フィギュアスケート時々バレエ~浅田真央とパトリック・チャン応援記

フィギュアスケート時々バレエ~浅田真央とパトリック・チャン応援記

2005年04月26日
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久しぶりに「マノン」の感想を書いてみたいと思います。
デ・グリュ―の元に戻り、束の間の幸福を味わったマノンとデ・グリュ―ですが
富豪が警官隊を連れて突入、混乱のなかマノンの兄は殺されマノンも売春容疑で
逮捕、アメリカへ流刑、という運命の大転換が訪れます。
第3幕の第1場、船から降りてきたマノンの姿が今までとは打って変わった惨めな
もので、大きな衝撃を与えます。無残にも短く切り落とされた髪、粗末な衣装と
変わり果てたマノンの姿に、流人となってしまった彼女の現在の状況が非常にわかり
やすく描かれています。余談ですが、映像のなかでジェ二ファー・ペニー扮するマノン
の着ている衣装はスカート丈が長く、現在のロイヤル・バレエ等が採用している
ぼろぼろに切り落とされたような短いものではありません。現在見られるような衣装
に変更になったのがいつなのかはわかりませんが、少なくともこの映像が撮影された
82年当時はこのような丈の長いスカートであったことがわかります。
流人となってアメリカへ流されたマノンにデ・グリュ―は付き添って行きます。
完全にマノンに魂を奪われてしまったデ・グリュ―は、いまや罪人となってしまった
マノンにさえもどこまでもついていく覚悟です。
しかしマノンの美しさには当地の看守も心を奪われます。
看守の部屋に連れて来られたマノンは看守に言い寄られ、結局襲われてしまったよう
です。この看守の部屋での看守の振りは、実にいやらしく、相当生々しいものがあり
ます。生の舞台を観ていた時にはそれほどまでには感じなかったのですが、こうして
映像で見てみると、そのあまりの生々しさに正直驚きました。こんないやらしい場面
だったのね・・・っていう感じです。「マノン」というバレエ作品をある意味象徴するような場面ですね。
しかしこの看守は突然現れたデ・グリュ―に背中を刺され、死んでしまいます。
遂にデ・グリュ―はマノンのせいで殺人まで犯してしまうことになったのです。
こうなってはこのままここにいる訳にはいきません。2人は逃亡し第3場の沼地
へと物語は続いていくわけです。
それにしてもマノンにとってデ・グリュ―の存在とは一体なんだったのでしょうか?
マノンは確かに彼を愛してはいたようです。しかしその「愛」は、実に移ろい易く
不確かなものでした。愛してはいるけれど他にもっと魅力的なものを見つけたら、すぐに
そちらへ心を移してしまう、そしてそのことになんら罪の意識を覚えることもないし、
良心の痛みを感じることもありませんでした。マノンがデ・グリュ―を愛していた、
と書きましたが、それだってデ・グリュ―がマノンを愛していたから、彼女も彼に
好意を覚えたに過ぎず、もしデ・グリュ―がマノンに愛を感じなかったらマノンは彼
に愛など感じなかったはずです。とにもかくにもデ・グリュ―のマノンへの愛、それ
こそがこの2人の関係の基盤にあったものであり、もしもそれがなかったらマノンが
自らの自然で自発的な意思によってデ・グリュ―に愛を感じる、などということは
在り得なかったはずです。つまりマノンはあくまで受身の立場でデ・グリュ―を愛して
いたに過ぎず、デ・グリュ―のようにマノンへの想いに生涯を懸けるなどということは
最初から在りうるはずもないことであったわけです。
仮にもしデ・グリュ―が彼女の前に現れなかったらどうだったでしょうか?
マノンは富豪の愛人になって安穏としていられたはずです。当然アメリカへ流されることもなかったし、兄を殺されることもありませんでした。流刑地で非業の死を遂げるなんて
こと、絶対にありえなかったことでしょう。仮に富豪がマノンに飽きて捨ててしまった
としても「お次」にありつくことは彼女にとっては容易なことだったはずです。流刑地での看守との関係もそうです。案外マノンは平気で看守の愛人におさまったのではないで
しょうか?そうした方がはるかに良い暮らしができるのはわかりきっていることです。
そしてマノンがなによりもそうしたものを望む女であるということはこれまたわかり
きったことであるからです。となると、デ・グリュ―こそがマノンを破滅させた張本人、
ということになります。彼はマノンを愛するあまり結果的には彼女を破滅させてしまった、なんとも皮肉なことではありますが、こういうことは案外起こりやすいことかもしれません。これまでマノンこそが「宿命の女」であると言われ続けてきました。確かにそのとおりであり、そのことになんら疑問を抱くものではありません。しかし
これはあくまでデ・グリュ―の側からの視点であり、マノンの側からの視点ではありません。
マノンの側から言うならばマノンにとってもデ・グリュ―という男は「宿命の男」に
他ならなかったのではないでしょうか?マノンは彼に愛されてしまったばっかりに
とんでもない憂き目を見ることになってしまったのですから。要するにマノンにとっては
デ・グリュ―が、デ・グリュ―にとってはマノンが、それぞれにとっての「宿命の人」
だったのです。






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最終更新日  2005年04月26日 16時19分23秒
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