ブルゴーニュワインはピノ単一品種から作られるのだが、作り手やクリマによりワインの性格、スタイルが千差万別、そのヴァラエティがブルゴーニュワインをブルゴーニュ足るものにしていると言うことは此処で何度も書いた。享楽的な Jayer, Rouget 、朴訥で温かみのある翁、確固とした構造を持ち圧倒される DRC 、緻密かつ繊細な Leroy 、凛々しい Rousseau 、どれも素晴らしい物だ。まあ、大抵は飲み、それぞれの benchmark が出来たのだが、 Charles Noellat だけはまだその benchmark に自信がない。最初に飲んだのは確か 1966 の Beaumont だったが、これは究極の薄旨とも言えるべき素晴らしいワインであった。端的に言うと菫に代表されるフローラルの香水のような香り、華やかでトーンが高く、水彩のように薄いが鮮やかな果実、自分が知るどのドメーヌとも違う素晴らしさが有った。その後何度か飲む機会があったがそのような菫の香りがする時も有ったが、そうでない時も有り、戸惑っている。
ちょっと逸れるがブルゴーニュの大抵のドメーヌの情報は本やネットで手に入る今日、この Charles Noellat ともう一つ Grivelet はかなり謎に包まれているように思う。その理由は両者ともブルゴーニュ黎明期の 80 年代後半の RP 氏や Clive Coates 氏といった大評論家が殆ど言及せず、 Reference となる情報が少ないことになるだろう。両者の著書ともに Charles Noellat が記述されるのは Leroy や、 Hudelot-Noellat と Christian Confuron への畑の相続、買収の話で有ったりと肝心のワインの話には言及する事がない。
私がこのドメーヌで一番謎だなと思うのがエチケットの種類だ。諸兄ご存知の通りエチケットが赤(黄色)、白の二種類が有る。この二種類のエチケットの違いに関して米では VT によって分けているのではという説が有力だが、個人的にはどうも納得していない。実際同一 VT でも赤、白のエチケットが混在しているし( RK 氏が Charles Noellat の贋作を作っていたと言う事で事態を殆ど検証不能にしている)、個人的には Ramonet や Sauzet のように出荷先でエチケットを分けていた可能性も有る。以前は Leroy へ身売りする際に Cave に有ったエチケット無しの在庫を Dijon の裁判所で競売されたワインの可能性もあると考えていたがこの線は消えた。(この競売されたワインが最終的に消費されたか転売されたかは謎だが)。
先にも書いたが DRC や Rousseau 、 Roumier 、 Vogue 等の贋作が騒がれる中、このドメーヌもかなり贋作が出てると推測している。個人的にも三度ほど当たったことがあるし、ネットで見ていても蝋封が相当の年月を経たとはどうも思えない鮮明な艶の有る赤だったりして疑わしいものもある。
さて、その「菫の香り」を求めてこのドメーヌを追っているわけだが今日はこのワインを頂ける機会が有った。ワインはリリースで買われ地下のセラーに5 0 年以上ずっと眠っていた。これ以上無い状態だ。色からも素晴らしい状態で有る事が分かる。グラスに注がれスワーリングをしてみると軽い赤果実の香り。マデラ香は全くなく、ワインはしっかりと生きている事が分かる。ただ自分が求めていた菫香の要素が見当たらない。危惧を覚えながら一口啜ったその瞬間に全てが分かる。これは自分の知っている素晴らしい Charles Noellat ではない。ワイン自体は赤果実も残り素晴らしいのだが、特記する事はない普通の美味しいワインだった。
勿論 Fade Out してしまった可能性も有るだろうが、よくよく考えてみるとこのドメーヌの白エチケットでその菫香を感じた経験がない。そう言えば当たった贋作も全て白エチケットだった。まあ、単なる偶然かもしれないが白エチケットはちょっと避けるようにしようと思う。
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