ホラー、近未来、童話、独り言

ホラー、近未来、童話、独り言

2007年05月25日
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題名 「スティタス」

5月とは言え所々に残雪が見える北国の公園

日光浴を兼ねて散歩する人達に混じって手首にしっかりと固定させたバンド

その先にはリモコンを握りしめた人が数人いる。

「おや、お宅も始めたんですか。」偶然隣に住む住人と出会った

「そうなんですよ、子供達も手を離れましたし妻と相談して始めたんですが

中々大変です、妻が乗り気だったから決めたのに『休みの日ぐらい散歩に連れて

行ってよ』と五月蝿くて」

「何処も同じですな。」

互いが掴んでいるリモコンが警告音を鳴らしだした

その音は次第に大きくなっていく

「すいません、未だ日が浅いもので一寸目を離すと逃げ出そうとするんですよ。」

「いやいや、家も同じです。」

二人がリモコンのスイッチを操作すると100mぐらい先で絶叫が聞こえた

間もなく二人の下に特殊な首輪を着けた奴が帰って来た

「何度言っても解らん奴だな。」

二人はそれぞれ帰って来たものを叱り付けながら別れた。

庭の一角に作られた窓一つ無い畳一畳程のプレハブに押し込むと

シッカリ鍵を掛け家に入ると市民警察隊員が来ていた

「お疲れ様です。」同時に声を掛け合い四方山話の後

「如何ですか53号は。」

「マダマダですね、今日も100m以上離れてしまってリモコンを使いましたよ。」

「そうですか、未だ日も浅いから御苦労も多いと思いますが宜しく

御指導お願いします、それでは53号を見せて戴けますか。」

夫婦はプレハブに案内し53号と対面させた

覗き窓から見ると53号は寝転がっていたが「点検だ。」

隊員が声を掛け鍵を開けると正座して待っていた。

隊員が「全裸になれ。」と命じると素直に裸になり

足を少し開き両手を水平にした「後ろ。」の号令で其のまま後ろを向く

体罰が加えられていないか定期的に訪れ点検していく。

余りにも増え続ける犯罪者に刑務所や少年院の定員は常にオーバーで

収容しきれない状況が続いていた、増設、増築にも限度がある

国会は審議を重ね、一般家庭に比較的軽い受刑者を更正させる施設を

希望する家庭に設置する案を成立させた。

厳正に審査された家庭に畳一畳程の留置箱を設置し

囚人には100m以上離れると自動又は手動で電流が流れる首輪と

リモコンがセットで渡された、又僅かでは有るが謝礼も支払われる。

定期的に市民警察隊員が訪問し更正の度合い、危害が加えられて

いないか等をチェックしに訪れる、市民警察隊員とは国家試験に合格

した市民で構成された警察の下請けのようなもので

此の組織が出来た為今迄警察は民事不介入として取り扱えなっかた

夫婦喧嘩の仲裁、隣人とのトラブル等も扱えるようになり

市民からは好評だった。

囚人の刑期満了間際になると公的施設に移され最終審査を受け

釈放される、これらの機関が活動する事により国家予算の大幅削減

の実現をみた。

今日も陽だまりの中、リモコンを持った人が囚人を散歩させている

リモコンは今やその家のスティタスになっていた。





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最終更新日  2007年05月25日 12時18分27秒
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