「厚い手のひら」 井上優(ゆう)

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January 1, 2014
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こちょこちょ


我が家では いつの頃からか
『耳がかゆいと 良いことがある』
というジンクスが生まれた


もうすぐ4歳のシオンも
夜寝る前 耳がかゆいと
「あした、いいことがあるね」とママに言う


(でも、どうして良いことがあるときに 耳がくすぐったくなるのかな?)


「イエスさまと マリアさまが、よかったね・おめでとうって おみみのそばで こちょこちょ いってくれるんだよ」





レイニー・シーズン


いつも いつでも 雨が降っている

柔らかな春の雨ーー夕立後のスコール(老人が死ぬ)

冬の暖かな雨 ーー赤の広場の雪を融かす(腐った冬)

哲学の雨は夏を告げるーー君の骨髄から滴る(透明な粒子達)

永い秋の雨は麦穂を甘くしーー復活の時を刻むための(忍耐になる)

いつも いつまでも 清浄な雨

雨の中で 僕らは安らげるのだ ここでは

放射能の雨の中で 僕らは清浄に安らげるのだ


祈ろう
僕の血が滴るように 君の瞳へと




   乳房2


一面の焦土 焼野原は化学物質と放射能とに満たされ
死体は散乱し 腐敗臭を鋭く放つ
胴 口 手 足が それぞれに叫びを上げている

少女は独り立ち
まだ膨らまぬ乳房を抱きしめる

赤子が数人 死んでしまった母親の
脇から這い出し 乳を求める 

 少女は膨らんでいない乳房を
 赤子に含ませるが 乳の出ようはずもない

奇形の赤子が血を流しながら 彼女の前に這ってきた
唇は幾重にも割れている

 少女は祈りつつ
 諦めずに 幼い乳を含ませた
 小さな乳房は微かにふくらみ 母乳が滴った

奇形の子の背中には 小さな白い翼が生えていた


(詩誌コールサック77号掲載)





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最終更新日  January 1, 2014 08:26:57 AM
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