2003年09月18日
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【回想Ⅱ】
ようやく点滴針を抜きに来た看護士に対し、私は罵った。
「この様な監獄以下の部屋に犯罪も犯していない私が閉じ込められる理由を聞かせろ!」
との問いかけに納得ができる答えが返ってこない。
私は直ぐに退院するからタクシーを呼ぶように依頼をしたが聞き入れてもらえない。
そして、その看護士は部屋から出て行った。

少し時間が経って違う若い看護士が入室してきた。
私を説得しようと話しかける。
「彼方はどうしてこの様な部屋に入れられるのか冷静に考えてみて下さい」と云う。
しかし、冷静に考える環境の部屋ではない。
まして世間の荒波に、もまれていない若造の看護士に云われると余計に腹が立った。
私は怒鳴りつけた。
「早くタクシーを呼べ~」と!
看護士は説得を諦めて部屋から出てゆこうとするので、私は担当の先生を呼んでくれるように依頼した。
すると、担当のドクターが入室して、私の枕元に座り物静かな声のトーンで話し始めた。
「彼方は今の状態で出すわけにはいきません」
「今夜一晩だけ我慢をして下さい」と云う。
私は一晩も我慢ができないと告げたが、静かな口調の説得が続いた。
不思議に心が静まってきた。
やがて、担当のドクターは部屋から出て行き、替わりに看護士が1錠の薬を飲ませに入室してきた。
私はタバコが吸いたいと申し出た。
タバコも1日3本と規制されていた。
その依頼は叶えられ2人の看護士が付き添い鉄扉の外の洗面所でタバコを吸った。
その時に監視役に立ち会ってくれた1人の看護士に、タバコを吸いながら私の今までの生活状態や仕事の話を語った。
その看護士は私の話を真剣に聞いてくれていた。

私は仕事柄、錯乱状態の中でも人の顔を観察する癖がある。
目を見て話す。
その看護士には私の話に対する同情心が見て取れた。
そして、1本のタバコを吸い終わるともう1本吸わせて欲しいと申し出た。
その看護士は快く椅子まで持って来て「座ってゆっくり吸って下さい」と云ってくれた。
私はその言葉が嬉しかった。
今もその光景は忘れていない。
素晴らしい包容力のある看護士さんであった。
男が男に惚れると言う言葉があるが、まさに惚れる男性看護士であった。
そのお陰で心も落ち着いた。
そして、パジャマに着替えたいと云うと駄目だと言う。
何故、パジャマに着替えることが駄目なのか今も理解が出来ない。
部屋に入り薬を飲むと直ぐに眠気がさし目覚めると朝だった。

数名の看護士が「ご苦労様」と私に云い、閉鎖病棟まで連れて行かれた。

この、どん底の体験が以後の私の入院生活に多大な影響を及ぼした。
閉鎖病棟に不平不満を言っている患者がいたが、その患者が滑稽に思えたのである。
「お前も保護室を体験しろよ」と…。

人間は、1度落ちるところまで落ちてみる体験が必要である。





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最終更新日  2003年09月19日 12時17分44秒
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