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2022.07.18
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カテゴリ: 小説
廃村に1人で残った老人が過去を思い出しながら自分が死ぬまでの様子を語る話。

●あらすじ

私を探しにアイニェーリェ村に武装した男たちがやってきて、獣に食われて苔に覆われた私を見つける。

私と妻のサビーナは村に二人だけ取り残されて暮らしていたが、サビーナは村を徘徊するようになって粉ひき小屋で首つり自殺をした。私はサビーナを引きずって埋葬して、ロープを道端に捨てたら雪に埋まり、サビーナの思い出の品もトランクに詰めて地面に埋めた。それは記憶違いでなければ1961年の事だった。雪が解けたらロープが出てきたので、私は肉体を失ったサビーナの魂としてロープを腰に巻くようになる。
長年連絡がなかった息子のアンドレスからドイツで暮らしているという手紙が来て、アンドレスが家を出て行ったときのことを思い出す。アンドレスが出て行った代わりに市民戦争で戦死したカミーロと4歳で病死したサラの亡霊が出るようになった。私は兄弟を捨てたアンドレスを許していないので手紙を破り捨てる。
私は一人で農作業をして暮らして、空き家になったアシンの家で一服したら毒蛇に手を噛まれて、応急処置をするものの悪化してサビーナが部屋にいる幻覚を見て、数日後に手の腫れが引いて生き延びた。
娘と同じ肺の病気になって死が近づいても恐ろしくなくて、祖父と父が死んだときのことを思い出して、父が死を受け入れたことが自分が死と向き合うことになったときに役に立った。
アイニェーリェ村はゆっくりと荒廃が進んで一軒一軒と家が崩れていった。フリオ・フランシスコ一家が村を去ったのをきっかけに離村が始まって、アドリアンが去ったときのことやガビンが孤独死したときのことを思い出す。
真夜中に台所に母の亡霊がよく現れるようになって、台所で死んだ人たちが会話していて、私は彼らの姿を見ないために村のどこかに隠れたり、山の中をさまよい歩いたりして避けていたが諦めて、家族が自分たちの一員になる時を待っているのだと考えると心が慰められた。
私はときどき食料や弾薬を買ったり果物を売ったりするために村を出ていた。5年前の8月に村に帰ったときに荷物を取りに来たアウレリオと会ったが、銃を突き付けて何も持たずに村を出て行かせた。アウレリオが殺されそうになったとベルブーサ村で触れ回ったせいか、羊飼いも来なくなって、ベルブーサ村に食料を買いに行っても狂人のように警戒された。冬に大雪のせいで罠が雪に埋もれて食料がなくなり、飢えに耐えきれなくなって意地も誇りも捨ててベルブーサ村に行ったものの村人に警戒されてノックしても誰も出てこないので帰った。
孤独感を振り払うことができなくなって仲間が欲しくなって川岸まで降りて行くと、昔川に流した雌犬の兄弟の鳴き声が聞こえた。帰り道を間違えてソブレプエルトの古い焼け焦げた家の前に来てしまい、そこは私が15歳のときに火事になった家で、老婆が焼け焦げて、ああ、水、水がほしい、殺しておくれ! と叫んでいた。
私は死につつあって死者の声が聞こえて、アイニェーリェ村にまだ誰か残っていれば私も老婆と同じように哀願するだろうが、ここには私しかいないのでひとりで死と向き合っている。

●感想

1章は死体(幽霊?)になった私が俯瞰視点で村に来る男たちの様子を「~だろう」と一人称で語る形式で、本来はありえない語り方で始まるのでインパクトはある。しかし冒頭だけの一発芸で終わって、2章以降は月並みな年寄りの昔語りになって、そのうえ記憶があいまいな信頼できない語り手の一人称の語りで、私が誰なのか、いつの時点でいつの出来事を語っているのか、誰に対して語っているのかが不明だし、客観的な説明もないので話の内容が分かりにくい。
100ページに「あれは一九五〇年のことだった。当時、村に残っていたのはフリオとトマス・ガビン、それに私の三人だけだった。」と書いてあって、そのすぐ後に「少し前からアドリアンが私とサビーナと一緒に暮らしていた。」と書いてあって矛盾している。103ページに「フリオのところに息子が二人と弟がいた。」とあるので、100ページのところは三人でなく三世帯というべきじゃなかろうか。このようなあいまいな情報だらけなので、話が面白いかつまらないかという以前に状況がよくわからない。
プロットもなくてランダムに思い出話をするだけなので、各章の話に一貫性がなくて続きを読みたくなるような物語の推進力がない。信頼できない語り手が読者に対して情報を隠していてそれがどんでん返しに繋がったりするのなら信頼できない語りの手法を使うのは良いけれど、物忘れが激しい老人の脈絡のない話を聞かされても面白くない。家を出た息子に対して手記を残す体裁にするとか、村に来た男が霊感があって幽霊の声を聞く体裁にするとか、語りの形式を突き詰めていれば内容に一貫性が出てもっと面白くなったかもしれない。
幽霊が出てくる点がこの物語を異化しているけれど、冒頭で語り手自身を幽霊みたいな存在にしてしまったのでそのぶんリアリティがなくなっているし、幽霊が積極的に行動を起こすわけでもないし、ホラー的な面白さがあるわけでもない。語り手が死ぬのも冒頭でネタバレしているし、それに代わるオチがあるわけでもない。
良い点としては孤独と苦しみの表現は豊富で、蛇の毒で苦しむあたりには独特の詩情がある。詩ならそれでいいけれど、小説としてはやはりストーリー性がないと面白くない。過疎地に住んでいて孤独死する予定で死に向き合いたい中高年の人には面白いかもしれないけれど、普通のストーリー性がある小説を読みたい人にはつまらないかもしれない。

★★★☆☆

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最終更新日  2022.07.18 08:51:43
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Re:フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』(07/18)  
プワコ  さん
いやいや、三角猫さんの、大まかな説明だけで
もう読んだ気になっちゃいました(^^)

それを読む限りはとっても面白そうに聞こえます。

自分もひとり身だし若くないので、
孤独と死と老化を受け入れる修業の身であると言う点で、興味深いと思いました。
(2022.08.19 11:42:31)

Re[1]:フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』(07/18)  
三角猫  さん
プワコさんへ

自分がどう死を受け入れるかは他人の死から学ぶしかないので、そういう点では小説で他人の死に様を見るのは有意義だと思います。この小説は癖が強い現代小説なので、興味があったらAmazonで冒頭部分のプレビューを見てから買うか決めるとよいと思います。 (2022.08.22 05:01:50)

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