武蔵野航海記

武蔵野航海記

2008年03月19日
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ヘーゲルの弁証法というのは、個々の部分が統合されればされるほど完成度を増していくということです。

そして全体になって初めて「実在」になります。

「実在に関する見解は、先行する誤謬を間断なく訂正することによって発展する」のです。

真理と誤謬は対立物ではなく、真理とは全体なのであって、部分は真理ではないのです。

ヘーゲルは、世界史が弁証法のプロセスを進んでいるという「歴史哲学」を主張しています。

最初の段階は東洋人で、ただ一人が自由だという専制政治の段階です。

次にそれが統合されてギリシャ・ローマ時代になり、若干のものが自由だという民主制と貴族政の段階になりました。

そして最終段階がドイツ人で、全てのものが自由であることを知っているのです。

ドイツ人は精神の発展の最高の段階に来ているというわけです。

「ドイツ精神は新しい世界の精神であり、その精神の目的は絶対的真理を自由の際限なき自己規定として実現すること」なのだそうです。

この説はヘーゲル自体の説と矛盾しています。

最初の段階の東洋とはシリアやエジプトなどの地中海沿岸の地域で、ギリシャ・ローマやドイツも含めてヨーロッパ世界しか視野に入れていません。

しかしヘーゲルの生きていた19世紀前半は、インドの哲学がヨーロッパに紹介されてかなり注目を集めていた時で、支那や日本、アメリカ大陸などの知識も十分にありました。

つまりヨーロッパ世界はヘーゲルの言う「部分」でしかなく完成したものではないのです。

だからドイツ精神が最高段階であるはずはないのです。

ここでもヘーゲル哲学のロマン主義の本質が出ています。

即ち愛国主義だということです。

自分の属する国を最高にしたいという願いで自分の理論に反することを平気で言っているのです。

また弁証法を推進する英雄は通常の道徳律を犯しても良いとしていますが、この英雄とはアレクサンドロス大王、カエサルとナポレオンです。

ここにも英雄崇拝というロマン主義の特色が出ています。

ヘーゲル弁証法の、個々が統合されると完成度が高くなるという理論を個人と国家の関係に適用して、個人が統合された国家のほうが個人より完成しているとヘーゲルは考えます。

国家とは道徳的理念が現実化されたものなのです。

この理屈から、ヘーゲルは市民に対し自国の独立や主権を擁護するように要求しました。

更には戦争に参加することも市民に要求しました。

戦争というのは物質的な幸福がむなしいという事を人間に教える良いチャンスであり、たまには戦争をすべきなのです。

結局、ヘーゲルの理論というのは「現実に存在する国家」が最高に完成されたもので、市民はそれに服従しべしというのが結論です。

この説はプロイセン国家の支配者にとって涙が出るほど嬉しい思想です。

実際、ヘーゲルはベルリン大学の名物教授として、プロイセン王国の広告塔の役割を果たしたのです。





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最終更新日  2008年03月19日 02時47分50秒
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