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2015.07.25
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カテゴリ: 小説
仕事とキチガイ妻とふたつのものに賭ける岳夫にじゃじゃ馬令嬢の美音が惹かれて不倫する話。

●あらすじ
金持ち社長貝塚弥彦の孫の美音はじゃじゃ馬で縁談を断っていたが、弥彦はがんで死ぬ前に愛人の息子の岳夫を紹介する。岳夫は鉄道会社で地質調査をしていて妻の千波と息子の明日夫と暮らしていたが、千波はかつて自殺未遂や堕胎をしているヒス女で、育児を放棄してファッションモデルをやって知り合った写真家の小関デートしていたが、岳夫は千波に不満を持ちつつも自分が必要だと考えて共依存して、仕事でもどこに線路を作るかで上司の田丸と対立する。そんな苦労人の岳夫になぜか美音が惹かれてエッチして、千波が気づくものの、美音は妾になって子供を産むつもりでいる。田丸が岳夫を恨んで自殺して、美音が岳夫をなぐさめてエッチして、岳夫と美音が千波に話して修羅場になり、千波は岳夫に捨てられると悲観して明日夫と川に飛び込んで心中しようとするものの助かり、岳夫は相変わらず千波と離婚するつもりもなく美音と付き合っている。

●感想
三人称。600ページ弱の長編の割には各章15-30ページ程度で、会話文が多くてさくさく読める。しかし年齢や容姿などの人物の背景情報や外面描写が乏しく、長編小説で登場人物が多いのに人物像を把握しにくく、文章には目だった瑕疵がない反面、冒険をしておらず魅力もなく、つまらなさが最大の欠点ともいえる。プロットを進めるための誰が何した、~と言ったという文が淡々と展開していて比喩も演出もなく、物語が退屈すぎて読み進めるのが苦痛になる。117ページでようやく美音と岳夫が初めて会い、172ページで二回目に会い、220ページで三回目に会い、292ページで4回目に会うものの、物語の半分を過ぎてもまだ世間話をするだけで恋愛のプロットが進展しないので飽きて途中で放り出したくなる。古い小説なので連載小説なのか書き下ろしなのか情報が見つからないけれども、細かく章立てしてあるからたぶん連載小説として結論を考えないままうだうだ中間部分を書いていたんじゃなかろうかと思う。どうでもいい会話やら食事やらの場面は端折って物語の展開を早めてほしいところ。小説としての主な見所は嫁姑問題や三角関係の修羅場なのだろうけれど、現代人ならネットでよく見る話なので特に目新しくもない。
美音はじゃじゃ馬と呼ばれる割りにはシェイクスピアのじゃじゃ馬のように積極的に行動してプロットを荒らしまくるわけでもなくおとなしくしていて、美音が主人公と思いきや千波のキチガイぶりのほうが目立ってしまって、誰が主人公なのか、誰の心情を書きたかったのか焦点がわからない。三人称にして視点を変えているのはよいけれど、美音をもっと書かないと三角関係の物語としてバランスが取れないし、美音は岳夫の浮気相手役として千波が子供と無理心中するプロットの引き金役として都合のよい人物として配置されただけのようでご都合主義的で人間味がなく、美音が岳夫に惚れる理由もわからないし、美音の言う「真の愛」が妻にならずに妾でいいやという程度のもので、「真の愛」がなんなのかを物語として表現できていない。美音に片思いしていた従兄弟や千波のデート相手の小関も途中からフェードアウトして存在感がなくなっていて登場人物が多い割にプロットは雑で単調。ラストに心中する流れも紋切り型の終わり方で、切った張ったしたからといって物語が面白くなるというわけでもなく、キチガイが自滅しただけで悲劇としてのカタルシスもなく、キチガイ連中に付き合わされた徒労感が残る読後感。
物語の背景事情も曖昧。この小説が出版されたのは1965年らしく、新幹線が200キロ出たとか、オリンピックのバレーで感動したとか書いてあるので東京オリンピック後の日本がそのまま物語の舞台なんだろうけれど、社会背景があまり書かれておらず、時代感覚のなさがつまらない。岳夫が鉄道会社で働いていたり、千波がファッションモデルをやっていたりするけれど、業界の掘り下げが浅くて当時の鉄道業界やファッション業界を知るための資料としても役に立たない。
名前は知っているものの読んだことがない作家なので読んでみたものの、構成に工夫もなく特徴もなく雑に仕上げたという感じの凡作。wikipediaで調べてみると生活のために大量に通俗小説を書いて1年に4-5冊というハイペースで刊行していたようで、それだけの量を書くのはたいしたものだけれど、その分雑になっているのだろう。他の小説も似たような出来栄えならいまさら読む価値もなさそう。

★★☆☆☆





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最終更新日  2015.07.25 21:22:09
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