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2015年08月10日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: カテゴリ未分類


 離婚していなければ夫の命日と言えるのだけれど、残念ながら元夫なのである。

 余命宣告を半年と言われながら、本人の凄まじい努力と生への執着とで一年と半年生き抜いた。
 その生き様を、残していく元妻と娘たちにまざまざと見せつけて旅立った。

 わたし達夫婦は、互いを人一倍理解し尊敬し合っていたと思う。
 未だに彼以上の人に出遭ったことがない。わたしを、わたし自身より彼の方が理解していたから喧嘩にもならなかった。
 そもそも、両親の諍いを嫌というほど見て来た青春時代だったから、それが子供に与える悪影響が分かるから、わたし達は絶対に喧嘩をしなかった。いつも夫婦でじゃれあって、娘たちと夫を取りあっていた。
 彼はよく言ったものである。
 「よその奥さんは、旦那のことを大きなこどもみたいと言うけれど、我が家はその逆だな。娘が三人いるみたいだよ」と鼻の下を長く伸ばしていた。
 その言葉を耳にしながら、わたしはとっても幸せだった。
 「君は何年経っても、新婚さんみたいに変わらないね。やっぱり俺が惚れた女だよ」と笑った顔を今でも忘れない。
 夫婦が、家族が幸せになるための努力は怠らなかったし、この幸せは一生続くんだと、どこか自分で決めつけていた。


 16回目の結婚記念日には、二人で箱根に行ったっけ。
 宿泊先のホテルのバー(というよりバンケットホールだった)で、よくわたしに歌ってくれた『あなたのブルース』を熱唱した。
 「今日は結婚記念日です。愛する妻に贈りたいと思います」と冒頭で記念日を暴露し、歌い終わった後、他のお客さんから浴びた拍手喝采も忘れられない思い出である。
 歌がとっても上手かった彼は、どこで歌っても拍手喝采を浴びるのだった。そんなことがわたしは誇らしくあり、彼の歌に聞きほれた。
 そうそう忘れられない出来事と言えば、わたし達の結婚式の折、彼自身が秋田長持唄を披露したっけ。
 友人の結婚式で、友人の為に必ず歌ってあげていた歌を自分で歌ったのだ。声量のある彼はマイクをうんと遠ざけて頬を紅潮させて、歌い上げた。

 こうして思い出すと切がない。
 こんなに思い出の深いわたしたちが不幸なことに別れることになり、別れた直後彼は喉頭がんで余命半年を宣告されたのである。


 五日後が長女の誕生日だった。
 彼の病室で祝ってやろうと、わたしは彼にお金を渡された。
 「もう長くないと思う。父親として最後のプレゼントになると思うから、少々高価でも良いものを買ってやってほしい」と。

 わたしの提案で、長女が以前から欲しがっていたティファニーのネックレスを買うことにした。
 病室の彼に写メを送ったら、良く似合ってるからそれにしてやれ、とメールが返ってきた。
 食欲も出て少し元気そうに見えたので、わたしも長女もまだまだ頑張ってくれるだろうと思っていた矢先、その日病室に泊まっていた次女から泣きながら危篤の報が入ったのである。

 明日でちょうど十年になる。









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最終更新日  2015年08月11日 00時19分34秒
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