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いわずと知れた 谷川俊太郎
の詩 「生きる」
の絵本です。表紙の写真をご覧ください。この表紙に惹かれて借りてきました。好き好きですが、ぼくは、こういう、何となく漫画風のリアル描写が気に入りました。
三十代くらいの年齢の方なら小学校で習った詩です。暗唱できる人もいると思います。その詩の何行かづつに絵がついています。表紙のアパートの絵はおまけですが、ぼくはこの絵が一番好きです。
表紙を開くと 「生きる」
という詩の題が最初のページにあります。木に蝉がとまっています。
このページから 谷川俊太郎
の詩のことばと 岡本よしろう
の絵のコラボレーションが始まります。そこからページをめくると見開きが全部で 19
ページ
あります。
「いまいまがすぎてゆくこと」
のページを写真でとるとこんな感じです。
最後の見開きの次のページに、詩の最後の 「いのちということ」
という一行があって 「地球」
の絵があります。
その次の見開きに、この詩が、もう一度、全文のっています。今さらですが、載せてみますね。
生きる 谷川俊太郎
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木漏れ日がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまがすぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
裏表紙に、もういちど 蝉の幼虫
が出てきます。
現代詩の中で、おそらく、いちばん、多くの人に読まれた詩だと思います。絵本に描かれた、 岡本よしろう
の 「絵」
を見ながら、シンプルな詩の 「ことば」
が、どれほど様々な情景を、それぞれの読み手の頭の中にイメージしてきたのか、つくづく 「驚嘆」
する
思いになりました。
おだやかですが、ふっと、さみしい絵本でした。何故、さみしいと感じるのかはよくわからないのですが。一つ一つの 岡本よしろう
の絵が、 「時」を止めている
ように見えるからかもしれません。
一度ご覧になってください。
追記2022・06・01
詩人の 谷川俊太郎
の絵本を紹介しようとしているとこんなふう 「詩」
として発表された作品の絵本化に出会うことがあります。 「生きる」
という詩は、小学校の教科書にも載せられた有名な作品です。教科書には挿絵だってつけられていたでしょうし、子供たちはその詩を読んで絵を描いたり、感想を言葉にしたりしてきた作品です。
その詩が1冊の絵本として、もう一度表現されるということは文学作品の映画化に似ています。詩人自身が、自分の作品の言葉の新しい広がりを求めている積極性に目を瞠る思いです。
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