よりブーレ(バイオリン編)
 バッハ: カンタータBWV186「ああ魂よ汝憤ることなかれ」よりアリア(ソプラノ、バイオリン、ピアノ)
 バッハ: カンタータBWV75「貧しき者よ饗せられん」よりアリア(アルト、バイオリン、ピアノ)

 礼拝のオープニング(プレリュード)やエンディング(ポストリュード)用には、「適当にバッハの無伴奏でも弾いてくれ」といつも言われるのですが、そんな簡単に弾けるわけないので、とっても悩みます。選曲のポイントとしては、重音が出てこなくて、テンポが速くない曲。全集を1ページから順にめくりながらせっせと探すのであります。過去に三、四回弾いてますが、早くもネタが切れてしまったので、今回は裏ワザとして無伴奏チェロの編曲版を弾いてしまいました。

 いつもバッハ様には大変申し訳ないと思ってます。弾ける曲の弾ける部分だけを勝手にリピートしたりしながら、しかも敬虔な信者の前で偉そうに弾くなんて、もしかして詐欺行為であることはわかってます。
 礼拝の基本趣旨を理解してない僕がいけなかったのですが、以前、オープニングにバッハのニ短調パルティータの1楽章を弾いたことがありました。これはただでさえ暗ぁーい曲なのですが、難しいとこもあるので「さらに倍!」の遅いテンポで弾きました。そしたら牧師さんが顔をしかめるのです。信者の皆さんを意気消沈させるような暗い曲をプレリュードに選んではダメらしい。となると、ガボットとかブーレなどの快活な曲ってことのようです。

 教会って、その場にいるだけで心が洗われます。この僕ですら、汚れきった精神が清められた気になります。そして、一点の曇りもない澄んだ音を出そうと自ずと努めるのです。まだまだ修行が足りませんが、そういう場を与えてくださる太っ腹な教会側には感謝してます。

 礼拝の後は、いつも信者の皆さんとお茶を飲みながら懇親するのですが、今日は午後にオーケストラの本番が重なっていたので、「弾き逃げ」させていただきました。





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最終更新日  Mar 28, 2006 11:27:30 AM
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