サプリメントの日だまり

2005年09月21日
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カテゴリ: その他の体験記

「異様」に高い水フィルター掃除機

「割賦販売や訪問販売で,消費者に一定期間内ならば違約金を支払うことなく契約の解除,申し込みの撤回を認める制度」 (三省堂「デイリー 新語辞典」より)のことだ。
要するにこの消費者に与えられた権利を行使すると、実際の店舗以外のところで購入した(させられた)ものを、「なかったこと」にすることができる。

最近、30万円もする水フィルター掃除機をローンで購入してしまったという主婦の方から相談メールをもらった。




よっぽどのお金持ちであれば掃除機に30万円くらいパッと出すのかもしれない。
だが、庶民的な金銭感覚を基準にして考えれば「高い」と言わざるを得ない。
その証拠に、日本最大級のショッピングサイト楽天市場で販売されている家庭用掃除機の99.9%は10万円以下だ。
そもそも10万円を超える家庭用掃除機は、ほとんど売られていない。




「吸引力の変わらない」高性能クリーナーとして有名な ダイソン社の最上位機種「DC12コンプリート complete」 (右画像)ですら、8万円前後だ。 ダイソン DC12コンプリート complete 吸引力がずっと変わらず、収納性に優れた紙パック不要の新...
その3倍以上もする価格の高さは、 「異様」 とさえ言える。


そもそもそんな高額な掃除機が売れるのだろうか?
答えは「Yes」。
私にメールをくれた「買ってしまった子羊さん」もその一人だ。


風雲急を告げるメールはかつて見た風景

始めまして!
実は結構かなりヤバイ状態になっています。
こちらが本気の印といってはなんですが、自宅のアドでメールします、できれば早めにレスいただけると嬉しいです!

ぶっちゃけ本体買ってしまいました!

エイジさんのおっしゃるS社はずばり○○○○(4文字)ではないですか?
クリーニング4点で千円。
絶対機材は売らない、というのを確認しました。

今まで、ああいった、電話でのいきなりの売り込みにOKしたことのなかった私が、なぜOKしてしまったのでしょう? いまだに不明です。 >> つづきを読む


風雲急を告げるメールに、かつての自分を重ね合わせる。
2年前の7月、私は買ってしまった子羊さんと同じ状況を体験していた。
だから、「異様」に高額な掃除機を購入してしまう心理が手にとるようにわかる。
一言で言えば、魔法にかかってしまうのだ。




お客の心のドアをこじ開ける方法

「エアコンクリーニング500円」、「ふとんクリーニング4点で1,000円」という「非常識」な値段でサービスを提供するという電話が突然かかってくる。
そこですこしでも気がある素振り、というより一瞬でもためらったら、「販売目的ではない」、「長年の実績がある」、「あくまでサービスを知ってもらうために実施している」などの文言をたたみかけ、訪問の約束を取りつける。

後日、自宅でエアコンやふとんのクリーニングが行われるのだが、そのとき「クリーニングのため」に持ちこまれるのが水をフィルターにした掃除機だ。
ふとんをクリーニングしながら、この水フィルター掃除機がいかにすぐれているか、またダニやカビ、花粉、タバコの煙、ハウスダストなどミクロのゴミがいかに健康に害を与えるかを客観的資料を提示しながらレクチャーする。
その立て板に水の話をとうとうと聞きながら、水フィルター掃除機の威力を目の当たりにすると、クリーニングが終わる頃にはすっかり水フィルター掃除機のとりこになっているのだ。

種明かしをすると、清掃員だと思っていた人は実は百戦錬磨の販売員で、その売り口上はすでに何千回も唱えたことのある魔法の呪文なのだが、水をフィルターにした掃除機を目にしたこともなければ自宅に上がり込んでの実演訪問販売の経験すらない素人にとっては、その1フレーズ1フレーズが一期一会のように感じられ、通常の冷静な思考は動揺、その振れ幅は次第に大きくなっていく。

説明するまでもないが、これは玄関先で行われる宗教や新聞の勧誘とはわけがちがう。
ドアを開けない、話を聞かないという戦術はつかえない。
なにせ家に上げるときは、その人は販売員ではなく清掃員だからだ。

始めから販売目的であれば、家に上げるどころかドアも開けない。
何かを買わせようとする販売員はとにかくシャットアウトなのだ。
そんなお客の心のドアをこじ開けるには、「販売ではない」、「クリーニングのため」という約束を取りつける必要がある。
販売するのは相手がすっかり魔法にかかってからで十分なのだ。


巧妙に仕組まれた罠「2,000円で1週間レンタル」

水フィルター掃除機の魔法にかかった買ってしまった子羊さんだが、完全に魔法にかかったわけではなかった。
夫に相談なく掃除機のレンタル契約をするという軽率は避けられた。


「2,000円で1週間レンタルできます」





これが、魔法のかかりのわるかった人にかける最後の呪文だ。
これだけのパフォーマンスを目の当たりにして、夢のような水フィルター掃除機を「1週間、2,000円でレンタルでき」るのであれば、その申し出を断る理由はない。

もちろんこれは巧妙に仕組まれた罠だ。

この申し出に応じたら、次回、「水フィルター掃除機の取扱い方を説明するため」という名目で2度目の訪問を許すのだが、このとき来るのはベテランの販売員(と研修のための? 新人販売員)。


「正規のレンタル価格は8,750円/月なんですが、今日中に契約すれば5,000円/月でいいですよ」

「毎月5,000円でレンタルできるならどのくらいやりたいですか?」

「だったら購入した方が安いですよ」



有利な条件を提示したり誘導したりしながら、「クーリングオフもできる」という呪文で最後の警戒心をほどき、最終的に長期レンタル(最低1年、前払いで6万円)、もしくは購入契約(30~45万円)を締結せしめる。

1回目に来る販売員がドラクエで言うところの「まほうつかい レベル5(つかえる魔法:メラ)」だとすれば、2回目に来るベテラン販売員は「魔導士 レベル30(得意な魔法:メダパニ)」くらいか。
たとえ訪問販売を信用してない勇者であっても、いきなりこの魔法を食らったら、いっぺんで契約書にサインしてしまう。
事実、その通りになった。

買ってしまった子羊さんの夫が!


旦那と共に、 エイジさんの一連の小説 どおりのことを再度(1回目は私ですね)話され、

なんと旦那!!!!!

いきなり「じゃあ買ったほうが手っ取り早いんじゃないの?」なんていうんです!

「え? まってよ? とりあえず、1週間試してからにしようよ?」って言ったのに・・・

たぶん30~50万するよ・・・・??

でも旦那既に買う気満々!
彼はああいう訪問販売全然信用しなくて、バカにしてるほうなので、
そんな彼が いきなり即答で即買い ですよ!???? >> つづきを読む



誘惑の防波堤であるべき夫の判断力は、ベテラン販売員の巧みな話術によって「こんらん」させられたのだろう。
事前に打ち合わせていた「1週間試してからにしようよ」という妻の慎重な提案はまるで初めからなかったかのように抜け落ち、もともと「水フィルター掃除機の取扱い方を説明する」という目的が、いつの間にか「30万円もする水フィルター掃除機を販売する」という目的にすり替えられていることに気付くことなく、30万円もする水フィルター掃除機を「即答で即買い」していた。
否、させられていた。

>> つづきを読む




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最終更新日  2005年09月21日 10時16分38秒
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