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2025.04.06
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カテゴリ: 音楽
このところ音楽学者や音楽評論家の本ばかりに目が行っていた亭主ですが、例によって新聞朝刊一面の最下段にある新刊書の広告を眺めていたところ目に止まったのが「揺らぐ日本のクラシック」という本(渋谷ゆう子、NHK出版新書、今年3月刊)。副題に「歴史から問う音楽ビジネスの未来」とあるように、著者はクラシック音楽の興行に携わる方で、その視点から業界の状況やそれに対する認識を知ることができる、という点で興味深い本です。



まず、著者の基本的なスタンスは、「『クラシック音楽は終わっている』『もう続かない』という意見に、なんとか客観的事実を踏まえて反論を試みたかった」とあるように、芸術としてのクラシック音楽の価値を信じ、それを興行ビジネスとしても日本で継承・発展させたいという思いに駆られて本書を書いています。

一方で、本書第1章の「かくも厳しきクラシック」にあるように、著者も日本のクラシック音楽、特に規模の大きいオーケストラなどがビジネスとして「まったく儲かっていない」という厳しい現状認識に立ち、公演にかかる諸経費など具体的な数字を示しながら、なぜ儲からないのかを解説してくれます。(それにしても、東京都響の年間[2022年度]の経常費用17.4億円に対して事業収入がたったの5.3億円で、「通常の会社なら倒産待ったなし」というのはなかなか衝撃的。)

そこで、著者はそもそも西洋からの輸入品であるクラシック音楽を日本で頑張ってやる意味や存在理由があるのか、という根本問題に立ち返り、明治期の西洋音楽導入に始まる歴史を教育・興行の観点から辿って見せます。(2〜4章:日本のクラシック音楽を擁護する立場から書かれているので答えは予想されますが、幸田延の事績などややエピソード主義に流れがちなのが残念なところか?)

次に、日本の事情と対比するために、まず明治政府の西洋音楽導入先であった米英のクラシック音楽興行の歴史と現状が振り返られます。(独仏伊からクラシック音楽を輸入した、という点で米英は日本と同じで、日本のクラシック音楽の源流が米国にある、という指摘には端倪すべからざるものがあります。)米国では例によって自助努力と経済至上主義が音楽ビジネスでも完徹されることが紹介されます。一方、英国では、抜群の集客力を誇る世界最大の音楽祭「BBCプロムス」においても、民間資金だけでなく政府(アーツ・カウンシル)からの補助も入っており、TikTokなどの動画SNSで若者にも積極的にアピールすることで、若年層のクラシック音楽聴衆の数が大きく伸びたことなど、日本とは対照的な状況にあるようです。

では「本場」ヨーロッパはどうか(第6章)。この中の歴史的な部分については(これまでブログにも書いたように)亭主も色々と読書を重ねてきたこともあり、たった1章分だけの扱いには流石に食い足りない感が否めないところ。とはいえ、今風に経済合理性をある程度追求しつつも、伝統文化を守るために必要な公的支援はしっかりと行っている、という近年の状況はよく伝わってきました。

これらに比べ、亭主にとって新鮮だったのが隣国である中国、韓国でのクラシック音楽事情で、これらの国々ではまさにビジネスとしてのクラシック音楽が追求されている様子が紹介されています(第7章)。特に驚いたのが韓国の状況で、手厚い政府支援の下(日本の10倍以上!)、同国出身の若手演奏家が世界中の著名コンクールで優勝するなど、興行的な成功に向けて確実に成果を挙げつつある模様。

こうしてざっと諸外国の事情を眺めた後で、著者は日本の現状に立ち戻り、どうすればこの苦境を打開できるかについて幾つかの具体的な提案を行なっています。その前提として、著者は「若者の『クラシック離れ』のウソ」という見出しを掲げ、クラシック音楽に「関心がある」若年層が絶対数としては必ずしも減少しているわけではないことを、具体的に数字を上げながら示します。

つまり、著者の主張の要点としてあるのは、「関心がある」人数と実際にコンサートに「足を運ぶ」人数との落差にあると思われます。後者において「高齢化」が進んでいることは紛れもない事実ですが、実は潜在的な需要はもっとあるのではないか。これを裏付けるとして言及されたものの中に、日本にはアマチュアオーケストラが沢山あることが挙げられていましたが、この点については亭主もそれなりの実感があります。

では興行ビジネスとしてのクラシック音楽の苦境をどう乗り越えるか。著者は「地方における文化形成」を目標に、プロの演奏家とアマチュア音楽家の連携を鍵として「音楽祭」を盛り上げることを提案し、そのような協働をサポートする組織・人材の必要性を説きます。

従来の興行ビジネスといえば、「私演奏する人、あなた聴く人」と完全に一方通行の芸術・娯楽享受で、アマチュア音楽家も「聴く人」の側(亭主も然り)ですが、両者の協働による音楽祭などのイベントはなかなか新鮮なアイデアに感じられ、うまくいけば地方創生にもつながるのではないかと希望を抱かせるものでした。









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Last updated  2025.04.06 21:28:11
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