エデンの南

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February 13, 2021
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テーマ: 読書(8220)
カテゴリ: 読書
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※多少のネタバレあり


めっっちゃリアルで恐ろしすぎました。
まだ数年前に読んでいれば、物語として普通に読めたかもしれないのですが、今読むには、あまりに現実的でした。
そして『タルムード』的だと思いました。
ユダヤの聖典『タルムード』


書き換えられる歴史

例えば、世の中は嘘で満ち溢れていて、習ってきた歴史も嘘だらけです。
あった物をなかった物にし、なかった物をあった物にしている、まさにそんな描写が随所に出てきます。

オーグルヴィ同志は、一時間前まで想像上ですら存在しなかったのだが、今や一つの事実になった。死者は創造することができて、生きている人間は創造できないと考えると、何とも奇妙だった。オーグルヴィ同志はこれまで現在形で存在したことは一度もなかったにもかかわらず、いまや過去形で存在したことになっており、しかもこの偽造行為が忘れられたとたんに、シャルルマーニュやジュリアス・シーザーと同じくらい紛れもない真正なものとして、またかれらと同じたしかな証拠があるものとして、存在することになるだろう。

次々と変えられていく歴史。
ここに出てくる「彼女」とは重要な登場人物であるジュリアです。

例えば彼女は、学校で学んだというので、党が飛行機を発明したと信じていた。(ウィンストンは覚えていたが、小学校時代を過ごした五十年後半には、党が発明したと主張していたのはヘリコプターだけだった。十年以上経って、ジュリアが学校にいくようになった頃には、すでに飛行機も発明したことになるだろう)そして飛行機は自分が生まれる前から、そして革命のずっと前から存在していたと彼が教えても、その事実は彼女にとってまったく興味をそそらないものだった。

小説の中に本が出てくるという、なんとも不思議な箇所があったのですが、それがエマニュエル・ゴールドスタイン作の『寡頭制集産主義の理論と実践』
これが実にタルムードぽいと思ったのですが、これについては次回書こうと思います。
ここから歴史の改竄が描かれている箇所を引用します。

 過去は変わりやすいというのが、イングソックの中心的な教義である。過去の出来事は客観的実体を持たず、書かれた記録と人間の記憶の中にのみ存在していると主張されている。記録と記憶が一致したものであれば何であれ、それが即ち過去である。そして党はあらゆる記録を完全に掌握しており、同様に、党のメンバーの精神も完全に管理しているからには、過去は党が如何ようにも決められる。

昔読んだけどよくわからなかった本でハイデガーの『存在と時間』があるのですが😅なんかコレ『存在と時間』みたいじゃね? と思った箇所を引用します。

「でも世界自体が一片の埃のようなものじゃありませんか。人間なんてちっぽけで───無力な存在じゃないですか! 人類が誕生してどのくらいです? 何百万年ものあいだ、地球には人間は存在していなかったのです」
「ナンセンスだな。地球はわれわれと同い年だ。われわれより前から存在していたわけではない。そんなことはあり得ないだろう。人間の意識を通じなければ、何も存在しないのだからね」


これはどういう事かと言うと、改竄された歴史を心の底から信じられるように人間の方を強引に変えられると言う事なんです((((;゚Д゚)))))))


ニュースなんかみんな嘘

歴史も次々と変えられ、主人公は歴史を書き換える仕事に従事します。
現在起こっている事も嘘だらけで、今多くの人がニュースが嘘を伝えている事に気付いたと思うんです。
そういう事が1949年刊行の小説に描かれています。
ジュリアのセリフを引用します。

ゴールドスタインと彼の地下組織の軍隊についての話なんか、党が自分たちの目的のために作り出したとんでもないでたらめ。こちらは信じる振りをするしかないの。数え切れないほどよ、党の決起大会や自然発生デモに参加した回数ときたら。名前を聞いたこともなく、言われている犯罪の 本当の犯人だなどと露ほども思っていない人を処刑するよう、声を限りに叫んだわ。公開裁判があれば、〈青年団〉の派遣隊の一員として、朝から晩まで法廷を取り囲み、「反逆者に死を!」というシュプレヒコールに声を合わせた。〈二分間憎悪〉の時間は、いつだって誰よりも激しくゴールドスタインを罵倒してる。でもゴールドスタインが誰か、彼がどんな教義を代弁すると考えられているのか、ろくに知らないの。

彼女の発言からもうひとつ。

「誰が気にするもんですか?」彼女は苛立ったように言った。「ずっとくだらない戦争が繰り返されてるだけじゃない。どのみちニュースなんかみんな嘘だって分かってるんだから」

非常に聡明でありながらポジティブなジュリアは、私たちの希望のように思えました。
いくらビッグブラザーでも人の心のなかにまで入り込めない、と彼女は言ってました。
そうだ!と思いつつ読み進むと、そんな希望も見事に打ち砕かれてしまいます。
2+2は5だと心の底から思って答えるなんて無理に決まっているのに、それを可能にしてしまうのがビッグブラザーです。
ビッグ・ブラザー ― Wikipedia

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こんなんありました(笑)
ちょっとカッコイイな(^Д^)
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Last updated  February 13, 2021 05:37:45 PM
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SEAL OF CAIN @ Re[1]:あけましておめでとうございます。(02/04) アラネアさんへ あけましておめでとうござ…
アラネア @ Re:あけましておめでとうございます。(02/04) えっと~、あけましておめでとうございま…
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