一昨日、昨日と老舗のワインオークションが開かれていた。筆者も少し冷やかし気味で覗いて見たのだがボルドー、イタリア、 CA は低調気味だったがブルゴーニュのトップ生産者はコロナの影響もなく堅調で有った。まあ、 Leroy 、 DRC 、 Rousseau のような一等地的な生産者はもとより、準一等地とでも言うべき Roumier や Vogue 等の生産者も軒並み最高落札予想額を軽く越えていた。まあ、これだけ流動性が有る昨今だから取り敢えず手元の現金をワイン(共に liquid asset だ)に替えておこうという人がいるのは想定内だが。
今回のオークションで想定外だったのがこのオークションの開催場所が IL から DE に移されていた事だった。 US は連邦制で州毎に税制も異なる(更に酒類免許も)。 DE は売上税や法人税が無く NV と並んで Tax Haven として知られている。更に米国内は発送せず本人か代理人( Agent )の引き取りのみ。これは州を越えた取引にも売上税がかかるという直近の米最高裁判決を踏まえたものであろう。
これが何を意味するかと言うと少し前に書いた「ワインのビットコイン化」に一層拍車がかかると言う事だ。端的に言うと売上税を回避するために落札ワインを一度州外に送付し自分のセラーで寝かしまたオークションハウスに送付するという手順を取っていたのだがこれでオークションハウスで買ったワインをそのまま保管し、数年後もう一度オークションに出しても売上税がかからないと言うことだ。ワインは記帳されるだけでその場を動くことがない。温度湿度を完璧調整されたオークションハウスでの保管と言う事で provenance は完璧。そしてまだオークションハウスという公開市場を通さずに売り手と買い手が非公開で相対売買しあう事になるだろう。その場合コミッションが省けるからだ。(これも前に書いたが)超富裕層にとってワインは租税、特に相続税回避の最良の手段だ。そのワインに更に利便性が加わった訳である。
いやはやとんでもない時代になったものだ。ワインも「飲む為のワイン」と「利殖の為のワイン」に二分類されつつある。そして後者の境界は徐々に前者の境界に encroach しつつある。そしてそれは上がっていくセラー財務的評価とは裏腹に実は歴の長いワインファンにとってあまり好ましい状況では無い。この辺についてまた少し書いて見たいと思う。
Intermezzo 2022/09/04
雑感 2022/05/20
PR
Calendar
Free Space
Comments
Keyword Search