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2025.04.13
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カテゴリ: 音楽
先週の「古楽の楽しみ」では、音楽学者で番組レギュラーMCである加藤拓未氏の案内による「バッハの生涯と音楽」というプログラムが4日間にわたりオンエアされました。

セバスティアン・バッハは、65年の生涯で膨大な数の音楽を残しています。その中で代表作と言われるものだけに限っても、1回55分、月〜木の4回合わせても4時間弱というという限られた時間枠の中でカバーするのは至難のわざ。しかも、この番組はいわば古楽を専門としていて、想定される聴衆もバッハの生涯や有名作品は一通り知っているはずで、あえてこのようなプログラムを企画した意図はなんだろう、と訝りながら4日間拝聴することに。

ところが、初日のプログラムの楽曲に付けられたコメントを聞いているうちに、じわじわと違和感が募ることに。以下、加藤MCのナレーションから抜粋です。

アルンシュタット
(コラール前奏曲 BWV739について)...バッハはこのメロディーに華麗な音楽を施しており、その駆け巡るかのような生き生きとした音の動きに、バッハの溌剌とした若き 才能の煌めき を感じます。

(トッカータとフーガ BWV565に先立つリューベックへの旅について)その目的は..憧れていた音楽家、D.ブクステフーデのもとを訪問し、彼の芸術に触れることでした。ブクステフーデのオルガン曲は…大胆な転調もあり、実に 芸術的 で魅力あふれるものとして、若いバッハの心を揺さぶったと思います。

ミュールハウゼン
(カンタータ106番 BWV106について)...人間の死を見つめる 青年バッハの澄んだ眼差し が、その美しい音楽の隅々にまで息づいているかのような印象を受けます。

ワイマール
(パッサカリア BWV582について)...この作品から聞こえてくる音楽の力強さと豊かな響きからは、20代にして 自分の芸術 に確信を覚えた、若きバッハの姿が見えてくるようです。
(以上、強調は亭主)

亭主は最後のコメントを耳にして、思わずその場でのけぞってしましました。バッハが「自分のゲイジュツに確信を覚えた」?これではバッハがまるで19世紀以降に現れた芸術という概念を知っていたかのように聞こえます。(ちなみに、2日目以降は転職に絡むエピソードと曲の解説が主となり、上記のようなコメントはなし。)

古楽ファンには周知のことですが、18世紀以前の職業音楽家は基本的に「機会音楽」の作曲・演奏家であり、王侯貴族/教会といった雇い主の注文に応じて彼らが主催するイベント(祝祭、婚礼など)や年中行事(教会音楽も含む)を盛り上げるための音楽を作るのが仕事でした。このような機会音楽は、イベント・行事ごとに基本1回しか演奏されないので、旧作の一部使い回し(=パロディ手法)もしながら無数の音楽を作り続けることになります。当時の音楽家がそれらの曲をこんにちのクラシック音楽のような「芸術作品」とみなすことはなかったといってよいでしょう。(そもそも彼らが「芸術」という概念を知る由もなく…)

さらに、20世紀半ばから盛んになった古楽復興運動とは、単なる古い音楽の博物館的再生ではなく、「芸術/作品/天才」といった概念を生んだ19世紀的な音楽観から脱却し、古楽が持つ即興性や機会性を音楽の本質として取り戻す運動でもありました。

そこには当然19世紀に後付けで生成された「偉大な天才バッハ」、「音楽の父」といった偶像化に対する異議申し立ても含まれていたはず。

加藤拓未氏は1970年生まれということで、彼が音楽を学んだ時代はまさにこのような古楽が盛り上がっていた時期に相当しています。にもかかわらず、「偉大な芸術家バッハ」という19世紀的なバッハ観の持ち主であることをカミングアウト(?)したのには正直びっくりしました。

ここからは亭主の推測ですが、当該番組も新年度に入り、番組ディレクターは新しいリスナーを迎えることを想定して何か「古楽の初心者」向きのプログラムをMCに依頼したのかもしれません。とりわけクラシック音楽愛好者がこの番組を聴き始める可能性が高いと踏んで、まずは最も知名度の高いバッハを取り上げたのでしょう。そうであれば、もしかすると加藤MCのコメントも本心ではなく、彼らの先入見に合わせた結果だったのかも。(でもそうだとすれば、逆に不誠実の誹りは免れない?)

というわけで、なんだかモヤモヤする放送回でした。









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Last updated  2025.04.14 22:52:54
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