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July 3, 2011
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カテゴリ: 教授の読書日記



 『写真の愛・情』には、荒木経惟さんの、妻・陽子さんへの想いが詰まっているし、『日本の鶯』の著者は関容子氏。今回の『本のしごと』の著者は林洋子氏と、どうもこのところ「ヨーコ」3連発ですよ。うーん、ヨーコはいいかもっ!

 しかも今回の本は、フランスで活躍したレオナール・フジタこと藤田嗣治さんが、意外にも本の装丁とか挿絵とかにかなり深く関わっていた、ということを明らかにしたもので、私の専門にも近いところがあり、しかもこの本の著者の林さんという方は、藤田嗣治に関する研究で第30回サントリー学芸賞を受賞されていますからね(ちなみに『日本の鶯』は日本エッセイストクラブ賞を受賞)。

 しかもしかも。この『藤田嗣治 本のしごと』は、「だ・である調」ではなく「です・ます調」で書いてあって、高度に学術的な内容の本を「です・ます調」の文体で書く方法を研究中の私としては、ますます興味津々よ。


 といういわけで、色々な意味で期待に満ちて本書を読み始めたワタクシ。


 ところが・・・。


 うーーーーーん・・・。


 これねえ・・・。


 意外なことに、全然読めないの。ワタクシには。


 何が読めないって、文章がね。とても読めるシロモノじゃなかったという。この人、サントリー学芸賞取ったんでしょ? それで、この文章ですかねえ・・・。


 とにかく、この著者の「です・ます調」が、全然練れてないというか、単調この上ないわけ。だってほとんどすべての文章が「です(でした)」か「ます(ました)」か「でしょう(か)」で終わるんですから。全巻、そうよ。例を挙げましょうか? どのページを開いても、全部そうなんですけど・・・


 ・・・赤い表紙が鮮やかです。孤児で病気の少年とその地の王の交流を描いた物語は、フランス人読者にも藤田にも異国趣味をかきたてるものでした。象、犬、猫、鶉、りす、牛を「自画自彫」しています。彼はよく似た犬の木版画を同時期に雑誌『クラルテ』に提供していました。すでに『詩数篇』に線描の動物がありましたが、当時手がけた涅槃図や十二支をテーマとした水彩画に通じる、輪郭線を強調した平面的な表現です。仏画などの東洋画の図像研究の成果でしょうか。のちに「猫の画家」といわれる藤田の原点がここにあります。(35-36頁)


 彼の詩集『平行棒』(一九二七)を手掛けています。全頁大のエッチング五点とも取り外しがきくつくりで、当代風の女性を主人公とした光あふれる、開放感のある場面です。自転車に乗ったり、海水浴をしたりと、当時、藤田が16ミリカメラで撮影したドーヴィルなど高級リゾート海岸での夏のヴァカンスを連想させます。この詩人とは藤田のはじめての作品集『フジタ』を一九二四にジョルジュ・クレ社から出すなど、すでに親しいつきあいでした。出版元は『詩数篇』を手がけたベルヌアール社で、『詩数篇』より倍近いサイズの「画家本」というべきものでしょう。(43-44頁) 


 ここでの見どころはむしろ本文頁での、テキストとイメージのレイアウトです。竹の囲み罫を基調のモティーフとしてレイアウトの枠を設定し、そこに漢字と朱色を効果的に使っています。前年の『御遠足』で使った「レイアウトの枠」の手法にさらに東洋風を加味し、技巧を尽くした二〇年代のパリでの「本のしごと」の集大成といっていいでしょう。刷り部数も一〇〇部を切り、ごく限られた愛書家向けの個性的な本です。(82頁)


 ね?

 この押し寄せる「です」「ます」「でしょう」に圧倒され、それが気になって気になって、一体何が書いてあるのか、内容の方に気が向かなくなるというね。これはもう、呪術的な悪文ですな。

 文章道を志す者たちの末席を汚すワタクシでさえ、文末の切り方というのは一番工夫を凝らすところで、そこをいかにバラエティ豊かにするかということには、ものすごく気を遣うものなんだけどなあ・・・。「です」「ます」「でしょう」の3つで全部済ませるというこの人は、そういうことを考えないのだろうか?  


 ということで、残念ながら第三の「ヨーコ」は全くの期待外れ。申し訳ないけど、この本は読む前に書庫に直行でございます。よほど必要があれば別、二度と日の目を見るかどうか・・・。

 しかし、人のふり見てなんとやら。今書いている自分の本の文体を磨くための他山の石とすることとして、投資した1200円+税を回収したつもりになることといたしましょうかね。





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Last updated  July 3, 2011 03:41:13 PM
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