2017.03.03
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カテゴリ: ドイツ





「ヒトラーの忘れもの」白砂の海岸、地雷、少年兵。詩情あふれる映像で戦争の理不尽を伝える


 青い海に白い砂浜。あどけなさの残る少年たちが腹ばいになり、細長い棒で砂の中をつつく。しかし、その先に埋まっているのは、一瞬で命を奪い去る凶悪な地雷だ。観客は彼らに同化し、死と隣り合わせの任務に極度の緊張を強いられることになる。


 1945年5月、デンマークはナチスドイツの占領から解放されるが、その海岸線にはドイツ軍が埋めた150万もの地雷が残された。膨大な数の地雷を撤去する危険な作業を強制されたのが、同国に残されたドイツ兵捕虜で、その多くは大戦末期に徴兵された10代半ばの少年兵だったという。「ヒトラーの忘れもの」は、デンマーク国内でもほとんど知られていなかった歴史の悲劇を題材にしたヒューマンドラマだ。


 映画は、地雷除去の方法を即席の訓練でたたき込まれて現場に送られた11人のドイツ人少年兵と、彼らを監督する厳格なデンマーク人軍曹の双方の視点から語られる。少年たちは爆発から身を守る防具類を一切与えられず、棒きれ1本で地雷を探り当て、素手で信管を外す。軍曹は彼らに厳しくあたり、食料の配給が遅れても知らん顔、体調を崩した子に休憩さえ与えないが、少年たちが過酷な任務に健気に取り組む姿と仲間をかばう優しさに触れ、次第に接し方を変えていく。物語の軸となる両者の関係の変化が、新人を多く含む俳優陣の自然な演技と抑制された演出で効果的に描かれている。


 美しい海岸に埋められた、恐ろしい地雷。大人たちが残した戦争の遺産と、後始末を強要させられる少年たち。支配される側とする側の立場が逆転した、デンマーク人とドイツ人。コントラストが際立つさまざまな要素を、詩情あふれる映像で描き出し、戦争という行為の理不尽さを浮かび上がらせる。これが3本目の監督作となるデンマーク出身のマーチン・ピータ・サンフリトは、次回作ではジャレッド・レトと浅野忠信を起用し、第2次大戦後の日本の闇社会を描く予定。日本の映画ファンからも今後ますます注目されるであろうフィルムメーカーだ。(高森郁哉)






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最終更新日  2017.08.16 14:28:32
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