フィギュアスケート時々バレエ~浅田真央とパトリック・チャン応援記

フィギュアスケート時々バレエ~浅田真央とパトリック・チャン応援記

2006年08月22日
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1幕での生き生きした少女からから一転、2幕でのヴィシニョーワ@ジゼルは、終始感情を押さえ気味で、ウィリになってしまったことを強く印象づけられるものでした。
マラーホフ@アルブレヒトの様子は基本的に1幕とそう変わらない。夜の森でもジゼルの気配を感じて、終始ジゼルを追い求めてるような印象だった。アルブレヒトにとっては今もジゼルはジゼルのままだ。あの頃の、幸せだった頃と同じジゼル。ジゼルが既にウィリになってしまっていることなど関係ない。彼はこの場面でも終始ジゼルを追い求め、我が手に取り戻したくて仕方が無い。アルブレヒトには見えるのだ、ジゼルの姿が。あの頃と同じ、自分が夢中になって今でも忘れられない愛しい少女の姿が。
しかし既にウィリとなってしまったジゼルは最早、アルブレヒトの手の届く存在ではない。完全に別世界の住人なのだ。彼女はもう9割方ウィリに成りきってしまっている。なのでアルブレヒトがどんなに心から彼女を求めても、彼女はそれに応えることはできない。ジゼルがアルブレヒトの命を救おうと踊り続けるのはジゼルのなかの無意識が、そうさせるように彼女を突き動かしたのであって、決して「人間的な感情が彼女にまだ残っていて」などという類のものではない、と思った。ジゼルはただただ、己の中の無意識に突き動かされ結果としてアルブレヒトの前に現れ、遂には彼の命を救うため一晩中踊り続けることになるのだが、彼女はこの場面では最初から最後まであくまで「ウィリ」だ。最早人間ではなく、幽霊のような存在だ。ジゼルはアルブレヒトへの愛ゆえに彼の命を救おうとする、確かにそのとおりなのだろうけど、その行為をジゼルが「自覚」していたかどうかは甚だ疑問だ。むしろ彼女はここでも全く「無自覚に」そうしたのではないだろうか。人間のアルブレヒトと、既にウィリとなってしまったジゼルとの温度差・・のようなものが確かにそこには厳然として存在していたように思う。アルブレヒトは命ある身、体温のある血の通った人間である一方、ジゼルは既に命絶えた身、体温の無い血の通っていないウィリであるという・・・アルブレヒトがどんなに激しくジゼルを追い求めたとしてもジゼルは既にウィリ。共に踊ろうがどうしようが、既に別の世界に行ってしまったジゼルと心を通わせることは絶対に出来ない。
私にはこの場面でのヴィシニョーワがこの様にある意味「冷たく」見えてしまったことがかなり意外でした。
こんなヴィシニョーワはちょっと想像していなかった。もっともっと「人間的」な、生きていた頃の感情をかなり残していて、情熱的にアルブレヒトを救おうと奮闘する?タイプなんじゃないかと勝手に想像していましたから。だけど彼女は終始静かで、人間的な感情など喪失してしまっている、と言うより超越してしまっている、というように見えたのです。人間としての感情で一杯のマラーホフ@アルブレヒトとは好対照でした。私は前回書きましたとおり、「ジゼル」を全幕で観たことは今回でたったの2回目です。ですので本当にこの作品については何もわかりません。が、03年「バレエの美神」公演でジゼルの2幕(途中からですが)を観たとき、イヴリン・ハートのジゼルはもっと人間的であったような気がするのです。
アルブレヒトを今も愛していて、彼の命を救いたい、という思いがかなり強いジゼルであったような気がします(あくまでそんな「気」がする、というだけですが)。今回観たヴィシニョーワのジゼルはあの時のハート@ジゼルに比べると随分と「冷たい」ように私には感じられました。人間ではなくウィリなんだと。私はなるほど、こういうジゼルも良いな~、と思ったのです。ちなみにザハロワの場合は人間ではなく「聖霊」という気がしました(笑)。
「現し身の男と幻の女の決して結ばれることの叶わない恋」、この形容はそのまま今回の舞台に当て嵌まる言葉であるように感じました。現し身の男がどんなに恋焦がれようが、幻の女がそれに応えてくれるはずはなく・・応えたいという気持ちが女の方にあったとしても幻の女が人間の男にどのように応えられるのか・・・決して結ばれない、そのことをジゼルは無自覚のうちに知っているのです。そう知っていながらアルブレヒトへの想いは彼女を突き動かし彼の命を救おうと夜通し踊り続ける。ジゼルは全て「自覚」していません。ただただ内からこみ上げてくる「何か」に突き動かされて、その「何か」とはなんなのか、それもわからないけれど、それでもその「何か」はジゼルを突き動かすのです。ウィリであるジゼル、2幕のジゼルはウィリである・・あまりにも当たり前過ぎて、大前提であり過ぎて、ついついそのことを忘れがちになってしまっていたのでしょう。ヴィシニョーワのジゼルはそのことに改めて思い至らせてくれたような、そんなジゼルでした。





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最終更新日  2006年08月22日 15時51分14秒
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