現在、執筆中の原稿からです。
黒澤明監督の名作に『生きる』という現代劇があります。胃がんを患い、余命いくばくもない市役所勤めの主人公が、残された人生をどのように生きたかを描 いた作品です。彼は自分の命がそう長くないことを知り、人生に絶望します。そして、悔いが残らぬよう、欲望を満たそうと遊興に耽りますが、そこには虚しさ しか残りません。
そんなある日、彼は若い部下の生きる姿に強く心を打たれ、残された人生に光明が差します。そして、事なかれ主義の蔓延る市役所で、彼は一人立ち上がるのです。
住民たちがいくら切望しても、なかなか実現しなかった子供たちのための公園を、彼はさまざまな妨害を乗り越えて着工させたのです。そして、完成した公園のブランコに揺られながら、彼は満足して息を引き取るという物語です。
人間と動物の違いは何かと考えたときに、それは「受け継ぐべき精神」があるかないかだといえましょう。人間以外の生き物は繁殖しさえすれば、種の保存としての役割を果たせたことになりますが、人間はそうではありません。
受け継ぐべき精神を持ち、それを後人に伝えることが出来た時に、初めて人間としての種の保存を全うできたことになるのです。そして、誰かのため、後世のために何かをしようとして生きた姿勢や生き様こそが、何よりも子孫や後世に「受け継ぐべき精神」なのです。
私たちがこの世に生きた証を残せたと感じるのも、子孫や後世のためを思って何かを行い、何かを残すことが出来たときです。反対に後世のために何もせずに人生を終えたとき、人は人生を後悔することになります。なぜならそれが人間として生きた証だからです。
それは具体的な形あるモノを残すこととは限りません。大切なことは気持ちです。生きる姿勢です。実際、私たちが幕末の志士たちに感動するのも、彼らが何かを成したからではなく、彼らのひたむきな生き方や精神によるのではないでしょうか。
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