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時候 坪内稔典 という俳人の 「季語集」(岩波新書) という、 歳時記、エッセイ集 、いや、 季語集 を読んでいます。日々欠かすことのできない 「某所」 での読書にぴったりです。
暮秋
秋の末を季語では「暮れの秋」「暮秋」「秋暮れる」などという。
夏目漱石は 「病妻の閨(ねや)に灯(ひ)ともし暮るる秋」 という句を作っている。 「病妻」は病気の妻、「閨」は寝室である。漱石の妻(鏡子)はときどきヒステリーを発し、体が海老のように硬直した。そういうとき、漱石は茶碗の底をぶっ倒れている妻のみぞおちに押し当てた。そしていると次第に体がほぐれてくるのだった。
一方、夫の漱石は周期的に神経衰弱になり、たとえば夜中に手当たり次第に物を投げて暴れた。また、突然に妻に離縁を迫ったりした。
要するに、夏目家の暮秋はすさまじかった。 「病癒えず蹲る夜の野分かな」 。これは漱石の自画像か、それとも妻のようすであろうか。
髭風ヲ吹て暮秋歎ズルハ誰ガ子ゾ 松尾芭蕉
能すみし面の衰え暮れの秋 高浜虚子(P173)
この本は 毎日新聞 に 1991年12月 より連載した 「新季語拾遺」「稔典版今様歳時記」 がもとになっており、後者は現在も連載が続いている。その連載は 1回分 が 400字 であり、その字数でいかに書くかに私は苦心した。(P7) という訳で、この前書きの文章が書かれたのは、この本が出版された 2006年 らしいのですが、 15年以上続いた人気コラム の書籍化というわけです。新聞に載っていたのが 30年前 、出版されたのが 16年前 、今となっては古本屋さんで 250円 でした。
「『こころ』の授業をやるなら漱石に興味を持ってくださいね!」と呼びかけていることを思い出しての 「読書案内」 という次第です。
病癒えず蹲(うずくま)る夜の野分かな ぼくも、はじめて知った句ですが、ぼくには 妻の姿を見ている漱石 が思い浮かびます。それにしても、何とも、 漱石 ですね。
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